第7章 Windows 8の機能とソフトウェア - 後方互換性の維持に使えるか? 「クライアントHyper-V」 その3
前節でゲストOSには"統合ディスクが必須"と述べたが、Hyper-VにはLinux Integration ServicesというLinux系OSをサポートする統合サービスが用意されている。同サービスを用いることで、CentOS 5.2以降、Red Hat Enterprise Linux 5.2以降、そしてSUSE Linux Enterprise Server 10 Service Pack 4以降をサポートする。
この情報はWindows Server 2008 R2のHyper-V 2.0を対象とした情報のため、Windows 8のクライアントHyper-Vに適用されるかわからないものの、最近はMicrosoftが実施したLinux Integration Servicesのオープンソース化に伴い、同コードを取り込んだLinuxディストリビューションも増えている。そこで、Windows XPに引き続き、UbuntuをクライアントHyper-Vの仮想マシンにインストールしてみた。
現在、Ubuntuの日本語サポートを行っているUbuntu Japanese Teamでは、執筆時点の最新版であるUbuntu 12.04 LTS Desktop日本語版の仮想HDDイメージをリリースしているが、今回はISO形式ファイルをダウンロードしてインストールを行った。同仮想HDDイメージを用いる場合は、ダウンロードしたZIP形式ファイルを展開し、Hyper-V 3.0が参照する「C:\Users\Public\Documents\Hyper-V\Virtual Hard Disks」フォルダーにVHD形式ファイルを移動させ、仮想マシンを作成するウィザードで<既存の仮想ハードディスクを使用する>を選択し、同VHDファイルを参照すればよい。
Ubuntuのインストール手順は割愛するが、特に難しい操作を必要とせず作業は完了。ご覧のとおり、Windows 8のクライアントHyper-V上でUbuntuが動作している。なお、筆者が使用しているノート型コンピューターは解像度が低いため、あらかじめゲストOSの解像度は800×600ピクセルに変更した(図541)。
前述したLinux Integration Componentsのオープンソース実装は、Linuxカーネル 2.6.32以降に組み込まれている。そのため、このUbuntuでも同サービスが稼働しているようだ。統合サービスの動作を確認するには、「sudo lsmod | grep hv_」と実行し、Hyper-V用ドライバーとして組み込まれたLinuxモジュールが列挙されるか確認すればよい(図542)。
このようにUbuntuは自動的に組み込まれたが、他のLinuxディストリビューションでは、パッケージの追加やLinuxカーネルの再コンパイルが必要なケースもある。あらかじめ情報収集を行ってからインストールに取り組んでほしい。
なお、クライアントHyper-Vで使用する仮想HDDファイルの拡張子は「VHDX」である。以前の仮想HDDやバックアップ機能が作成するシステムイメージファイルの拡張子は「VHD」であったことを踏まえると、"eXpand(拡大)"の意味で「X」が付けられたのではないかと推測できるが、実際には64テラバイトまでの拡張やディスクI/Oの向上、特別なプロパティ情報の保持などいくつかの機能が追加されている。
より詳しい情報を知りたい方は、Microsoftが配布している「VHDX Format Specification v0.95(http://www.microsoft.com/en-us/download/details.aspx?id=29681)」をご覧いただくといいだろう。また、ファイル形式など各種情報をオープンに提供する「Microsoft Open Specifications」でも、いくつかの情報を得ることができる。興味がある方はアクセスしてほしい(図543~544)。