北村匠海が主演を務めるフジテレビ系ドラマ『サバ缶、宇宙へ行く』(毎週月曜21:00~ ※FOD・TVerで見逃し配信)の第7話が、25日に放送された。

本作は、海辺の町で教師になるという“なんとなく”の動機で、とある田舎町の水産高校に赴任してきた新米教師が、同じく“なんとなく”日々をやり過ごしてきた生徒たちと出会い、高校自慢の「サバ缶」を宇宙食にするという夢に向かっていく、実話をもとにした青春学園ドラマ。

今回は、第7話まで見守ってきながら、気付いているようで気付けていなかった、主人公・朝野(北村)の魅力の本質にようやく気付かされた回であった。

  • 北村匠海=『サバ缶、宇宙へ行く』第7話より (C)フジテレビ

    北村匠海=『サバ缶、宇宙へ行く』第7話より (C)フジテレビ

確信犯的だった「主人公をヒーローとして描かない」

このドラマには大きな軸がある。それは当然、「サバ缶を宇宙へ!」という大きな夢に向かって、純粋に、ひたむきに突き進んでいく姿を描くことだ。だからこそ、生徒たちの奮闘や何げない悩み、きらめく青春を眺めているだけで、ただただ気持ちがいい。そんなドラマだったのである。

だからだろう。今振り返ってみると、今作の主人公である朝野とは、一体どんなキャラクターだったのか。主人公として持つべき熱量や存在感、周囲を巻き込んでいく魅力はどこにあったのか――気付いているようで、実はなかなか気付けていなかったように思う。

けれど、その“主人公をあえてヒーローとして描かない”部分は、かなり確信犯的だったとも言える。例えば、第5話における、この物語の大きな分岐点でもある若狭水産高校(若水)の廃校問題の描写が象徴的だった。朝野は珍しく“熱弁”をふるった。通常のドラマであれば、そこで主人公の熱意によって廃校問題が覆る…そんな展開になったはずだ。だが今作は、その“主人公の熱弁によるドラマチック”を発動させなかったのである。

だからこそ逆に、朝野というキャラクターの独自性が際立った。静かにそこにいて、どっしり構えているようで、どこか頼りない。つかみどころのない、不思議な存在感。これまでのテレビドラマにおける“熱血教師像”とはまったく異なる、新しく新鮮な教師像であることを、あの時点ですでに提示していたのだ。

しかし、そうは言っても、朝野という存在はあまりにも自我を出さず、あまりにも自然体すぎた。そのせいもあって、こちらはまだ彼の魅力の本質をつかみ切れていなかった。今回の第7話を見るまでは。

  • (C)フジテレビ

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静かな佇まいの奥にある、生徒を信じ続ける熱

第7話は、今作のもう一つの大きな指針でもあった、「大きな夢をバカにしない」「ひたむきに、まっすぐに」という柱を、ついに崩してきた回でもあった。

若水は進学校と統合され、普通科と海洋科学科に分かれる。そして普通科の生徒たちは海洋科学科を見下し、これまで疑問視されることのなかった“実習”の意味にも、あからさまに疑問を投げかける。

また、これまで朝野が静かに見守ることで成立してきた実習にも変化が生まれる。第1期の生徒だった奈未(出口夏希)が教師として赴任してきたことで、新任教師としての未熟さ、そして「サバ缶を宇宙へ!」という夢を最初に描いた1期生だからこその熱量が前面に出るようになった。その結果、静かに見守る朝野との衝突まで描かれることになったのである。

そして、これまで描かれることのなかった…いや、むしろ“あえて描かない”ことで成立していた、夢への疑問や衝突を前にして、朝野はどう振る舞ったのか?

やはり彼は、「静かに見守る」というスタンスを崩さなかった。

「サバ缶を宇宙へ!」という夢は、まぶしすぎるほど大きな夢であり、ある種、誰にも否定できない“正義”のようだ。だからこそ、これまで描かれてきた「夢を否定しないこと」「むやみに衝突を起こさないこと」が、自然なものにも思えていた。

しかし、時代が変わり、夢への向き合い方が異なる者同士が交われば、当然そこには摩擦が生まれる。今作は、その変化を、この第7話まで来てようやく描いたのである。そして、その“遅さ”こそが、実にこのドラマらしい展開であった。

さらに今回、朝野がかたくななに「見守る」というスタンスを取り続けていた理由も浮かび上がった。第1話ラストで描かれた、“自分が良かれと思って先導したことが、生徒たちの本当の思いを潰してしまった”という後悔。だからこそ彼は、導くのではなく、見守ることを選び続けていたのだ。あの時の感情が、第7話にしてようやく一本の線としてつながったように思えた。

朝野というキャラクターは、北村匠海という役者の空気感とも相まって、自然体で、表立った熱量をあまり感じさせない。だが、その静かな佇まいの奥には、生徒を信じ続ける熱が確かに存在していた。

それを今回、第7話は決して大げさにではなく、熱弁をふるうわけでもなく、優しく、温かく、けれど静かに熱く描いてみせたのである。

こんなにも目立った存在ではないにもかかわらず、主人公としての存在感を失わず、さらに教師としての導きまで成立させている。その複雑なキャラクターを、北村はあまりにも自然に演じている。今回の第7話は、そんな北村匠海という役者のすごみまで、改めて感じさせる回だった。

物語はいよいよ、「サバ缶」が宇宙日本食の候補へと“選ばれた”。“選ばれるため”を描いてきたこれまでとは違い、ここから先、どのような物語が紡がれていくのか。ますます楽しみだ。

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