テレビ解説者の木村隆志が、“贔屓”のテレビ番組を紹介する「週刊テレ贔屓(びいき)」。節目の200回目となる今回は、これまでピックアップした199回から主なバラエティを振り返る特別編をお送りする。

2018年1月の連載スタート以降、動画配信サービスの台頭、視聴率指標の多様化、コロナ禍など、テレビを取り巻く状況はめまぐるしく変わっている。「この4年間どんなバラエティが放送されてきたのか」「平成から令和に時代が変わる中、どのような変化が見られるのか」「どんな課題があり、どう向き合い、今後はどこへ向かっていくべきなのか」などにも言及していく。

  • NHKと民放キー局

    NHKと民放キー局

■トガっていた番組は令和の今も健在

連載第1回に選んだのは、年始特番の『芸能人格付けチェック! 大予選会2018』(ABCテレビ・テレビ朝日系)。元日トップ級の高視聴率番組となった本選ではなく、あえて予選を選んだのは、『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!』(日本テレビ系)を彷彿させる過激な演出の希少価値が高かったから。

同番組は若手芸人たちが「危ない」「怖い」「熱い」「汚い」などコンプライアンス無視のバトルや罰ゲームに挑む元日午後帯の風物詩だったが、2019年の放送で大幅にマイルド化され、昨年は放送なし。

今年8月、BPOの青少年委員会が「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティ」を審議対象とすることを発表しただけに、復活は絶望的と言わざるを得ない。ただ、この手の線引きはハッキリさせられずあいまいになりがちなだけに、制作サイドとしては今後もギリギリのところを攻め続けて、表現の幅を守っていくしかないだろう。

当連載の初期は、『ねほりんぱほりん』(NHK Eテレ)、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)、『激レアさんを連れてきた。』(テレ朝系)など、当時「トガっていた」番組をピックアップする機会が多かったが、その姿勢は3年以上過ぎた今なお失われていないことが感じられる。

また、第11回でフィーチャーした『NEO決戦バラエティ キングちゃん』(テレビ東京系)は、ブレイク前の千鳥がMCを務めたお笑い純度の高い番組。「佐久間宣行プロデューサーの仕掛けるムチャぶりに芸人たちが火事場のクソ力で応えていく」という構図でお笑いフリークの支持を集めていた。昨春の視聴率調査リニューアルで純・お笑い番組に脚光が当たっている今のほうが、むしろフィットする番組だろう。

その他で気になるのは、『火曜サプライズ』(日テレ系)、『ナカイの窓』(日テレ系)、『ウチのガヤがすみません!』(日テレ系)、『パネルクイズ アタック25』(ABC・テレ朝系)、『嵐にしやがれ』(日テレ系)、『爆報!THE フライデー』(TBS系)、『有吉反省会』(日テレ系)、『ぴったんこカン・カン』(TBS系)などの現在は終了してしまった番組。

終了の理由は、低視聴率、トラブル、出演者の去就、コロナ禍などぞれぞれだが、同時期にピックアップした『マツコ会議』(日テレ系)、『タモリ倶楽部』(テレ朝系)、『世界の果てまでイッテQ!』(日テレ系)など、作り手の努力と工夫で危機を乗り越えた番組もある。

「“3密”を避けなければいけない」などコロナ禍の厳しい制作ガイドラインをくぐり抜けてきた作り手たちが、出口が見えてきた今、平時に戻ったときのどんな仕掛けを考えているのか楽しみだ。

■『土曜プレミアム』こそフジの底力

『土曜プレミアム』で数々の番組に出演する松本人志

番組の“枠”という点で最もピックアップしてきたのは、断トツで『土曜プレミアム』(フジテレビ系)。定番の『IPPONグランプリ』『人志松本のすべらない話』『ENGEIグランドスラム』『ものまね王座決定戦』『有吉の夏休み』などに加えて、『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』『さんま&女芸人お泊り会』『明石家さんまのFNS全国アナウンサー一斉点検』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『こんな休日どうですか 内村バカリ南原出川が本気で考えた!最高の旅SP』『内村カレンの相席どうですか』『有吉ダマせたら10万円』『まっちゃんねる』など、これまでさまざまな特番をピックアップしてきた。

フジテレビはいまだにネット上では批判の的にされがちだが、即レギュラー化した『千鳥のクセがスゴいネタGP』『新しいカギ』も含めて、他局よりバラエティ特番にアグレッシブなのは間違いないところ。中でも、『まっちゃんねる』の「女子メンタル」「イケメンタル」のような「『ここでしか見られない』というオリジナリティあふれるコンテンツをどれだけ生み出していけるか」が、令和の再躍進を左右するのではないか。“対ネットコンテンツ”という観点でも、フジテレビのバラエティにかかる期待は大きいものがある。

バラエティ特番の変化でもう1つ感じられるのが、賞レースの盛り上がり。この連載がスタートした当時は、あの『M-1グランプリ』(ABC・テレ朝系)ですら人気にかげりが出ていたが、この数年間で盛り上がりを取り戻しつつある。

その理由は、生放送の持つ臨場感が再評価され、スマホでSNSを使いながら楽しむ視聴方法が定着したからだろう。ネット上の書き込みも、芸人やネタの内容だけでなく、「MCが噛んだ」「審査員がスベった」「後ろの美女は誰?」などと幅広くなっているだけに、今後も期待できそうだ。

この間、TBSの『お笑いの日』、フジテレビの『FNSラフ&ミュージック』と生放送のお笑い系大型特番も誕生。昨春の視聴率調査リニューアルによって、主に13~49歳の視聴者層獲得が求められるように変わっただけに、相性のいい笑い+生放送の特番は、まだまだ増えそうなムードがある。