第1章 Windows 8への道 - Windows 8の新機能: Aero Glassの廃止
Windows VistaはともかくWindows 7を使用していたユーザーが、Windows 8のデスクトップを目にして最初に気付くのが半透明効果が無効になっている点だろう。Windows 8では、Windows VistaおよびWindows 7から導入されたAero Glass(エアログラス)が廃止されているのだ。廃止理由についてMicrosoftは「当時は有効だったが、今となっては時代後れで安っぽく見える」と述べる一方で、「Windows 8のデスクトップをMicrosoft Designスタイルの美意識に近づける」ためと説明している。
以前Microsoftは、Windows Aeroの一機能であるAero Glassを導入するにあたり、ウィンドウフレーム内の画面やテキストにユーザーの視点を集めるため、ウィンドウフレームの半透明化を導入したと述べていた。同社は"クロムレス"(タイトルバーや境界線、周囲にウィンドウフレームなどのパーツが表示されない状態)というデザイン手法を採用し、Windows Glassという結果につなげている。
この概念はWindows 8でも変わらず、Windowsストアアプリにも採用した。つまり、Windowsストアアプリは単なる全画面表示ではなく、ユーザーの視点がコンテンツに注目するために用いられたと言えるだろう。だが、これらの説明を聞く限り、Windows 8におけるAero Glassの廃止は矛盾しているように聞こえるのではないだろうか。
ウィンドウフレームやタスクバーを、従来の丸みがかかったデザインから直線的に変更し、ボタンなどにも用いられたデザインも一新。これらとスタート画面に並ぶタイル、つまりMicrosoft Designスタイルと並べても違和感はないのは事実だ。同社の「デスクトップのウィンドウは明るく軽やかに見せたい」という考えの基に導入されたデザインがユーザーの間へ、どうのように受け入れられるか興味深い(図028)。
なお、このデザイン統一の一環として、Windows 2000時代から慣れ親しんできクラシックテーマも廃止。また、各ウィンドウを立体的に並べるAero フリップ3D(Windows Vistaでは"Windowsフリップ3D"という名称)も使用できなくなった。下位互換性を優先すべきか、ドラスティックな変革を求めるかはユーザー次第だが、長年Windows OSを使ってきたユーザーがAero Glassの廃止による新デザインに慣れるまでは時間がかかるのは確かだ。
ここで、デスクトップに限定したUX(ユーザーエクスペリエンス)面について、少し言及しよう。Windows 7におけるデスクトップのデザインコンセプトは、デスクトップ全体を指す「作業領域」、各ソフトウェアや機能へアクセスするための「スタートボタン」、「タスクバー」上には固定もしくは動的なタスクバーボタン、デスクバンド、通知領域といったパーツで構成されている(図029)。
図029は「Windowsユーザーエクスペリエンスガイドライン」から抜粋したものだが、ご覧のように作業領域となるデスクトップを最大活用するため、タスクバーに各情報や各機能が集められていた。その一方でWindows 8は、需要と人気が高まるタブレット型コンピューターを範囲に含めるため、新しいスタート画面を採用し、従来のスタートボタンを廃止している。
実際にWindows 8をタブレット型コンピューター上で使ってみると、想像以上に使いやすい。それは事実だ。しかし、それは新しいスタート画面やMicrosoft Designスタイル UI、Windowsストアアプリに限った話であり、従来のデスクトップで以前のソフトウェアを使用する際はその限りではない。好意的に見ればWindows 8を使用する場合は、使用するコンピューターはもちろん入力デバイス(キーボードやマウス、タッチデバイス)、使用するソフトウェアも向き不向きがある。
つまり、デスクトップ型コンピューターでは、Windowsストアアプリや新しいスタート画面などのMicrosoft Designスタイルは使いにくい存在となるのだ。これが、このことが古い枠組みに捉えられたユーザーのWindows 8に対する低評価につながっているのだろう。もちろん従来のWindows 7を使い続けるという選択肢も間違いではない。その一方でOSという基礎的な部分にも改良を施したWindows 8を、"デスクトップ型コンピューターで使いにくいからダメだ"と切り捨てるのは、あまりにも短絡的ではないだろうか。このような観点から、Windows 8の新機能をもう少し追いかけてみよう。