第8章 Windows 8に関するその他の機能とまとめ - Windows 8で廃止された機能
最後に各章で語りきれなかったWindows 8に関するポイントをいくつか述べていく。多くのユーザーが気になるのは、Windows 8で廃止された機能だろう。筆者が最初に気付いたのはネットワークマップである。LLTD(Link-Layer Topology Discovery Mapper)を使用し、ネットワークの接続状態を可視化したものだが、Windows 8では同機能が廃止された。同機能は「Link-Layer Topology Discovery Mapper(lltdsvc)」というサービスで実現されていたが、Windows 8に同サービスは残されたまま。スタートアップなどの設定は「手動/停止」とWindows 8の起動や動作に影響を及ぼさないものの、同サービスを実行してもネットワークマップを確認することはできなかった。
また、Windows Vistaから導入されたネットワークプレース(場所)は残されているものの、それを切り替えるリンクは廃止された。そもそも「ホームネットワーク」と「社内ネットワーク」の差はホームグループの有無程度であり、共有設定を除外する「パブリックネットワーク」と比べると大差はない。そのため、Windows 8ではホームネットワークと社内ネットワークを併せた「プライベートネットワーク」に改称。多くの場面ではこちらを選択する仕組みに変わっている(図573~575)。
はっきりいってネットワーク関連の変更や機能廃止は大きな問題ではない。いずれも重要な位置を占めていなかったからだ。それ以上に大きなネックとなるのはガジェットの廃止だろう。その歴史はWindows Vista がまだLonghornと呼ばれていた時代までさかのぼる。同OSが備えるサイドバー「New Taskbar」は、文字どおりプログラムメニューに似たランチャー機能を備えており、当時は同機能を模写するオンラインソフトも数多くリリースされていた。この機能はWindows 7のタスクバーのピン留めとして発展したが、その一方で生まれたのが「Windowsサイドバー」である(図576)。
サイドバーに並ぶ各アイテムを「ガジェット」と呼び、登録するガジェットの開発や発表の場として「gallery.microsoft.com」なども用意。ガジェット本体はインタープリタのスクリプトで実行し、情報を格納するXMLファイルや画像ファイルやCSSファイルなどで構成された圧縮ファイルである。そのため、腕に覚えのあるユーザーはガジェットの開発にチャレンジし、Microsoft謹製ガジェットではなく、ユーザーが作成したガジェットを愛用していた方も少なくないだろう。
ご存じのとおりWindows 7では「デスクトップガジェット」に改称され、文字どおりデスクトップの好きなところにガジェットを配置できるようになった。しかし、Windows 8では、スタートメニューの廃止に伴うUIの変更を踏まえ、廃止されている。Principal Group Program ManegerのAlice Steinglass(アリス・スタインガラス)氏は「デスクトップガジェットは十分なポテンシャルを発揮していない」と述べているが、デスクトップを軽視した同社戦略から来る選択だろう。
タイミングがよいことに、デスクトップガジェットにはセキュリティホールが発見されている。マイクロソフトセキュリティアドバイザリによると、リモートで悪意のあるコードが実行されるぜい弱性が発見されたが、修正プログラムを公開せずに同機能の廃止に至ったのが現状だ(図577)。
もちろんセキュリティホールがある機能をそのまま残すことに問題があるのは理解できるが、廃止に至る理由としては疑問が残る。うがった見方をすればWindowsストアアプリと競合するからではないだろうか。ご存じのとおりガジェットは自由に配布できるが、Windowsストアアプリは同社が期待する新しいビジネスモデルの一つだ。ソフトウェア開発者は登録料として49ドルを同社に支払い、収益の30パーセントが徴収される仕組みである(図578)。
そのため、ソフトウェア開発者によってはガジェットによる開発を続ける方も出てくるだろう。そのため、Windows 8ではガジェットを廃止したのではないかと推測する。筆者はWindows 7では時計やカレンダーといった、ちょっとした場面で日時を確認する際にガジェットを活用していたが、わざわざWindowsストアアプリを起動して確認するユーザーは多くないだろう。そのため代替えツールを期待したいところだが、執筆時点では代替えとなる便利な機能を見つけることはできなった。ただただ残念である。