第4章 Windows 10のアプリケーション - クラウド変換を搭載したMicrosoft IME

Windowsにおける日本語入力環境は決して恵まれているとは言えない。DOS時代は多くの日本語入力FEP(フロントエンドプロセッサ)が存在したが、時が進んで名称が日本語IM(インプットメソッド)と変わった頃には、数えるほどしか残っていなかった。数えてみると日本語用Microsoft IME(MS-IME)、ATOK、Google日本語入力の3つ程度。他の日本語IMは広く使われているとは言えないものばかりだ。

そのため我々のように文筆を生業にするユーザーは有償のATOKを購入し、無償で十分というユーザーはMS-IMEやGoogle日本語入力を選択するケースが多い。そもそもWindows XP以降はIMM32(Input Method Manager)からTSF(Text Services Framework)へ移行しつつも両者を利用する状況が続いていた。だが、2012年に登場したWindows 8以降、Windowsストアアプリの関係からTSF一本に絞られている。前述した現在主流のIMEはすべてTSFに対応しているが、当時は多くの混乱を招いたことを記憶している方も少なくないだろう。

他方でMS-IMEの進化は近年その"なり"を潜めている。以前、日本マイクロソフトの開発関係者にIMEに関して聞いたところ、日本語辞書のチューニングは日々行っていると説明していたが、公式ブログの更新は2012年で止まったまま。その変化を我々が知る機会は少ない。正直なところ筆者もMS-IMEに対して注目していなかったが、日本マイクロソフトは他のブログ記事で、MS-IMEに新機能を搭載したことを明らかにした。

記事によればWindows 10のMS-IMEには、クラウド候補機能を搭載したと言う。ご承知のとおり日本語変換にクラウドを利用するのは、Google日本語入力もATOKも実施済みだが、これらの機能は入力内容をサーバに送信することで実現しているため、プライバシー問題が発生する。そのためかMS-IMEもクラウド候補の既定値は無効だ。

「設定」の「自国と言語\地域と言語」に並ぶ「日本語」のオプションから、「Microsoft IME」のオプションを開くと設定項目が現れる

「Microsoft IMEの詳細設定」ダイアログの<予測入力>タブの<クラウド候補を使用する>を有効にしてもよい

実際に使ってみると、マッチするキーワードに近づくとクラウド辞書の候補を提示する仕組みのため、誤変換を招くような場面は皆無である。どのような構造で動作しているのかMicrosoft Network Monitor 3.4で確認してみると、any.edge.bing.comにアクセスし、データを取得していることが確認できた。察するにbingのサジェスト用APIを叩いて、取得した結果を候補として提示しているようだ。クラウド辞書を手動でメンテナンスすることは考えにくいため、更新頻度に関して不安を覚える必要ないだろう。

クラウド候補機能を有効にしても、他の入力変換を妨げることはない

マッチするキーワードに達すると、クラウド候補が現れる。なお、候補にはクラウド候補を示すアイコンが付加する形だ

Microsoft Network Monitor 3.4によるネットワークパケットの内容。any.edge.bing.comにアクセスしていることが確認できた

Bingでサジェスト検索を試してみると、MS-IMEのクラウド変換と一部重なる候補が現れる

少なくともこれまでMS-IMEを使ってきたユーザーには有益な機能になるはずだが、他のIMEから乗り換えるまでアドバンテージとは言えない。前述のとおりMicrosoftは標準辞書のメンテナンスし、Windows Update経由でリリースしているが、個人的にMS-IMEには、基盤となる変換ロジックの精度向上を高めることを期待したい。だが、それは今後の課題となりそうだ。