前述したバラエティのレギュラー番組もかつてほどの視聴率が取りづらくなる中、特番にはこれまで以上に注力していきたいところ。しかし、特番の開発枠『サタバリュ』からのヒット企画発掘も難しくなっているほか、近年お笑い賞レース特番と音楽フェス特番が飽和状態となる中、「ライブ感の高いスポーツに活路を見い出そう」と考えるのは自然な流れに見える。
特にスポーツの国際大会は競技を問わず最も多くの人々が同時に見るコンテンツであり、試合中継の視聴率獲得はもちろん特番の放送、さらに情報番組やバラエティとの連携も可能。大会期間中、情報番組やバラエティで積極的に扱いつつ、特番を連発して視聴者にお祭りさわぎのようなムードを感じさせられる。
つまり、まとまった期間、特番だけでなく複数の番組で視聴率アップが期待できるほか、局内も活性化できるということ。まさに今、日テレだけでなくフジやNHKも局内は活気が生まれていて、手を引いたテレビ朝日、TBS、テレビ東京の局員はどこか寂しさを感じているのではないか。
2018年のロシア大会以降、ジャパンコンソーシアム(国際的なスポーツイベントでNHKと民放連各社が共同制作する放送機構)が機能しなくなるほど放映権が高騰しているのは確かだが、それだけでは割り切れないものがある。
とりわけ今年は3月のWBCに続いて5月2日のボクシング・井上尚弥VS中谷潤人も有料配信のみに留まり、テレビ業界全体がスポーツのビッグマッチから遠ざけられていた。落胆ムードは明らかだっただけに『FIFAワールドカップ』の地上波放送は大きい。
3月からの流れを受けて視聴者から「サッカーは無料のテレビ放送で見たい」というニーズが高まっているほか、5月20日にスポーツ庁と総務省が『スポーツを観る機会の確保及びスポーツ放映に関する検討会』を初めて開催したばかり。少なくともスポーツでテレビが期待されているのは確かであり、日テレ、フジ、NHKからはそれに応えようという意欲が感じられる。
日本代表が勝ち進めば緊急特番も
特に日テレはジャイアンツ戦を筆頭に昭和時代から最もプロ野球中継を行ってきたテレビ局であるにもかかわらず、WBCの試合を中継できず、Netflixから制作を受託するという決断を強いられたばかり。
培ってきたノウハウを生かし、特番の放送で一定の成果を得られたものの、事実上の制作会社となったことに否定的な声もあがっていた。だからこそサッカーの『FIFAワールドカップ』ではゴールデンタイムの生放送特番を連発することで存在感を示しておきたいところだろう。
民放各局にはそれぞれ国際試合の中継を続けてきた球技があり、視聴者の中にもサッカーはテレ朝、バレーボールはTBS、フィギュアスケートはフジ、卓球はテレ東などのイメージがあるのではないか。近年、日テレはラグビーやバスケットボールに注力していたが、今年は野球とサッカーにも「今できる精一杯のことをやろう」という姿勢で挑んでいる。
冒頭にあげたように試合中継はNHKが圧倒的に多いものの、生放送特番が支持されたら「スポーツは日テレ」という評価も得られるのかもしれない。もし日本代表が決勝トーナメントを勝ち進むほど緊急特番が編成されれば、その可能性は高まるのではないか。
日テレは「スペシャルナビゲーター」に竹内涼真、「日本戦スペシャルアンバサダー」に本田圭佑、さらに特番には明石家さんまの出演を予告しているが、これが吉と出るのか。サッカーは「コアなファンとライトなファンの両方を満足させることは難しい」と言われるだけに、制作サイドの姿勢と力が問われるだろう。