必要なメッセージだけを発信

Windows XP Service Pack 2から搭載された「セキュリティセンター」は、セキュリティ状態を監視し、コンピュータ初心者がおろそかにしがちなセキュリティ対策をうながすための機能である。前述のとおり初心者には有用な機能だったが、意図的に自動更新を無効にすると警告メッセージが発せられ、煩雑な印象を覚えた方も少なくないだろう。Windows 7では監視の幅を広げ、中上級者でもおろそかにしがちなシステム状態の確認を兼ね備え、名前も新たに「アクションセンター」に変更した。既存のセキュリティ系監視機能に加え、問題レポートやバックアップ、後述するトラブルシューティングの一部が監視対象に加わっている(図386)。

カテゴリ 項目 概要
セキュリティ ネットワークファイアウォール Windowsファイアウォールの有無を確認
Windows Update 更新プログラムの自動更新を確認
ウイルス対策 ウイルス対策ソフト導入を確認
スパイウェアと不要なソフトウェアの対策 マルウェア対策ソフト導入を確認
インターネットセキュリティ設定 IEのセキュリティ設定を確認
ユーザーアカウント制御 UACの設定情報を確認
ネットワークアクセス保護 ネットワークセキュリティ状態を確認
メンテナンス 問題レポートの解決策を確認 問題発生時に作成されるレポート情報の確認
バックアップ バックアップ設定の確認
更新プログラムの確認 更新プログラムの自動更新を確認
トラブルシューティング: システムメンテナンス システムメンテナンス系のトラブルシューティングにエラーが発生していないか確認
図386: アクセションセンターが監視する項目

Windows 7で新たに加わった項目から見ていこう。セキュリティ系では、NAP(ネットワークアクセス保護)が加わっている。同機能は、クライアントOSがネットワークにアクセスすると自動的に検疫が実行され、一定のセキュリティ要件を満たさない場合は、接続が制限されるというもの。

例えば、Windowsファイアウォールが無効でウイルス対策ソフトも導入されていない場合は外部へアクセスできないといった設定が行なえる。ただし、NAPはWindows Server 2008 R2によるポリシーサーバを構築し、連動させないと真価を発揮できないため、ユーザーが恩恵を受ける場面は少ないだろう。なお、ユーザーアカウント制御の状態やInternet Explorer 8のセキュリティ設定も監視対象に加わえられている。

メンテナンス系では、問題レポートの確認やバックアップの操作に加え、各問題を精査して自動修復するトラブルシューティングの一部が監視対象。トラブルシューティングに関しては後述するので、ここでは割愛するが、アクションセンターの存在は、OS運用で重要ポイントとなったセキュリティとメンテナンスという、2大ポイントを管理する重要アイテムへとレベルアップしたと言えるだろう(図387~388)。

図387: システムメンテナンス系の機能も監視対象に加えた「アクションセンター」

図388: ナビゲーションウィンドウの「アクションセンターの設定を変更」をクリックすると、表示される監視対象の取捨選択画面。チェックを外すとメッセージが発せられなくなる

アクションセンターによる通知をスムーズに行なうため、通知領域にあるシステムアイコンの1つとしても稼働し、システム状態によって様々なメッセージを発信してくる。もっともWindows Vista以前のように、どのような情報でも通知するのではなく、システムに問題が発生している際に発する"重要"なメッセージのみ通知する仕様に変更され、"通常"のメッセージはアイコン形状も変化せず、ユーザーが気付いたときに対応すればよくなった。これは、システムが安全な状態でも通知を発するWindows Vista以前の問題を改善したものだ。同仕様変更により、アクションセンターから発せられる警告は、本来の意味を持つようになったと言える(図389)。

図389: メッセージの内容が緊急な場合はオーバーレイアイコンとして「×」が付き、通常のメッセージではアイコン形状も変化しない

なお、蛇足だが本原稿執筆中に何度かウイルス対策ソフトの導入と削除を繰り返していると、アクションセンターのメッセージ管理、およびシステムアイコンの一部のオン/オフを切り替えられなくなってしまった。以前、同現象に見舞われた際は<既定のアイコンの動作を復元>をクリックすることで操作可能になったが、今回は再起動が必要となった。ウイルス対策ソフトのアンインストーラーがレジストリエントリーの一部を破壊してしまったのかも知れないが、今回は時間もないので、後日、本誌連載「Windowsスマートチューニング」で原因を追及してみたいと思う。興味のある方は是非ご覧頂きたい(図390)

図390: 某ウイルス対策ソフトをアンインストールすると、アクションセンターが発するメッセージの一部と、システムアイコンの一部に対する設定ができなくなってしまった。原因は不明だがアプリケーション側に問題がありそうだ