今回は、素材を集める具体的な方法として、「9マス」を使った方法を紹介します。9マスを使えば、欲しい情報のアンテナを立てることができ、自然と情報が集まってくるようになります。書きたいのに「書くことがない!」と困っている人に役立つアウトプット法です。

  • 書きたいのに「書くことがない!」と困ったら?(写真:マイナビニュース)

    書きたいのに「書くことがない!」と困ったら?

文章を書こうと思ったら

たとえばあなたは1週間後、海外旅行に出かけるとします。帰国したら、趣味で運営している旅のブログに、旅行のレポート記事を書こうと考えています。ブログの読者ターゲットは「海外の文化・カルチャーに興味がある人」です。

何のアンテナも立てずに海外へ行けば、「楽しい旅行だった」程度の感想で終わってしまうかもしれません。帰国していざ文章を書こうとしたときに、「ん? ちょっと待てよ。何を書けばいいんだろう? 1つひとつ思い出してみよう」となるはずです。

こうなると、おそらくレポート記事を書くことに苦戦するでしょう。時間もかかるうえ、完成した記事の質も、決して高くないことが予想されます。

一方、海外旅行に行く前にあらかじめアンテナを立てておけば、後で劇的に書きやすくなります。

書くテーマを分解する

アンテナを立てるとは、テーマを分解することです。自分に対して「海外旅行を分解すると、どういう項目が出てくる?」という質問をぶつけます。あるいはシンプルに、読み手は海外旅行のどんなことを知りたいか、想像してみます。

9マスの使い方は、極めて単純です。マス目の中央にテーマ(今回は海外旅行)を書いてから、その周囲の8マスに分解した項目を書き出していきます。これを私は、「9マス情報キャッチ法」と呼んでいます。

  • 9マス情報キャッチ法 :提供『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)より

    9マス情報キャッチ法 :提供『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)より

上の表2-1は、「海外旅行」をテーマにアンテナを立てた一例です。

旅行に出かける前にこのようなアンテナを立てておくと、旅先で集まる情報量が大きく変化します。おそらく目的地に到着した瞬間から、いえ、もっといえば、出発する前から、1〜8のアンテナにどんどん情報が吸い付いてくるはずです。結局、その吸引力の源は、書き出した本人の意識にほかなりません。脳は、意識した情報を取り込む機能を備えています。

行動力も変化する

「9マス情報キャッチ法」を使うと、行動力にも変化が現れます。あらかじめ情報を書き出しておくことによって、「素材を集めるモード」になるのです。

「色々なお店に入って物価をチェックする」「現地の人たちの働き方を観察する」「タクシーの運転手に、その国のライフスタイルについて質問をする」「インターネットを使って、その国の歴史や観光スポットなどを調べる」「バスや電車の車窓からその国の自然(海、山、川など)を眺める」「現地の人たちの服装や住宅などに目を向ける」「現地の人たちが利用するレストランで食事をする」など、自然と行動量が増え、普通なら見逃してしまうかもしれない情報もどんどん吸い寄せられてきます。

また旅行中に、何度も書き出した9マスを見返すことで、アンテナの感度がさらに高まります。結果、旅行最終日までに膨大な情報を手にすることができるのです。

帰国する前から「あれも書きたいな。これも書きたいな」とウズウズする人も出てくるでしょうし、なかには、旅先で早くもレポートを書き始める人もいるかもしれません。

人は情報が集まると、アウトプットしたくなるものです。「書かなければ」と力まなくても、自然と手が動くでしょう。そんな状況が作れたらいいと思いませんか?

より深い情報を集めたいときの応用法とは?

より詳細なレポートや専門的な文章を書く場合は、さらに細かくアンテナを立てておく必要があります。そこで、とくに重点的に情報収集したいテーマで「9マス情報キャッチ法」のワークを行います。先ほど紹介した旅ブログの記事のなかで、「文化(カルチャー)」の記述を多くしたい場合、どう分解すればいいでしょうか。

  • 9マス情報キャッチ法 :提供『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)より

    9マス情報キャッチ法 :提供『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)より

表2−2は、表2−1で書き出した「海外旅行の9マス」のアンテナ3にある「文化(カルチャー)」を中心に置き、さらに細かくアンテナを立てた一例です。すると、書き出した項目に関連する情報がさらにたくさん集まってきます。

もちろん、表2−1の3にある「文化(カルチャー)」よりも6の「ワークスタイル」のほうが書きたい、ということであれば、「ワークスタイル」を9マスの中心に置いて、書き出せば(アンテナを立てれば)OKです。

このように、「掘り下げて書きたい!」と思ったテーマは、「9マス情報キャッチ法」を活用して、どんどん書き出していきましょう。書き出したそばから、脳内にそれぞれのアンテナが立ち始めます。

ちなみに、本1冊分の大作旅行記を書くという場合は、最初に書き出した1〜8だけでは情報が足りません。1〜8それぞれをテーマに、さらに細かくアンテナを張る必要があります。8×8ですので、合計64個のアンテナが立ちます。

アンテナを立てずに旅行に出かける人と、64個のアンテナを立てて旅行に出かける人とでは、どちらが読み応えのある旅行記を書けるでしょうか? その答えはいうまでもありません。

著者プロフィール: 山口拓朗(やまぐち・たくろう)

伝える力【話す・書く】研究所所長。
出版社で編集者・記者を務めたのちに独立。23年間で3000件以上の取材・執筆歴がある。講演や研修を通じて「論理的なビジネス文章の書き方」「好意と信頼を獲得するメールの書き方」「売れるセールス文章&キャッチコピーの作り方」「集客につなげるブログ発信術」など実践的ノウハウを提供。2016年からは中国の5大都市で「SuperWriter養成講座」も定期開催中。多数のインフルエンサーを輩出している。著書に、『「9マス」で悩まず書ける文章術』(総合法令出版)のほか、15冊以上ある。