第7章 Windows 8の機能とソフトウェア - 従来どおりのWindows Media Player 12
本題へ入る前にWindows Media Playerの歴史を振り返ってみたい。Windows Media Playerの存在が大きく強調され始めたのは、Windows Meに標準搭載されたバージョン7からである。大幅にデザインを変更し、オーディオCDの再生機能復活やインターネットラジオのサポート、再生リストやポータブルデバイスへの音楽コピーなどにも標準でサポート。日本国内では、Windows Media Player 7に関する大々的な記者発表会も行われたように記憶している(図522)。
その後はWindows XPに標準搭載されたWindows Media Player 8(for Windows XP)など、Windows OSの更新に合わせてWindows Media Playerシリーズもバージョンアップしてきた。その間廃止される機能、新たな追加機能など数多くあるがここでは割愛する。そしてWindows 7に標準搭載Windows Media Player 12は、プレイビューとライブラリを完全隔離し、デビュー当初にささやかれていた評判の悪さを過去のものとした。
当然ながらWindows 8では、Windows Media Player 13に相当する新バージョンが搭載されると思いきや、Windows 7と同じWindows Media Player 12が搭載されている。確認すると機能的に追加されたものは見つからず、Windows 7と同じくホームネットワークでのメディア再生や、ホームメディアへのインターネットアクセスもサポートされている。使い勝手はWindows 7のそれと、ほぼ変化はない(図523)。
ここで一度整理しよう。図524~525はWindows Media Player 12を使用し、[Alt]キーを押してメニューを表示させてから、<ヘルプ>メニュー→<バージョン情報>と選択して「バージョン情報」ダイアログにある<テクニカルサポート情報>から得られる情報をまとめたものだ。「種類」に表示されている「ACM」「ICM」「DMO」はコーデックの種類を意味し、前者二つはWindows Mediaテクノロジーに属する「Audio Compression Manager」「Image Compression Manager」の略称。後者は「DirectX Media Objects」の略称だ。「形式」に並ぶ項目は「FourCC」と呼ばれるもので、データ形式をユニークに識別するために設けられた4バイトの文字列である。例えば「MRLE」は「Microsoft RLE」を指し、「DX50」は「DivX MPEG-4 version 5」を指している。詳しくはFourCCの公式サイトをご覧いただきたい(図524~525)。
このようにWindows 8でも基本的なコーデックは内包されているものの、これ以外の動画/音声ファイルは再生することはできない。筆者が試したところ初期状態でMPEG-2 TS(MPEG-2トランスポートストリーム)形式のファイルの動画再生は不可能だった。その一方でMPEG4を使用しているQuickTime形式のファイルは問題なく再生可能。このように使用している形式によって、再生できる動画/音声ファイルは異なるのである。
そもそもWindows 7は、マルチメディア機能の強化が特徴の一つに数えられている。MPEG-4やAVCHDなど、いくつのコーデックを標準搭載し、スプリッターをインストールすれば、Flashビデオなども直接再生することができた。しかし、Windows 8はライセンス料金の問題からDVDビデオの再生機能をサポートしていない。ユーザーは「Windows 8 Media Center Pack」もしくは「Windows 8 Pro Pack」を購入し、Windows Media Center上でDVDビデオを視聴することになる。もしくはサードパーティ製DVDビデオ再生ソフトの購入が必要だ(図526)。
この仕様変更に伴い、Windows 8のタスクバーにWindows Media Player 12はピン留めされず、関連付けもWindowsストアアプリの「ビデオ」や「ミュージック」に変更されていた。確かに全画面で動画ファイルを視聴する時は便利だが、作業中のBGM代わりに動画ファイルを再生する場合は、ディスプレイを一枚消費してしまうため、邪魔な存在となる。Windows 7以前と同じ環境を欲するユーザーは、オンラインソフトなどの動画再生ソフトが必要となるだろう。
ここで注意しなければならないのが、多くのオンラインソフトが使用している「FFmpeg(エフエフエムペグ)」の存在。GNU GPL(GNU Lesser General Public License)下で配布されてきたFFmpegは、多くのコーデックに対応しているため、FFmpegを中心に構成されたコーデックパックを導入すれば、Windows Media Player 12でも再生可能な動画/音声ファイルを増やすことが可能である。
ただし、FFmpegを使用する上で注意しなければならない点がライセンス問題。公式サイトの専用ページで注意をうながしているように、ソースコードがGPLベースで配布されていることと、コーデックに用いられる技術の使用料は別の話。ライセンス条件はコーデックによって異なるが、端的に述べれば、開発・研究用に限れば使用可能という状態だ。Windows 8は動画再生ソフトの使用が現実的解決策となるが、このような問題を孕んでいるため、あくまでも自己責任において使用を選択してほしい(図527)。