2020年、そば始め。今年もよろしくお願いいたします。最近は、どうも冬が暖かい。まだ今年はマフラーや手袋のお世話になっていないし、この日も都内の最高気温は15度。冬の立ち食いそばは厳しい寒さが最高のスパイスになるのだが、それはまた次の機会になった。

  • 中野「中野屋」で注文したのは、年初めの一杯に相応しい「わかめ玉子そば」

    「わかめ玉子そば」(430円)

通勤ラッシュを逆行するように新宿駅から下りの中央線に乗り換え、降りたのはJR「中野」駅。南口すぐのところで店を構える「中野屋」ののれんをくぐった。約10年前、中野駅近辺に住んでいたことがあり、隣のスポーツジムの会員だった頃から気になっていた店だ。インターネットを叩いてみると、なかなかの老舗とのこと。昼は立ちそば、夜は立ち飲みになる二毛作の店。早朝からの営業も嬉しい。

基本をおさえた王道メニューが並ぶ

明るいうちでも店内は居酒屋の雰囲気。左手側に厨房が大きくとられており、L字のカウンターがそれに沿って配されているのと、壁側にもカウンターが一列。午前9時頃、3~4名の先客あり。スピーカーからはAMラジオが流れている。厨房を取り仕切るのは大将一人。入口右手に券売機があるので、こちらでそばを選ぶ。五目ごはんやミニカレーのセットがあるが、基本に忠実な品揃え。月見、たぬき、わかめ、天ぷら、きつね、コロッケなど。単品トッピングや冷しもあり、そば・うどん両方可。また、「500円券」や「1,000円券」などのボタンもあるが、これは夜営業用のチケットになるらしい。串焼きやおでんなど、こちらの居酒屋メニューも奇をてらわない実直な顔ぶれだった。選んだのは「わかめ玉子そば」(430円)。カウンター越しに置いて、約30秒で丼が到着。

立ち食いそばの醍醐味が詰まった一杯

大雑把に盛られたわかめと大量の小口ネギ。隅に輝く玉子の黄身が紅一点。そこにパパッと七味を振りかけて頂く。一口すすれば、やわらかくどっしりとした麺。立ち食いそばはこうでなくては、とあらためて感じる。個人的最強の具「わかめ」のモキュモキュとした食感、少しキツいくらいのネギも美味い。熱々のツユは、やや甘めで、玉子の黄身を崩せば一層まろやかに。もちろん麺と絡み合ってコクも生まれる。立ち食いでササッと、という場所なのだが、ボリュームも申し分ない。いい朝食をとらせて頂いた、ごちそうさまでした。

  • JR「中野」駅南口すぐのところで店を構える「中野屋」

記憶に残る味かと問われれば否だが、誰の心の中にも持っているあの立ち食いそばの味、ど真ん中。王道の一杯といったところか。立ち食いそばの味は、麺や具材だけでなく、食べた場所や時間、天気であったり、仕事や人間関係などその時の自分の状況などに拠ることも大きい。新しい年をこの一杯で迎えられたことを頭の片隅に置きながら、また今年も立ち食いそばを巡っていきたい。

著者:高山洋介

1981年生まれ。三重県出身、東京都在住。同人サークル「ENGELERS」にて、主に銭湯を紹介する同人誌『東京銭湯』『三重銭湯』『尼崎銭湯』などをこれまでに制作