第8章 Windows 8に関するその他の機能とまとめ - 今後のメールクライアントとなりそうな「Outlook.com」

Windows 8の機能ではないものの、今後のWindows OSと連動する可能性が高いと思われるため、ここで「Outlook.com」を紹介したい。同サービスはMicrosoftが運営するフリーメールサービスで「Hotmail.com」「Windows Live Hotmail」と機能拡張と改称を繰り返しながら、現在に至っている。ここで同社がリリースしている電子メールクライアントおよびサービスを整理してみよう。

まず、デスクトップアプリに類するのは、Officeスイートに含まれる「Microsoft Outlook」、Microsoft Essentials 2012に含まれる「Microsoftメールデスクトップ」、そしてWindowsストアアプリの「メール」の三種類。これに加えてWeb上では、Microsoft Exchange ServerとOffice 365のWebアプリケーションである「Outlook Web App」と、フリーメールサービスとして提供されたWebアプリケーションの「Outlook.com」。こちらは二種類。

"Outlook"というブランドだけでも三種類と、正直どれがどれやらわからなくなってしまうだろう。最近はSNSやミニブログの台頭で、電子メールの重要性は低下しつつあるが、それでもB2B(Business to Business)やB2C(Business to Consumer)の場面では欠かせないコミュニケーションツールである。そもそも"Outlook"ブランドはビジネスシーンで影響力を与えてきたが、ここに来て様子が異なってきた。

Outlook.comは、あくまでもコンシューマー向けサービスであることに異論を挟む方は少ないだろう。もちろんビジネスシーンで使用することも可能だろうが、機密情報をやり取りする可能性があることを踏まえると、従来の電子メールクライアントを使うように定めている企業が多いのではないだろうか(電子メール自体の不達性が矛盾しているが、ひとまず棚上げする)。この点とWindows LiveグループのChris Jones(クリス・ジョーンズ)氏の「個人的な電子メールを再考する」という発言を踏まえて、Outlook.comをコンシューマー向けサービスと判断した。

本サービスを端的に述べると、従来のWebメールサービスに用意された機能はそのままに、Windows 8風のデザインやMicrosoftアカウントとの連動を可能にしたWebアプリケーションである。Windowsストアアプリの「メール」と異なり、フォルダーの新規作成機能や、タグ機能に相当するカテゴリの追加なども備えているため、少なくとも「メール」よりは使いやすいだろう。

現在Microsoftメールデスクトップを使用中の場合は、同アプリケーションにOutlook.comで使用する電子メールアカウントを登録。そして受信済みメールをドラッグ&ドロップでコピーすれば、少々時間はかかるがOutlook.com上の同アカウントにも反映されることを確認した(図605~606)。

図605 新しいWebアプリケーション「Outlook.com」

図606 他の電子メールアカウントから電子メールを受信することも可能

また、使用できる電子メールアカウントはMicrosoftアカウントに限られている。だが、他の電子メールアカウントにアクセスし、POP3サーバー経由で新着メールを取得することが可能だ。多くのWebメールアプリケーションでは、他サービスからの乗り換えとして同様の機能を備えているが、Outlook.comが先行するGmailやYahoo!メールのユーザーを取り込もうとしているのが暗にうかがえる。一見するとこの計画は遅すぎるように見えるが、Outlook.comの機能を俯瞰すると、Windows OSを支えるアプリケーションの一つに数えられてもよい出来である。

その一方で前述したWindowsストアアプリの「メール」は完成度が低く、デスクトップアプリであるWindowsメールデスクトップも改善点は少ない。推測の域を超えないが、これらのことからWindows 8の次にくるWindows OSでは、コンシューマー向け電子メールサービスをOutlook.com一本に絞るのではないだろうか。

もちろん企業向けはコンセプトが異なるため、デスクトップアプリであるOutlookが残されるだろう。それでも、Windows 8と同じUIを採用し、ローカルアプリケーションのように使用できる感覚を踏まえると、前述のような考えが頭をよぎってしまうのだ。いずれにせよGoogleの各種サービスに依存していない方にとって、Outlook.comはよい選択肢の一つとなるだろう