――バラエティ、ドラマに続いて、今度はアニメ『名探偵コナン』も担当されました。
7年バラエティをやって、7年ドラマをやって、いろいろ企画を出してきた中で、このままだとアイデアが枯れるなと思っていた時期がありました。ちょうど二人目の子どもが生まれた頃で、仕事に対して全振りでやりきれないようなタイミングでもあったんです。
「そろそろ異動もありかな」と思っていたら、「コナンです」と言われて、あまりの大きなタイトルに「おお……」と(笑)。自分がアイデアを出して、演出するという形ではなかったのですが、やっぱり背負うものが大きいですよね。テレビと映画を3年やりました。
――メガヒットのIPから、学ぶものは大きかったですか?
まず、あれを毎週放送しているということがすごいです。原作回もありますが、多くはオリジナルで、毎週毎週、事件を30分で解決する台本を作っていく。これはなかなか大変です。映画では(原作の)青山剛昌先生とも打ち合わせするのですが、やっぱりすごいなと思いました。
――青山先生のどんなところにすごさを感じましたか?
「我々ごときの話を聞いてくれるんだ」と思いました。『コナン』は先生の世界じゃないですか。先生が「こうだ」と言えばそうなる。だって世界を作った人ですから。
でも、打ち合わせで「何か思いついたことがあったら言ってほしい」と言ってくださるんです。それで頑張って言ってみると、絶対に否定しない。「面白いね、いいね」と受け止めてくれる。でも、「それだったらこっちのほうが良くない?」と返ってくる案が、また正解なんです。
その打ち合わせはもちろん緊張感もあるんですが、本当に全員の話を聞いて、「なるほどね」と言いながら、最終的に「こうしたほうがいいよね」と出してくる。あそこまで上り詰めた人が、なぜそんなにフラットに全部受け入れられるんだろうと思いますし、そこでみんなが意見を言うから、面白いんだなと感じました。
――ほかにも『コナン』で得た気づきはありましたか?
『コナン』をやっている時、まだ小さかった自分の子どもには『コナン』を見せていなかったんです。人が死ぬ話なので。そう思った時に、「今日初めて『コナン』を見る人っているんだな」と気づきました。つまり30年続いていて、今も人気が右肩上がりということは、新しいファンが次々に入ってきているということです。僕自身も小学生ぐらいの時にアニメが始まって、しばらく離れて、また見るようになった。そうやって一度離れて戻ってくる人もいれば、今日初めて『コナン』を見る人もいる。その感覚を持たないといけないと思いました。
『コナン』はファンが多いですが、ファン向けにやりすぎると、それ以外の人が分からなくなってしまう。だから『コナン』はそれをやらないんです。映画でも冒頭に「俺は高校生探偵・工藤新一」と、結構長く説明するじゃないですか。今年初めて見る人もいるという感覚を持って、新しいファンを取りにいこうとしている。そこはテレビとしてもすごく大事なことだと思いました。
――そうした中で、汐口さんの経験を『コナン』で生かしたものはありますか?
内容的なことというよりは、今言ったようなことですね。「社会人になってずっと『コナン』を担当しています」という歴戦のスタッフもたくさんいるので、どうしても内々で「これ分かるよね」となりがちです。なので、SNSで宣伝をするときでも、「何も知らない人が見たら分かるか」「人物の相関が分かるか」ということを丁寧にやりましょう、とはずっと言っていた気がします。
『コナン』の強みは、単純な映画の面白さだけではなく、たとえば距離を縮めたい相手を「コナン見に行こう」と誘えることでもあると思うんです。その時に、全然知らない人でも「これを見ておけば分かるよ」という状況をどう作るかは意識していました。
読売テレビ本体では手を出しにくい事業に挑戦
――その後、ytvメディアデザインに出向されました。
2年前からです。『コナン』を経て、もう一回、自分の中のクリエイティブで、何か小さくても作っていくことをやりたかったんです。
それと、まだテレビがあまり手を出していないところにどう行くか。『悪夢の不倫温泉』といった縦型ショートドラマや、映像化を目指す原作漫画、宮城さんとやったAIドラマ『サヨナラ港区』など、読売テレビ本体では手を出しにくいところをやってきました。6月15日には新しい漫画『裏社会の構成作家』をリリースします。闇落ちした構成作家が社会の裏側で「台本」を書いて事件を巻き起こしていくお話です。
――メディアを問わず、いろいろできる環境なんですね。
そうですね。パートナーになってくれそうな面白い会社があったら、ホームページの問い合わせフォームから「ショートドラマをやろうと思っていて、一度お話させてもらえませんか?」と連絡します。急にそんなことを言われたら、向こうは「何だろう」と思って、ytvメディアデザインという会社を検索して僕の名前を見ると、『名探偵コナン』が出てくる。そうすると、皆さん話を聞いてくれるんです(笑)。『コナン』のブランドを勝手に使って申し訳ないんですけど、そんな感じでいろんな会社さんと話をしながら、新しくやれることを探していました。
