Windows Vistaは即時移行すべきだ

以上でWindows 7に関する新機能や注目点の解説を終える。その締めとして、Windwos 7を導入すべきか否かと考えてみたい。コンピュータに関する知識を持つ中級者が述べる言葉で「Windows OSはService Packが登場してからインストールすればよい」というものがある。これは、新規開発されたアプリケーションにはバグが付きもので、Windows OSも一定レベルまでバグフィックスされたService Pack 1がリリースされてからではないと、導入メリットよりもデメリットが大きい、という意味だ。確かに一理あるだろう。

しかし今回のWindows 7の場合、Service Pack 1を待つ必要はない。なぜならWindows 7自体がWindows Vistaをベースに開発されたOSであり、Windows 98とWindows 98SE、Windows Server 2008とWindows Server 2008 R2のように、Second EditionもしくはRelease 2にあたるからだ。

確かにWindows Aeroのように大幅なコード書き換えを行なった部分があるため、前述のような懸念を持って対応する場面はあるだろう。それでも、Windows XPからWindows Vistaへバージョンアップしたように、デバイスドライバモデルが変更されるわけでもないし(一部マイナーバージョンアップは行なわれた)、開発思想が異なるわけでもない。強いて言えば、Windows 7で初めて64ビット版を導入するユーザーが少々混乱するぐらいだろうか。

現在Windows Vistaを使っているユーザーに限って言えば、Windows 7へのアップグレードを見送るメリットは皆無と言っていいだろう。

Windows XPユーザーはどうする

今度はWindows XPユーザーのケースを考えてみたい。Windows XPユーザーに使い続ける理由を尋ねると必ず帰ってくるのが"安定性"である。それもそのはず、Windows XPが最初にリリースされたのは2001年10月と今から8年前。当時のCPUはIntel Pentium 4 1.7GHzあたりが代表格。仮にWindows XP Server Pack 2がリリースされた一年後(2005年)にコンピュータを買い換えても、Pentium D搭載モデルがちらほらと市場に出回るようになっていたはず。Pentium Dのクロック周波数は2.66GHzから3.73GHzと、先に挙げたPentium 4の1.5倍以上。当初"もっさりしている"と揶揄されたLunaインターフェースも素早く動作する。最近ブームになったネットブックに代表される低スペックコンピュータも、Windows XPなら、ある程度満足に動作するはずだ。

だが、このままWindows XPを使い続けることは難しい。各種サポートを行なうメインストリームサポートフェーズは2009年4月14日に終了し、セキュリティ更新プログラムや有料サポートのみ行なわれる延長サポートフェーズも、5年後の2014年4月8日に終了するからだ。もちろん"あと5年もある"という見方もできるので、このままWindows XPを使い続ける方もおられるだろう。加えて、新品出荷時に添付されていたWindows XPライセンスを他のコンピュータに移行せず、リカバリーメディアを紛失した中古PCを対象にした販売プログラムMAR(Microsoft Authorized Refurbisher)も2009年4月から実施されたことを踏まえると、Windows XPユーザーが今後も増える可能性はある。

本来コンピュータの存在意義は、OSの有無に左右されるものではなく、"そのコンピュータでやりたいこと"を実現するためのものだ。この観点からすれば、現在のWindows XPで満足している方は、PCパーツを新調してWindows 7に乗り換えるメリットは少ない。それでも、Windows XP Modeによる旧型デバイスのサポートや、Windows転送ツールによるユーザーデータの保護を踏まえると、Windows 7への移行を妨げるものは少ないだろう。Windows XPユーザーは現在のコンピュータが故障してしまうなど、PC本体の買い換えが必要なときに、Windows 7の導入もしくは移行を考慮しても十分だ。

最後に8章100ページ超に渡ってお送りした「Windows 7大百科」にお付き合い頂き深く感謝する。本稿がWindows 7の導入や活用の一助になれば幸いである。

阿久津良和(Cactus)