第3章 Windows 8のUI/UX - リボンUIを備えたエクスプローラー その2
ファイルやフォルダーのコピー操作における大きな改良点の一つが、コピー/移動先のフォルダーに同じ名前のファイルが存在する際の競合解決ダイアログ。Windows 7では競合を示すダイアログを表示し、ファイルを置き換えるか、処理をキャンセルするか、リネームするかの選択をうながしていた。
Windows 8でも同様の機能が備わっているが、複数のファイルを一括して確認することが可能になっている。ダイアログ左側がコピー元、右側にコピー先のファイル名およびサムネイルが表示され、サムネイルにマウスオーバーすることでパス名の確認。ダブルクリックでファイルを開くことが可能だ(図173~174)。
なお、初回はシンプルな確認ダイアログを示し、そこで操作の選択を行うことで図174のダイアログが表示される仕組みである。Microsoftでは、一つ目のダイアログを「シンプルな競合解決ダイアログ」、二つ目のダイアログを「詳細な競合解決ダイアログ」と呼んでいる。
一見すると便利そうだが、ポイントは同ダイアログに対するショートカットキーである。各ダイアログによって必要なファイルを誤って上書きするシーンは軽減するかもしれないが、全体的な操作性が低下しているのは想像に難しくない。もちろん直感的なダイアログは、コンピューター初心者が操作ミスによるファイルの上書きを避ける、という意味では有益な機能である。
しかし、コンピューターの操作に慣れたユーザーには、煩雑以外の何物でもない。そのため、ショートカットキーによる操作の簡略化が重要なのだ。そのため、同ダイアログで使用できるショートカットキーとして、コピー元をすべて選択する[Ctrl]+[F]キーとコピー先をすべて選択する[Ctrl]+[A]キー。日付とサイズが同等のファイルをスキップする[Ctrl]+[S]キーと、操作を実行する[Ctrl]+[O]キーが用意されている。これらを活用することで、よりスムーズなファイル操作を行えるだろう。
エクスプローラーに加わった機能の中で、中上級者に便利な機能となるのが、ISO/VHD形式のサポートだ。ここでいうISO形式とはISO 9660(13346)で標準化されている光学メディアのイメージファイルを指す。後者のVHDはVirtual Hard Diskの略で、同社の仮想化ソフトウェアで使われているファイル形式だ。
そもそもVHDのサポートは決して目新しいものではなく、蛇足だがWindowsバックアップのイメージファイル形式でも同フォーマットを採用。以前のWindows 7やWindows Server 2008 R2でも同ファイル形式の作成やマウント機能をサポートしていた。Windows 7の上位エディションやWindows 7やWindows Server 2008 R2では、VHD形式ファイルからの起動も可能である。
Windows 7では、VHD形式ファイルをダブルクリックしても、アプリケーションに関連付けされていないため、その存在を意識する場面がなかったが、Windows 8では同形式をエクスプローラーがサポートすることで、ダブルクリック一つでマウント可能になったのだ(図175~176)。
同様の仕組みで前述のISO形式もマウント可能。操作手順は同じだが、VHD形式ファイルはローカルディスク、ISO形式ファイルは光学ドライブとして認識するという相違点がある。これら仕様変更の背景には、ISO形式ファイルを用いたOSやアプリケーションが増えたことと、VHD形式ファイルを各所でサポートしているのが大きいだろう。
前述のようにOS標準バックアップツールだけでなく、仮想化ソフトウェアであるVirtual PCシリーズやHyper-Vの仮想HDDとして採用されており、Windows 8にもクライアント版Hyper-Vを備えていることからも、標準サポートするのが自然な形だろう。
なお、Windows 8では、以前から搭載されていたMedia Foundationにも改良が加わっている。詳しくは後述するが、エクスプローラーという観点から見るとサムネイルの作成スピードが向上しているのがメリットの一つだ。メディアプラットフォーム&テクノロジーチームのScott Manchester(スコット・マンチェスター)氏のブログ記事によると、約50ファイルもの動画ファイル(サイズは不明)を対象にしたサムネイルの作成スピードは、Windows 8が完了しているにもかかわらずWindows 7は23ファイル目で止まっている(図177)。
これはMedia Foundation自身を改善から導き出された結果で、エクスプローラーとは関係ないものの、AVI形式ファイルからMPEG-4形式への変換スピードも向上。Windows 8が13秒程度で完了しているのに対し、Windows 7はその時点で20パーセントしか作業が完了していない。このように、異なるアプローチでエクスプローラー自身の機能は強化され、デスクトップ型コンピューター向けOSとしてもWindows 8はパワーアップしているのだ。