第7章 Windows 8の機能とソフトウェア - Windows 8でも提供される「Windows Essential 2012」 その2

Windows Essentials 2012の中でも注目株に値するのが「Microsoftムービーメーカー」だ。当初は動作が不安定な部分を多く見受けたものの、多くのコンシューマーユーザーから高い人気を博している。Windows 8上で同アプリケーションを使用する場合、録画した動画の手振れ補正を行う「ビデオの手振れ補正(Video Stabilization)」が使用可能になる。

三脚などを使わずフリーハンドで録画する場合、どうしても手振れが発生してしまうため、多くのデジタルビデオカメラは補正機能を備えているが、ビデオの手振れ補正機能は録画した動画に対して、同様の補正処理を行うというものだ。適用はビデオ全体に行われるため、特定シーンの手振れのみ取り除く場合は、事前にトリミングを行うなどの加工処理が必要だった。

作成した動画をYouTubeなどにアップロードする仕組みは以前から用意されているが、その際の著作権侵害を未然に防ぐため、適切な権利が付加された音楽をAudioMicroやFree Music Archiveなどからダウンロードし、BGMとして使用する機能が用意された。これに伴い、トラック編集機能も拡充し、BGMやナレーション、キャプションなどが独立したトラックとして可視化されている。全体的な動画編集のしやすさは前バージョンから大きく進化したと言えるだろう(図565~568)。

図565 録画した動画の手振れ補正を行う「ビデオの手振れ補正」

図566 著作権フリーの楽曲を追加する「音楽の追加」。もちろん自身が用意した音楽データも使用できる

図567 サウンドの波形表示機能が追加されている(深緑色部分)

図568 ナレーションやキャプションもトラックに表示される

動画の出力形式は時流に合わせて、H.264を使用したMPEG-4形式を採用。MPEG-4 Part 10 Advanced Video Codingとして規格化されるものだ。この他にもスマートフォンやタブレット型コンピューターに合わせたテンプレートが用意されているが、これらの設定は動画サイズとオーディオクオリティの設定のみ。動画形式は前述のMPEG-4とWMV(Windows Media Video 9)形式の二種類に制限されていた(図569)。

図569 数多くの動画ファイルテンプレートが用意されている

この他のアプリケーションを確認すると、「Microsoftメールデスクトップ」「Windows Live Messenger」いずれも大きな変化はない。後者の扱いは既に筆者の愚考を述べたので、前者を取り上げるが、こちらも変更点を確認することはできなかった。長期間使用しないと正しく評価できないもの、執筆時点では大きな問題が一つ残っている。それは日本語が入力できないという点(図570~571)。

図570 デスクトップの電子メールクライアントとなる「Microsoftデスクトップメール」

図571 Windows Live Messenger。バージョン番号は上がっているが大きな変化はない

新規メールを作成する際、件名(表題)などは正しく日本語を入力できるが、本文では日本語が入力できないのである。通知領域のIMEアイコンが「×」になり、切り替えることができないのだ。日本語で送られてきた電子メールを返信する際は、このような問題は発生せず、IMEをATOK 2012に切り替えても結果は同じ。問題はこのトラブルが必ずしも再現できるわけではないという点(図572)。

図572 Windows 8 RTM+Microsoftメールデスクトップの組み合わせでは、本文で日本語が入力できなかった

以前、Windows 8 Release Previewの時点でMicrosoftメールデスクトップ(Windows Liveメール 2012)を試した時はこのような問題は発生しなかったことを踏まえると、プレビュー版からRTM版に至る変更で進入したWindows 8側の問題か、Microsoftメールデスクトップが適切なAPIを使用していないのではないかと推測する。過去の例を踏まえると、今後のバージョンアップで改善されると思われるが、この時点では"Windows 8でMicrosoftメールデスクトップは使用できない"と言わざるを得ない。