第5章 Windows 8を支える機能たち - 変化するデバイス経験 その1「Device Stage」「プリンター」
筆者がWindows 8に移行して最初に探してしまったのが、Windows 7で「Device Stage(デバイスステージ)」と呼ばれていた「デバイスとプリンター」である。スタートメニューが廃止されたため、コントロールパネルからたどる必要があるものの、一見すると大きな変化はないように見える。だが、Microsoftの説明によるといくつかの改善が施されたようだ(図355)。
コンピューターに接続したデバイスを検出し、Windows Update経由でデバイスドライバーを取得。そして使用可能になるという流れはWindows 7と同じで、ダイアログデザインが少々変化した程度。デバイスの画像やXMLスキームで機能を拡張するメタデータは、Device Metadata Package Schema Reference for Windows 8やService Metadata Package Schema Reference for Windows 8を読む限り、若干の変更は加わっているが、エンドユーザーレベルの変化を見いだすことはできなかった(図356~357)。
ここで登場するのが「Microsoft Designスタイルデバイスアプリケーション」である。例えばプリンターはデバイスドライバーだけでなく、印刷効率や品質を高めるためのソフトウェアを用意することが多い。そこで同社は前述したWindows Update経由でデバイスドライバーをインストールし、Device Stageでデバイスのメタデータをダウンロードしている。ここまではWindows 7と同じだが、Windows 8ではWindowsストア経由で前述したソフトウェアの自動入手までを、一つの流れとして前述の呼称を用いているのだ。
当初変化を確認できないと述べたDevice Stageも、同ロジックの導入によって変化が生じ、Microsoft Designスタイルデバイスアプリケーションが自動的にインストールされるようにシステム拡張が行われている。残念ながら筆者が使用しているデバイスの中に、MicrosoftDessignスタイルデバイスアプリケーションの仕様に沿ったものがなかったので詳しい検証はできなかったが、Microsoftの解説がそのまま実現すれば、ずいぶんと便利になりそうだ(図358~359)。
その一方で既存のデバイスに対するサポートは各所で行われている。Windows 8におけるプリンタードライバーのアーキテクチャは「4」へバージョンアップしているのをご存じだろうか。そもそも同社は最初のWindows 1.0からWindows Meまで使用していた同ドライバーアーキテクチャをバージョン1/バージョン2と称し、Windows 2000からWindows 7まで採用してきた同アーキテクチャをバージョン3と称してきた。
そしてV4アーキテクチャでは、Windows 8ストアアプリからの印刷をサポートするため、いくつかの構造が変更されている。Windowsストアアプリの場合、HTML5もしくはXMLベースの宣言的言語であるXAML(Extensible Application Markup Language:ザムル)形式でプリンターにデータを送信しているが、古いデスクトップアプリケーションの場合、GDI(Graphics Device Interface)経由でデータを送信している。
もちろん、プリンターが理解できる形式への変換処理が加わるので単純な話ではないが、Windows 8でもVista時代から同社が推し進めていたXPS(XML Paper Specification)が用いられるようだ。そもそもXPSとはPostScriptやLIPSといったページ記述言語の一種で、前述したXAMLのサブセットとして開発された経緯がある。同社としてはAdobe PDFの対抗馬を想定していたのだろうが、国際標準規格などの面で後塵を拝しているのが現状だ(図360~361)。
Ecma Internationalが国際標準規格として定めたのは「OpenXPS(ECMA-388 Open XML Paper Specification)」であり、MicrosoftのXPSではない。XPSは3Dグラフィックコンテンツを扱うX3Dをサポートしているが、OpenXPSはオプション扱いと互換性がなく、現時点では混沌としている。だが、XPS規格自体は優れており、既に内部的レンダリングフィルターはGDIからXPSに置き換わっているので、既にデファクトスタンダードとしたAdobe PDFと平行して使っているのが得策だろう。