YouTube・サブスク動画配信サービスの台頭、視聴率指標の多様化、見逃し配信の定着、同時配信の開始、コロナ禍での制作体制――テレビを取り巻く環境が大きく変化する中、最前線にいる業界の“中の人”が語り合う連載【令和テレビ談義】

第3弾は、数多くのクイズ番組を手がけ、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK)でも話題となったクイズ作家の矢野了平氏と日高大介氏が登場。『今夜はナゾトレ』を手がけるモデレーターのフジテレビ・木月洋介氏を含めた3人で、「クイズ番組」についてとことん語り合うテレビ談義を、5回シリーズでお届けする。

第2回は、この10月改編でレギュラー番組が消滅する「視聴者参加クイズ」がテーマ。老舗の『パネルクイズ アタック25』は、なぜ46年の歴史に幕を下ろすことになったのか。様々な角度から分析しつつ、26日放送の最終回1時間SP「史上最強のチャンピオン決定戦!」(12:55~)に出場する日高氏が、その心境を語ってくれた――。

  • 『パネルクイズ アタック25』司会の谷原章介 (C)ABCテレビ

    『パネルクイズ アタック25』司会の谷原章介 (C)ABCテレビ

■テレビ業界の切実な問題を突きつけられた

木月:この10月改編で、『アタック25』(ABCテレビ)が終了し、『99人の壁』(フジテレビ)が特番になり、レギュラー放送の視聴者参加クイズ番組がなくなるということが言われてますが、率直にどのように捉えていますか?

矢野:『アタック25』に関しては、46年やってこられて、よく言えば美しいマンネリということだったんですけど、絶対あり続けるものだと思っていたのが、そういう時代じゃなくなったんだなというのが、1つのクイズ番組が終わるということよりも、テレビ業界のちょっと切実な問題を突きつけられた感じはありますね。

日高:『アタック25』というのは、自分のクイズ人生を語る上において、常にそばにいた番組だったという印象があるんです。小学生とか中学生のときに、クイズ仲間と遊びでクイズをやるときも、ルールはオセロを真似したものだったりとか、どこかに『アタック25』というものが頭にあったと思うんです。その上、みんなが存在を知っていたというのは、改めてすごい番組だったんだなと思います。ただ、やはりあの番組は早押しクイズというのがメインじゃないですか。早押しクイズというのは、20世紀の頃と現在のシーンとで、時代に合わせて変えていかなければいけないというのが、大変だったんだろうと思うんです。実際、『アタック25』って、番組開始当初と、2000年初頭と、現在の3つを比べるだけでも、問題文が全く異なるんですよ。昔は問題文がもっと短かくて、非常に端的で鋭い問題文だったんですね。それが現在では、問題を聞いて誤解や間違いがないように、情報を足すことによって、長い問題文になっているんです。そういう意味で、常に時代を反映した問題文で出題するのが『アタック25』だったんですけど、だんだん難しい世の中になってきたのかなと思いますね。この番組に僕らは関わっていないので、全部推測ですけど。

――おふたりとも出場者として優勝されていますよね。

日高:98年の2月に僕が優勝して、11月に矢野が優勝したんです。『高校生クイズ』(日本テレビ)とか『炎チャレ(ウッチャンナンチャンの炎のチャレンジャーこれができたら100万円!!)』(テレビ朝日)とかでクイズ作家の活動を始めたのも98年だったから、印象深い年です。

  • 『アタック25』初代司会者の児玉清さん(左)と日高大介氏=98年の出場時撮影(日高氏提供)

■クイズマニア視点からの役目は終えていた

木月:クイズプレイヤーの登竜門みたいな位置付けの番組なんですか?

矢野:どこかそういう部分はありますね。テレビクイズに憧れた人だったら、やっぱり一度は優勝しておきたいという感じですよね。

木月:それがなくなってしまうというのは、今後への影響も大きいでしょうか?

矢野:『アタック25』が悪いというわけでは全くないのですが、正直言うと、いつ終わっても良かったとも言える状況だったと思うんですよ。今、中高生でクイズが好きだという子は、『アタック25』よりも『東大王』(TBS)を見たり、もしくはテレビではなくネット上やイベントとして行われる“競技クイズ”のほうが主軸になっていて、テレビに出ることを意識していない若い子がたくさんいるように思うんです。だから、クイズマニア的な視点でいうと『アタック25』の役目は、実はもうだいぶ前から終わっていたのかもしれないです。

日高:僕とか矢野は、テレビクイズが大好きでしたので、クイズ番組に出たいとなったら『アタック25』に出るくらいしか目標がなかったですからね。そういう意味では、長く続けていただいたことに、とても感謝したいです。ましてや僕は、筆記予選を勝ち抜いて、最終回の挑戦権を得ている状況ですから、なおさらそう思います(笑)。結果はどうなるか分からないですけどね。

矢野:僕らが学生の頃は『アタック25』で優勝したいというのが1つモチベーションとして大きかったので、それに対応した練習もやってたんですけど、今の若い子たちは全然そういうのがないんで、『アタック25』で高校生大会とか大学生大会とかを見てると、パネルの取り方があまり上手くないんですよ(笑)。もっと言うと、クイズで一番答えられてるのにパネルが取られて優勝できないというルールをアンフェアだと思ってる子もいるくらいですから。

日高:パネルの取り方は深いんですよ(笑)。矢野が出るって決まったとき、矢野の家に行ってパネルの取り方を研究するために、100戦、200戦平気でやってましたからね。ちなみに、今現在の僕も、最終回に向けてワンチャンあるので、頭の中でパネル取りのシミュレーションをしていたりしています(笑)

矢野:あと、クイズ番組としては、地上波のゴールデンで放送されてるクイズ番組の進化が半端ないんですよ。写真や映像がバンバン出てくるし、文字のサイズもすごく計算されている。それだけテロップもたくさん入れないといけないし、日曜のお昼30分で限られたスタッフと予算の中で対抗するのは、難しいですよね。