• 『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』MCの佐藤二朗

一方で、近年難しさを感じさせるのは、動物番組と視聴者参加番組。

まず動物番組は、終了した『生き物にサンキュー』(TBS系)、『天才!志村どうぶつ園』(日テレ系)と、放送中の『坂上どうぶつ王国』(フジ系)、『I LOVE みんなのどうぶつ園』(日テレ系)をピックアップしたが、明らかに制作の自由度が失われ、難易度が上がっている。

動物を扱ったコンテンツ自体の人気は不変であり、ネット上にも動物動画があふれているが、テレビ番組への風当たりは強い。たとえば、「犬に服を着せただけで『虐待だ』と苦情が届くから必ず脱いでもらっている」という番組もある。そのため保護犬・猫の救済や、大家族とペットの暮らし密着など、苦情を受けにくい穏やかな企画が主流となった。

一方、視聴者参加番組は今秋で『パネルクイズ アタック25』が終了し、『超逆境クイズバトル!! 99人の壁』(フジ系)が特番に変わったことで、レギュラー番組は実質的にゼロの状態。特に後者はコロナ禍の大ピンチ時に開発したリモート収録システムが「2021年日本民間放送連盟賞 技術部門 優秀賞」を受賞するなど、全国の人々が番組参加できる可能性を見せていただけに、もったいなさを感じてしまう。

連続ドラマの関連ツイートがトレンドランキングの上位にランクインしているなど、SNSの動きを見れば、現在の視聴者がコンテンツに「参加感」「一体感」を求めていることは間違いない。しかし、テレビは相変わらずリモコンの「青」「赤」「緑」「黄」を使ったプレゼント企画程度の「参加感」「一体感」しか与えられていない番組が大半を占めている。

芸能人だけを集めた番組のほうが笑いどころを作りやすく安定感があるかもしれないが、現在の視聴者は「テレビマンから一方的に見せられるもの」への拒否反応が強く、敬遠されやすい。いかに参加してもらい、ネットを絡めて一体感を生み出していくか。これが平成から令和に持ち越したバラエティの宿題だろう。

■グローバルなヒット番組の誕生へ

前述したように昨春の視聴率調査リニューアルによって、民放各局のテレビマンたちは、ようやく世帯視聴率の呪縛から逃れることができた。

一時期、飽和状態にあった雑学や健康がテーマのバラエティや、刑事・医療ドラマなどの高齢層向け番組が激減。その一方で『有吉の壁』(日テレ系)、『ザ・ベストワン』(TBS系)、『千鳥のクセがスゴいネタGP』、『新しいカギ』などのお笑い純度の高いバラエティが次々にレギュラー化され、スタッフの若返りも見られるなど、明るいムードが漂いはじめている。

しかし、今秋スタートの新番組が「どこかで見たような番組ばかり」と揶揄され、そのほとんどが視聴率・評判とも低迷しているように、まだまだ変化は十分と言えない。

「今年の新番組で唯一のヒット」と言われるのが、ネタを地道に足で稼ぐ中京テレビ制作の『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』(日テレ系)であることも示唆に富んでいる。前番組の『火曜サプライズ』も同じグルメ番組だったが、それを他では見られないコンテンツに置き換えて放送できているのはスタッフたちの熱量によるものであり、その真理は昭和のころから変わっていないのかもしれない。

  • 『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』 (C)CTV

もう1つ、当連載期間中の変化として挙げておきたいのが、2019~20年に台頭したお笑い第7世代について。今年に入って彼らの番組出演が減り、現在は賞レースで結果を出した上の世代が中心となっているが、「実力・人気ともに落ち着くべきところに落ち着いた」という感がある。もともと第7世代が売り出された理由には、若返り、報酬、ネット発信力などがあったが、結局のところ「まだ彼らは全世代対応を求められるテレビの波及力に見合う段階ではなかった」のだろうか。

たとえば「登録者数1000万人」「総再生回数50億」の人気YouTuberでも、「見たことがない」「知らない」という人のほうが圧倒的に多く、その波及力は限定的なものに過ぎない。YouTuberが“あるマーケットの強者”という印象の一方で、テレビは「今なお、さまざまな属性の人々にコンテンツを届けられる」という恵まれたポジションにいる。決してお金をかければいいというわけではないが、コンテンツの質やスケール次第で、全国の人々を引きつけられる可能性が高い。

さらに、Netflixなどの動画配信サービスで同時配信(または数十分後のディレイ配信)して世界中の人々に見てもらうことで制作費を稼ぎ、番組の質やスケールを高めていくこともできるはずだ。「ドメスティックとグローバルをどう使い分けていくのか」は業界全体の課題だが、この連載で世界的なヒット番組をピックアップする日を楽しみに待ちたい。

■次の“贔屓”は……プロ野球ドラフト会議形式でチームを決定!『ドラフトコント』

『ドラフトコント2021』 (C)フジテレビ

今週後半放送の番組からピックアップする次回の“贔屓”は、27日に放送されるフジ系バラエティ特番『ドラフトコント2021』(21:00~)。

前述した『土曜プレミアム』の新企画で、バイきんぐ・小峠英二、千鳥・大悟、オードリー・春日俊彰、ピース・又吉直樹、かまいたち・山内健司の5人が、「一緒にコントをやりたい」と思う芸人を各4人ドラフト指名し、1カ月後にネタバトルを繰り広げるという。

ドラフト候補芸人は、ぼる塾・あんり、しずる・池田一真、おいでやす小田、オアシズ・大久保佳代子、かが屋・加賀翔、ラランド・サーヤ、ジャングルポケット・斉藤慎二、ニューヨーク・嶋佐和也、シソンヌ・じろう、空気階段・鈴木もぐら、霜降り明星・せいや、バイきんぐ・西村瑞樹、シソンヌ・長谷川忍、丸山礼、空気階段・水川かたまり、パンサー・向井慧、さらば青春の光・森田哲矢、見取り図・盛山晋太郎、平成ノブシコブシ・吉村崇、ネルソンズ・和田まんじゅうの計20人。

実力者やクセ者ぞろいだけに、「誰が誰を選ぶのか」「指名重複による抽選はあるのか」「5人編成のコントはどんなものになるのか」など注目ポイントが目白押し。本人たちの喜びと悔しさ、意地とプライドが錯綜する熱いバトルを期待したい。