第1章 Windows 10は新たな時代を築けるか - ThresholdからWindows 10までの道のり その2

先ほどまでは2014年内の話だが、年が明けて2015年1月23日。Microsoftはビルド10.0.9926をリリースした。ここで前ページに掲載した図を思い出してほしい。Windows and Device Group担当EVPのTerry Myerson氏が示したスライドでは、"2015年からコンシューマー向け機能の強化を行う"ことを示唆していた。

ビルド番号からも分かるように、ビルド10.0.9926はバージョン6.4からバージョン10に大きく数字を重ね、新たなスタートを切るWindows 10のプレビュー版にあたる。リリース前に開催したプレス向けイベントでMyerson氏は、「我々はWindowsを製品ではなくサービスとして捉えている」と述べていた。この時点で前述した"サービスとしてのWindows"の方向性が確定したのだろう。

本稿ではバージョン6.4→10の変更を強調するため、ここまでバージョン番号+ビルド番号を記してきた。なお、これ以降はビルド番号のみに切り替えるので了承してほしい。

日本語LIPが加わったビルド10.0.9926。この頃のスタートメニューはフルスクリーン機能を備えていた

さて、Windows 10 Interface Preview用日本語LIP(Language Interface Pack)を公開したのも本ビルドからだ。ちなみに言語パックは、主要部分のみをローカライズしたLIPと、さらにロケールリソースをサポートした"一部ローカライズ言語パック"、そして言語およびロケールリソースを100パーセントローカライズした"完全ローカライズ言語パック"の3種類がある。この時点ではLIPもしくは一部ローカライズ言語パック程度だが、UIが日本語化したのは大きな一歩だった。

ビルド9926の大きな特徴を並べると、Cortanaとスタートメニューの2つ。英語による音声検索を可能にしたCortanaだが、日本語用言語パックを導入した場合、場所や表示言語を米国/英語に切り替えたアカウントを用意してもCortanaは有効にならなかった。残念ながら2015年7月29日のアップグレードローンチ時点で日本語対応は見送られたが、検索機能自体は使用可能だった。

Cortanaを有効にした状態。アイコンをクリックすると音声認識が始まるが、発音が悪いせいかコンテンツが示されていた

表示ウィンドウを拡大し、ファイルやアプリケーションといった個別検索も行えた

もう1つのスタートメニューも大きく変化している。ビルド9926のスタートメニューはXAML(XMLベースのマークアップ言語)で再構築し、デスクトップモードとタブレットモードをシームレスに切り替えるContinuum(コンティニュアム)や、今後を見据えた実装変更だった。当時Aul氏は「新スタートメニューの開発は始まっていない」と述べているように必要最小限の実装にとどめ、透過効果やドラッグ&ドロップ操作は本ビルドでサポートしていない。

ここでWindows 10の方向性について述べておきたい。2015年3月18日から2日間、中国・深センでMicrosoftが開催したWinHEC 2015では、Distinguished Engineerを勤めるDon Box氏が登壇し、Windows API(簡潔にプログラムを記述するためのインタフェース)について解説した。Windows 10はWindows 8から導入したWinRT(Runtime) APIへ移行するが、すぐに切り替わるわけではない。

改めて述べるまでもなく既存のデスクトップアプリはWin32 API上で動作している。だが、Box氏も「一定期間は重複する」と述べたようにWindows 10ローンチから数年間はWin32 APIとWinRTが両立する"移行期"にあたる。つまり、スタートメニューをXAMLベースで再設計したのは、このようなAPIレベルでの置き換えが発生しているため、早期に対応したのだろう。

XAMLベースで再構築したWindows 10 Technical Previewのスタート画面。一見すると違いは分からないが、ドラッグ&ドロップ時の動作など肌感覚で異なっていた

MicrosoftのDon Box氏。Windows Communication Foundationなど多くの基礎サービス開発に携わってきた

WinHEC 2015のスライドより。Win32 APIからWinRT APIへの移行には重複する時期が発生すると言う