7月早々から今夏ドラマがスタートしているが、最大の話題作は『VIVANT』(TBS系、26日スタート 毎週日曜21:00~)の第2弾で間違いないだろう。
3年前の2023年夏に放送された第1弾は全話の総視聴者数が6,000万人超という大ヒット(ビデオリサーチ調べ/全国32地区、タイムシフト含む)。さらに『東京ドラマアウォード2024』連続ドラマ部門グランプリのほか各賞を受賞した大作であり、第2弾は夏秋の2クール放送が予定されている。
また、ドラマ好きの間で「『VIVANT』をしのぐ注目作」にあげられているのが『Tシャツが乾くまで』(TBS系、10日スタート、金曜22:00~)。『silent』『いちばんすきな花』『海のはじまり』(フジテレビ系)などを手がけた生方美久の脚本、『青い鳥』『コウノドリ』『カルテット』(TBS系)などを手がけた土井裕泰の演出、地上波連ドラ主演は18年ぶりの蒼井優という座組みで「面白くないはずがない」と期待されている。
特筆すべきは両作ともに事前情報をほぼ伏せていること。これは他局のドラマ枠では考えられない戦略であり、業界内からは「やはりTBSのドラマはすごい」という羨望の声も聞こえてくる。いったい何がすごくて、なぜそれが可能なのか。テレビ解説者の木村隆志が掘り下げていく。
オリジナルの第1話を見せる難しさ
「連続ドラマで最も重要なのは第1話」は業界内の常識。しかも00年代に録画機が進化し、10年代にネット配信が普及して視聴率獲得がより難しくなったことで、第1話の重要度は増していた。
そもそも連続ドラマは「第1話を見なかった人が途中から見る」ことが難しいジャンル。「第1話を見てもらえなければ約3か月弱、他局の裏番組を見られてしまう」というリスクが高く、局にとしてのダメージは大きい。
現在、季節ごとに40作以上(ゴールデン・プライム帯で20作前後)が放送されているが、視聴率が右肩上がりのドラマは1~2作程度で、「良くて横ばい」「徐々に下がっていく」というケースが大半を占めている。
ほとんどの作品が「全話の中で最高視聴率は第1話」であり、だからこそ制作サイドとしては「最初に少しでも高い数字を得ておきたい」ところ。第1話の見逃し配信期間が通常の1週間ではなく全話終了時まで延長されていることからも、その重要性がわかるのではないか。
そのため各局の制作サイドは第1話をリアルタイムで見てもらうために刺激的な設定や展開を用意し、主演俳優らは懸命に番宣を行っている。もはや俳優の名前だけで見てもらえる時代ではなく、情報量が増したこともあって、「あえてネタバレさせて引きつける」というPR方針の作品も少なくない。
民放各局では視聴率低下にともなう放送収入への不安がある中、IP(インテレクチュアル プロパティ=知的財産)ビジネスの重要性が高まり、その中心となるドラマは20年代に入って作品数がジワジワと増えていた。
続編、スピンオフ、漫画、アニメ、ゲーム、小説、グッズ、イベント、企業タイアップなどで幅広く稼ぐためにはオリジナルを手がける必要性があるが、それは「原作ファンに頼れない」ということ。ゼロから視聴者を集めなければいけないため、「事前情報は出し過ぎくらいでちょうどいい」と語るスタッフもいる。
その点、オリジナルなのに情報を伏せたまま第1話を迎える『VIVANT』と『Tシャツが乾くまで』の特異性がわかるのではないか。
