第5章 Windows 8を支える機能たち - 変化するデバイス経験 その3 「USB 3.0」のスピード

本稿を執筆するにあたって、USB 3.0カードおよびUSB 3.0対応USB-HDDケースを入手したので、その結果を報告する。今回使用したUSB 3.0カードは、ルネサスエレクトロニクス製μPD720201を搭載したものだが、Windows 8では自動認識し、何の問題もなく使用可能になった。USB-HDDケースはUSB 3.0対応をうたった海外のマイナー製品。また、内蔵したHDDもシリアルATA300(同600対応HDDがあまっていなかった)のため、厳密なパフォーマンステストではないことを事前に承知してほしい。

コンピューターに各デバイスを接続すると、インテル社が開発したUSB 3.0のSuperSpeedをサポートするxHCI(eXtensible Host Controller Interface)対応のルートハブに連なるようにUSB-HDDが認識された。前述のとおりWindows 8のUSBドライバースタックでは、USB 3.0が1.1/2.0と独立した構造になっているため、USB 3.0デバイスはxHCIコントローラ下で管理される(図364~365)。

図364 USB 3.0経由でUSB-HDDを接続した状態。xHCI対応のルートハブにぶら下がっている

図365 同一のUBS-HDDをUSB 2.0ポートに接続した状態。あたり前だがぶら下がる場所が異なっている

今回はひよひよ氏の「CrystalDiskMarkでテストを行った。USB 3.0の最大転送レートは5Gビット/秒(500Mバイト/秒)だが、ベンチマーク条件がそろっていないせいか、そこまでの数値は出なかった。しかし、同じUSB-HDDをUSB 2.0ポートに接続して、同じベンチマークを行ったところ、シーケンシャルリード/ライトの速度に二倍以上差が生じたことを踏まえると、USB 3.0デバイスを使用するメリットがあるのは確かだろう(図366~367)。

図366 CrystalDiskMarkによるベンチマーク結果。USB 3.0のポテンシャルをフルに引き出せていないのは数字のとおりだ

図367 同一のUSB-HDDをUSB 2.0ポートに接続し、同様のベンチマークを実行。シーケンシャルリード/ライトのスピードが大きく異なっている

USBストレージで今後に期待したいのが、UAS(USB Attached SCSI)の存在である。文字どおりSCSI(Small Computer System Interface)と同じロジックをUSBデバイスで実現するというものだ。具体的にはデータ転送の効率性を高めるプロトコル「UASP(USB Attached SCSI Protocol)」を新設し、UAS対応デバイスの転送データをフロー制御することで、パフォーマンスを向上させている。

詳しくはUSB.orgから入手できる「USB Attached SCSI Protocol (UASP) v1.0 and Adopters Agreement」をご覧いただくとわかりやすいが、Windows 8ではUASをベストプラクティス(ある結果を得るのにもっとも効率のよい手法)として、ホワイトペーパーを公開している(図368~369)。

図368 UASP 1.0の概要(同PDFドキュメントより)

図369 「USB Attached SCSI (UAS) Best Practices for Windows 8」と題されたmicrosoftのホワイトペーパー

執筆時点で、UASをサポートするUSBデバイスを一般市場で見ることは皆無だが、Windows 8がサポートすることで、USB-HDDのさらなる高速化は今後も期待できそうだ。