ではなぜこの2作は情報を伏せて第1話を放送できるのか。
まず前提としてあげておかなければいけないのは、これまでの実績と信頼があること。『VIVANT』は第1弾でも物語や登場人物どころか作品ジャンルすらわからない状態で第1話を迎え、さらに二宮和也をサプライズで登場させて驚かせた。さらに放送開始後も「どんなゴールへ向かっているのか」すらわからない脚本・演出で考察を促し、最後まで視聴者を楽しませたという実績がある。
主演・堺雅人が第2弾放送前のインタビューで「知らないほうが絶対に面白い」「台本読みながら『ええ~!』の連続だった」などと話していたが、「事前情報がないほうが面白い」はドラマに限らずコンテンツの基本。知らないからこそ驚き、笑い、怒り、感動の程度が大きくなるため、できれば他局の制作サイドもやりたいところだが、前述したように「第1話で見てもらえなければほぼアウト」のリスクが高く、なかなか踏み切れない。
ただTBSも常にそれができるわけではなく、第1弾の際も「看板ドラマ枠・日曜劇場」「主演級経験俳優が集結」「『華麗なる一族』『南極大陸』『半沢直樹』『下町ロケット』『陸王』『ドラゴン桜』らを手がけた福澤克雄監督が原作から担う」「2か月半にわたるモンゴルロケを行った」という前提があったからこそ踏み切れた。
また、「日曜劇場のサプライズ」と言えば、今冬の『リブート』第1話で松山ケンイチ、最終話で北村匠海の登場が記憶に新しいのではないか。主演級俳優ですらシークレットにしてきた実績があり、視聴者も「TBSなら何かやってくれそう」という信頼関係が生まれつつある。実際、第2弾の公開情報は、ほぼ「アゼルバイジャンで約2か月のロケが行われたこと」のみだが、ネット上には「それだけで十分」という声があがっていた。
「夏こそ攻める」もTBSの伝統か
一方の『Tシャツが乾くまで』が事前情報を伏せられるのは、脚本家・生方美久への期待感が大きい。連ドラデビュー作の『silent』がいきなり大ヒット作となり、その後も独特な会話劇でドラマ好きを魅了してきただけに、「初めてフジから出てTBSと組んだらどんなドラマになるのか」などの声があがっている。
さらに、名優と認知されながらも連ドラ主演から遠ざかっていた蒼井優、TBSエース演出家の1人である土井裕泰、助演に松山ケンイチ、夏帆、中島歩、高橋文哉、リリー・フランキーらが名を連ねることで信頼性を確保。半世紀超の歴史を持つドラマ枠『金曜ドラマ』が培ってきた実績と信頼もある。
番組ホームページの「あらすじ」は2行あまりに留め、「相関図」は伏せられているが、プロデューサーの千葉行利は「綺麗ごとは一切なしの毒入りのヒューマンドラマ」などとコメントしていた。生方が尊敬している坂元裕二が手がけた『カルテット』(TBS系)のような中毒性のある作品になるのかもしれない。
もちろん制作力があってこそだが、それ以上にTBSと他局の差が大きいのは「脚本から演出、キャスティング、PRまで、プロデュース全般で思い切った策が採れる」ことだろう。視聴者に期待させ、局内関係者もスポンサーも納得させられるのはTBSが果敢なチャレンジを続けてきた証であり、他局がそれに追随できていないことの証にも見える。
かつて仕事と学校の長期休みがあり、イベントも多い夏は「連ドラの鬼門」などと言われ、特に10年代以降は苦しい季節となっていた。
しかし、TBSにとっては『半沢直樹』(13年、20年)、『義母と娘のブルース』(18年)、『凪のお暇』(19年)、『私の家政夫ナギサさん』(20年)、『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(21年)などのヒット作を生み出してきた季節でもある。
『火曜ドラマ』の『君の好きは無敵』(14日スタート、毎週火曜22:00~)も含め、今夏ドラマの中心となっていくのだろう。