――6月から読売テレビに帰任されましたが、ytvメディアデザインの2年間は、充実した日々を送られていた感じでしょうか。
性には合っている気がしました。会社としてあまりやっていないところを耕しに行くのは楽しいです。『コナン』は収穫係みたいな仕事でしたから、みんながやってきたものを、うまく収穫しないといけない。一方でAIは、鍬(くわ)を持って耕しに行っているイメージです。そこで耕したら、あとはみんなそれぞれ種を植えたり苗を植えたりしてもらえる環境を作る仕事ですね。
――ジャンルもメディアも問わず、いろいろなことをやってきた中で、一貫して大事にしていることはありますか?
『コナン』の時に話した「初めて見る人がいる」ということです。今、「テレビが最先端ではなくなった」と言われますけど、テレビが最先端だったことなんて、これまで一回もないと思うんです。そもそもドラマも映画の方が先にあって、テレビドラマは少し下に見られていたところから始まっている。自分で振り返っても、20歳ぐらいの時にテレビを見ていたかというと、見ていないんです。外で飲んでいる方が楽しいし、見るとしても自分で選んだ映画を借りて見る。若者なんてテレビから離れて当然なんです。
でも、子どもの時に最初に入るのはテレビじゃないですか。アニメなら『ドラえもん』から入って、少し経って『コナン』に行く。そこから先は、自分の気に入ったものを自分で見つけに行く。ドラマも同じで、“教科書1ページ目”のようなドラマをテレビで見て、ドラマに慣れ親しんで見る目が肥えてきたら、邦画を見たり、ハリウッド映画を見たりして、だんだん自分で選ぶようになる。
テレビには、ハイブローですごく質の高いものもあっていい。でも、入口になる“教科書1ページ目”がちゃんとテレビにあれば、そこから巣立っていって、映画を見るようになって、またいずれ戻ってくる。そういう場所でいいんじゃないかと思うんです。だから、改めて子ども番組はすごく大事だと思うんです。
――子ども番組ですか。
テレビ東京が人気なのは、子どもの時から見ているのも一因だと思うんです。どれだけ早く、局にタッチしてもらえるかが大事だと感じます。先日、子どもが初めて『サザエさん』を見たんです。長男が小学3年生なんですが、カツオが「姉さん」と言った時に、「どういうこと?」と言うんです。「おじいちゃん、おばあちゃんに見える人がいるでしょ。あの子どもはサザエとカツオとワカメまでで、一番小さい子はサザエの子どもなの」と説明したんですけど、まあ初見だとそうなりますよね。
ということは、ドラマを初めて見る日も来る。その時に、考察系のすごく複雑なものが一発目のドラマかというと、やっぱり違う気がします。「今日初めて見る人がいるかもしれない」という感覚は持っておいたほうがいい。ショートドラマも、若い人がスマホで入りやすいという意味で、入口になるといいなと思って作りました。
『コナン』がすごいと思ったのは、アニメだけじゃなくて、映画館の入口になっているんです。『コナン』を見に行くと、いろんな映画の予告編を見て、そこから他の映画を見るようになるじゃないですか。
縦幅と横幅を少しでも持ちたい
――新しいメディアを耕していく中で、“教科書1ページ目”の意識はより強くなったんですね。
自分の中で、横幅と縦幅という感覚があります。横幅は、バラエティもやる、ドラマもやる、アニメもやるということ。縦幅は、特定のリテラシーがないと分からないものから、“教科書1ページ目”のようなものまで持つことです。この縦幅と横幅を、少しでも持ちたい。そこが大事な気がしています。
いろんなところに足を突っ込んで、何に生きるかは分からない。逆に言うと、僕は何のスペシャリストでもないという思いもあります。何一つ大成しなかったから転々としている、という見方もできる。でも、ドラマを20年やっているより、バラエティもアニメもやっていることは、めちゃめちゃ強みだなと思います。ありがたいキャリアを歩ませていただいていると思いますね。
――6月から読売テレビに帰任されましたが、どのような業務になるのですか?
主にドラマ制作を担当します。とはいえ、その時々の流れで、いろんなことをやれるといいなと思っています。
――ご自身が影響を受けた番組を挙げるとすると、何でしょうか?
すごく面白くない答えかもしれませんが、『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ)です(笑)。それと、NHKでやっていた『フルハウス』のようなシットコムもめちゃくちゃ見ていた記憶があります。
日本のコンテンツとして、実写はアニメに比べると階段が少ないと思うんです。アニメは『ドラえもん』、『コナン』と行って、その先に大人向けのアニメがある。でも実写には、その階段が今なかなかない。自分の子どもに最初に見せたいドラマは何だろうと考えた時に、昔は『ロンバケ(ロングバケーション)』とか『古畑任三郎』とか、いろいろあったなーと思うんですけどね。
――いろいろお話を伺わせていただき、ありがとうございました。最後に、気になっている“テレビ屋”を伺いたいのですが…
“入口”の流れで言うと、テレビ東京で『シナぷしゅ』を立ち上げた飯田佳奈子さんです。テレ東さんは子ども番組が多いですが、「ついに0歳、1歳まで取りに行ったか!」と思って。うちの子どももその頃はめちゃくちゃ見ていましたし、今、最初に見るテレビがテレ東になっている。その戦略はすごいなと思います。
子ども向け番組は作り手のエゴを全部捨てないといけない部分があると思うのですが、それよりも下の年代の乳幼児向け番組はどのような思いで作られているのか、聞いてみたいです

