年の瀬が迫ってきた。やれ年末進行案件だ、やれ忘年会だ、やれクリスマスだ大掃除だと、大晦日をピークとして、どんどんエネルギーが溜まっていく感じは嫌いじゃない。年越しそばもそのうちのひとつだ。まだ月半ばなので気が早いが、師走にふさわしい一杯を求めたい。

  • 「とろろ昆布そば」(370円)(写真:マイナビニュース)

    「とろろ昆布そば」(370円)

向かったのは「蕎麦一心たすけ 日本橋店」。数年前、三田店を紹介しているが、今回は日本橋。東京メトロ銀座線「日本橋」駅より徒歩3分。八重洲仲通り沿いにあり、もちろんJR東京駅からも徒歩圏内である。立ち食いそばの名店のひとつで、お隣はこれまた名店の「よもだそば 日本橋本店」。付近は意外にもこういったリーズナブルな店舗も少なくない。

オリジナリティ豊かなメニューがずらり

押し合いへし合いの銀座線に揺られ、9時過ぎに店に到着。先客は3人ほどで、落ち着いた時間帯だった。9時半から一度中休みに入るようで、なんとかギリギリ間に合った。戸は開けられており、入ってすぐのところに食券機がある。えび天はもちろん、ピリ辛そぼろそば、なめこおろしや納豆そば、揚げなす南蛮、オニオンスライス、揚げもちそば……など他店で見かけにくいそばがたくさん。さらにねぎとろ丼や鰻丼などもあり、選択肢に困ることはない。選んだのは「とろろ昆布そば」(370円)。変わり種ではあるが、ちょっとコンサバ、申し訳ない。とろろ昆布が小さい頃から大好きなのだ。

店内はスタンド型の丸テーブルとスツール、窓際に着席カウンターがある。10人ちょっとくらいの小さな店舗。静かなBGMが流れている。食券を預ける受渡口には天ぷらが山盛りに積まれている。バット揚げ置きの天ぷらとは思えないほど、新鮮(?)でみずみずしい天ぷらだ。待つこと1分。そばが完成。

シンプルイズベストな満足度の高い一杯

とろろ昆布、さやえんどうにネギのみの実にシンプルなそば。ほとんどかけそばのような見た目だが、侮るなかれ。ダシと蕎麦は絶品で、鼻に抜ける香りは一級。誰が食べても370円のそばとは思えない風味だ。さやえんどうの茹で加減はちょうどよく、歯ざわりと甘みのどちらも堪能できる。そしてとろろ昆布。昆布の旨みがツユの旨みと相乗効果を起こし、実に味わい深い。またそれでいてボリュームも少なくなく、値段の何倍もの満足度を得ることができた一杯だ。

  • 東京メトロ銀座線「日本橋」駅より徒歩3分の「蕎麦一心たすけ 日本橋店」

「とろろ昆布そば」。食してみれば、なかなか年越しそばとしてもふさわしかったのではないか。自宅ではここまで丁寧な一杯はつくれないだろうが、とろろ昆布は大いに「アリ」、今年の候補のひとつにしたい。