文章を書くためには、自分に向けて、できるだけ「具体的な質問」を行います。そして出てきた答えが、文章を構成する材料となります。そこで有効な方法が「9マス自問自答法」です。

9マス自問自答法とは、9つのマス目を使って自分にインタビューし、自分で答える方法です。頭のなかで考えたことを書き出すことで情報が視覚化され、悩まず文章を書けるようになります。そして9マスに質問と回答を書き終わったら、準備完了。集めた情報をつなげて、文章を書いてみましょう。

  • 「伝わる文章」が書けず悩むことはありますか?(写真:マイナビニュース)

    「伝わる文章」が書けず悩むことはありますか?

9マスを使って情報を集約

書く内容は、仮に、「自分のイチ押しラーメン」としましょう。今まで食べておいしかったラーメンについて、まず9つ質問を考えます。その質問に答えたのが、次の表です。

  • 9マス自問自答法 :提供『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)より

    9マス自問自答法 :提供『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)より

この情報のなかから、ざっくりと2種類に分けます。 それは、「事実」と「自分が感じたこと」です。

まず、事実はどれでしょうか。おそらく「とんこつラーメン」「飯田橋にある『マルちゃんラーメン』というお店」「会社の同僚である小林と佐藤」「もやし、チャーシュー、半熟卵。決め手は柚子胡椒」この4つですね。

それ以外の回答は、「自分(あなた)が感じたこと」です。この「事実」と「感じたこと」をうまく組み合わせて、文章を書いてみましょう。

文章例1

今日のお昼は、飯田橋にある「マルちゃんラーメン」という名前のお店に、会社の同僚(小林と佐藤)と一緒に、とんこつラーメンを食べるために行ってきました。運ばれてきたラーメンは、茶色いスープに具材がてんこ盛り。そこから立ちのぼる湯気が食欲をそそりました。スープのお味はというと、とんこつ魚介系でかなりドロドロしていました。ところが、ひと口すすってびっくり。思ったよりもあっさり味だったのです。肉厚なチャーシューとトロトロの半熟卵、決め手の柚子胡椒も良かったなあ。麺のほうは、コシと弾力の両方を備えた中太ちぢれ麺で、歯応えはもちろん、口の中での存在感もMAXでした。そうそう、トッピングした青じそも、磯の風味とお味が◎。これまで自分が食べてきたラーメンのなかで、3位くらいの順位といえるのではないでしょうか。得点にするなら95点といったところ。できれば週1くらいで食べに行きたいお店です。

ある意味、9マスに書き出した答えを並べただけですが、それでも、これだけの文章を作ることができました。自問自答さえしっかりできていれば、自然と書く態勢は整っていくものなのです。

「情熱で」書いて 「冷静で」直そう

文章例1のように、文章を書くときにはまず、ありったけの情報を盛り込む意識が大切です。私はこれを「情熱で」書くと呼んでいます。この時点で文章に高い完成度を求める必要はありません。「情熱で」書くときに意識すべきは次の2点です。

(1)情報を漏れなく書く
(2)一気に書き上げる

(1)の「情報を漏れなく書く」とは、自問自答して出てきた情報をできるかぎり盛り込む という意味です。一方で、余すことなく情報を盛り込んだ文章は冗長になりがちです。書き終えたら必ず読み直して「推敲する(練り直す)→修正する」という編集作業を行います。

筆者はこれを「冷静で」直すと呼んでいます。この作業は、完成度を高めるうえで欠かせません。「冷静で」直すときに意識すべきは次の2点です。

(1)なくても通じる情報はカットする
(2)スムーズな流れを作る

先ほどの文章1を「冷静で」直したものが、次の文章例2です。

文章例2

今日は、会社の同僚3人でとんこつラーメンを食べに行きました。お店は飯田橋にある「マルちゃんラーメン」。スープは とんこつ魚介系でドロッとしているにもかかわらず、予想外のあっさり味。肉厚なチャーシューとトロトロの半熟卵、それに決め手の柚子胡椒も美味でした。麺はコシと弾力を兼ね備えた中太ちぢれ麺で、歯応えはもちろん、口のなかでの存在感も十分。これまで食べてきたラーメンのなかで3本の指に入ります。得点にするなら95点! これからも週1ペースで食べに行きたいと思います。

一度書き上げた文章から情報を取捨選択し、表現を最適化することで、ギュッと濃密な文章ができあがりました。「冷静で」直している最中に「こんな情報を加えたらもっといいかもしれない」とか「この情報が足りないかも」と気付いたときは、臨機応変に情報を補いましょう。

「冷静で」直すときの意識の割合は「ムダを削る:不足を補う=7:3」くらいがベターです。そもそも「情熱で」書くことに成功していれば、補う内容はそう多くならないはずです。

(1)自問自答をする
(2)自問自答でそろえた情報を使って「情熱で」書く
(3)文章を磨き上げるために「冷静で」直す

この3ステップを踏むことが、文章作成の大原則です。とりわけ(1)の自問自答は、文章作成のカギ。文章の質を高めたいなら、書く文章の内容に応じて、的確にかつ具体的に自問自答していきましょう。

著者プロフィール: 山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。
出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。23年間で3000件以上の取材・執筆歴がある。講演や研修を通じて「論理的なビジネス文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメールの書き方」「売れるセールス文章&キャッチコピーの作り方」「集客につなげるブログ発信術」など実践的ノウハウを提供。2016年からは中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」も定期開催中。多数のインフルエンサーを輩出している。著書に、『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)のほか、15冊以上ある。