第1章 Windows 10は新たな時代を築けるか - ThresholdからWindows 10までの道のり その1

以前のMicrosoftは限られたテスターに限定し、開発途中版を配布していた。この方針を覆したのは、Windows Vista以降である。2006年5月にリリースしたWindows Vista Beta 2は"CTP"として、希望するユーザーがダウンロードすることができた。"Community Technology Preview"の頭文字を取ったCTPは、当時のMicrosoftが抱えていたWindowsやSQL Serverといったソフトウェアの開発遅延を巻き返すための方策だったが、今では多くのソフトウェアでプレビュー版をリリースするようなったのは、読者がご承知のとおりである。

当時のWindows Vista Beta 1 ビルド5112。その後のWindows VistaやWindows 7に続く機能が多く組み込まれていた

Windows 10も例に漏れず2014年10月から、当初は「Windows 10 Technical Preview」としてビルド9841のリリースから始まった。2015年4月には「Windows 10 Insider Preview」に改称し、プレビュー版をアップグレード版公開直前までリリースしている。本誌にもファーストビルドから変化を追いかける短期集中連載を寄稿してきたが、箸休めとしてプレビュー版の歴史を振り返ってみよう。

Windows 10の開発コード名「Threshold(スレッショルド)」が世に知られるようになったのは2013年12月頃。当時はWindowsやWindows RT、Windows Phoneに加え、Xbox Oneのカスタムカーネルを統合したプラットフォームを目指すプロジェクトと見られていた。だが、2014年9月30日(現地時間、以下特筆しない限り現地時間を指す)に開催したプレス向けイベントで初めて「Windows 10」の名を明らかにしている。

2014年9月30日(現地時間)に開催したイベントで示したWindows 10のリリーススケジュール。なお、登壇しているのはWindows&Device担当EVPのTerry Myerson氏

翌日には初めてのプレビュー版となるビルド6.4.9841(6.4はバージョン番号)をリリースしている。最大の特徴はスタートメニューの復活だ。詳しくは第2章以降で述べるものの、Windows 7のスタートメニューとWindows 8.xのスタート画面の融合は多くのユーザーを驚かせた。

ちなみにMicrosoft/日本マイクロソフトは復活したスタートメニューを「スタート画面」と称している。ご承知のとおり同名称はWindows 8.xで用いたものだが、Windows 7に似たスタートメニューを指して"画面"と呼ぶことに違和感を覚えるのは筆者だけではないだろう。そこで本稿では「スタートメニュー」という呼称を用いることをあらかじめ申し上げておく。

さらにコマンドプロンプトの機能強化も大きな注目を集めていた。Windows NT系のコマンドプロンプト(cmd.exe)はCUI操作を担うコマンドラインインタプリタとして残している。さらに新たなコマンドラインインタプリタとなるPower Shellをリリースしたことから、そのまま放置されると思われていたからだ。

2014年10月1日にリリースしたWindows 10 Techinal Preview 6.4.9841

長年そのままだったコマンドプロンプトに多数の機能を追加した

ビルド6.4.9841が実装した機能で特徴的だったのは、後の章で詳しく述べる仮想デスクトップである。新たなタスクスイッチャーであるタスクビューと共に加減自由な仮想デスクトップは、シングルディスプレイ環境での作業効率性を高める存在として期待が集まった。もっとも筆者は、仮想デスクトップという技術自体が目新しものではないため、本機能を"Windows 10のアピールポイント"とするのは少々厳しいのでは、という印象を持った。

仮想デスクトップを搭載し、異なる作業を各仮想デスクトップで実行可能にしている

ビルド6.4.9841は20日程度で過去のものとなり、2014年10月21日にはビルド6.4.9860をリリース。当時のMicrosoftは「約7,000箇所の改善を行った」と述べつつ、アクションセンターを加えている。もっともこのビルドでは、Windows Phone 8.1のアクションセンターを移植したものにとどまり、現在のアクションセンターに至るには後のビルドまで待たなければならない。

当時の公式ブログに掲載された「アクションセンター」

2014年10月21日にリリースした同ビルド6.4.9860。タスクバーに並ぶ検索ボタンやタスクビューボタンは表示の有無を制御できた

2015年11月12日にリリースしたビルド6.4.9879は、タスクバーに関する新たな改善と、高精度タッチパッドによるタッチジェスチャーなどいくつかの新機能を加えている。タスクバーに加わった検索ボタンは、音声パーソナルアシスタントのCortana(コルタナ)を起動するボタン(当時は未実装)だが、日本語などCortanaの対象外となる言語でWindows 10を使用する場合、単なる検索機能を呼び出すボタンにとどまっていた。なお、本ビルド時点で冗長な印象を受けるボタンの表示/非表示を切り替える設定項目を用意している。

さらに高精度タッチパッド上で3本の指を上げればタスクビューが起動し、下げればデスクトップが現れる機能が加わったのも本ビルドから。また、3本指で左右にフリックするとタスクビューによるアプリケーションの切り替えも可能にしていた。

TechEd Europe 2014でWindows&Device担当CVPのJoe Belfiore氏がデモンストレーションした高精度タッチパッドのジェスチャー