テレビ朝日ホールディングスは27日、6月26日に開催予定の株主総会に向け、56人の株主から共同提案として提出された5議案について、取締役会として反対することを決議した。提案は、放送の不偏不党やファクトチェック体制、女性取締役比率、番組審議会委員の任期、広告と番組の混同防止など。

  • テレビ朝日ホールディングス本社=東京・六本木

    テレビ朝日ホールディングス本社=東京・六本木

「放送の信頼性向上に向けた真摯なご提案」

発表によると、株主提案を行ったのは56人の共同提案。議案は、定款第2条「目的」の改正、インターネット事業に関する目的規定の改正、常勤役員会の構成要件に関する定款変更、番組審議会委員・委員長の任期に関する定款追加、広告と番組の混同防止に関する定款追加の5件で、テレビ朝日HDの取締役会はいずれにも反対する方針を示した。

1つ目は、定款の事業目的に「放送の不偏不党、真実及び自律の保障」を再確認し、公正なジャーナリズム活動を行うことを新設するよう求めた。提案株主側は、放送法が戦前のメディアの反省を踏まえ、表現の自由を基礎に「健全な民主主義の発達に資する」ことを目的に制定されたと説明。放送事業を定款に掲げる会社として、歴史を踏まえたメディアとしての価値向上を図るべきだとした。

これに対しテレ朝HDは、現行定款にも「放送法による基幹放送事業および一般放送事業」と記載されており、同社の番組が放送法の目的・趣旨に沿って放送されていることは明らかだと説明。提案の趣旨については「放送の信頼性向上に向けた真摯なご提案」としつつ、現行定款と現在の対応で十分果たされているとして反対した。

ファクトチェック体制の「すでに行っている」

また、インターネット事業に関する定款の目的規定に、「誤ったコンテンツの是正」「SNS情報の適正化」などを加えることが提案された。提案株主側は、SNSによって玉石混交の情報が大量に流通する中、報道機関としてファクトチェック体制を含む情報の是正・適正化を事業目的に盛り込むべきだと主張している。

これに対しては、テレビ朝日報道局が虚偽情報や真偽不明情報のファクトチェックを積極的に検証し、インターネットニュースだけでなく地上波・衛星波のニュース番組でも報じていると説明。そのうえで、ファクトチェックは報道活動の一環としてすでに行っており、定款に明示する必要はないとした。

女性常勤取締役「3分の1」案には「固定的な規定はリスク」

取締役のうち常勤取締役の3分の1を女性とする規定を定款に設けることも求められた。提案株主側は、日常的な意思決定にジェンダー平等の視点を入れる必要があるとし、民間放送業界で女性従業員や出演者へのセクハラ・パワハラが問題となってきたことも踏まえ、土壌の改善を図るべきだとしている。

これに対しては、性別だけでなく職歴、年齢などの多様性や、経営に不可欠な知識・経験・能力のバランスが重要だと説明。新経営計画「START UP テレ朝!! 経営計画 2026-2029」では、2030年度の女性管理職比率30%を目標に女性活躍を推進しているとした。また、同社提案の取締役候補者全員が選任された場合、女性取締役比率は21%になると説明したうえで、定款に特定の属性や人数・比率を固定的に規定することは、人材配置を妨げるだけでなく、定款違反となる法的リスクもあるとして反対した。

番組審議会委員の任期制限案は“柔軟な選任困難に”

放送番組審議会の委員の任期を最長10年、委員長の任期を最長8年とする定款規定の追加提案も。提案株主側は、番組審議会の活性化を図るためとして、長期在任の弊害を指摘している。

これに対しては、放送法上、番組審議会委員の任期に定めはなく、テレビ朝日は規程で「委員の任期は1年、ただし重任を妨げない」としていると説明。テレビ朝日の放送番組数はおおむね150に及び、審議には一定期間の在任が必要だとした。また、委員長には広い見識や実行力、経験が必要で、放送に関わる問題が発生した際には委員長の提案で急きょ議題を差し替えて審議を行うこともあるとし、任期を一律に制限すれば、必要な専門性や経験を持つ人材を柔軟に選任することが難しくなる可能性があるとした。

広告と番組の混同防止「体制はすでに整備」

そして、視聴者が広告と番組を判別しづらい番組が生じた場合に、関係者からの通報者保護や社内での是正措置・再発防止策を講じることを定款に追加することを要求。提案理由では、『大下容子ワイド!スクランブル』『羽鳥慎一モーニングショー』で出版物を取り上げた番組に関する昨年の株主提案にも触れている。

これに対し同社は、公益通報者保護法を遵守し、「コンプライアンス・ホットライン運用規程」を制定しているほか、報道局内に「放送倫理ホットライン」を設置していると説明。通報者を保護し、放送上問題が生じた、または生じる恐れがある事態に対処・是正する体制を整えているとした。

また、情報番組で商品を取り上げることについては、視聴者への有益な情報提供として行っているものだとし、放送に至る過程でコンテンツ編成局、報道局など関係部署が「広告と番組の混同の疑い」が生じないよう厳しくチェックしていると説明。必要な措置や再発防止策を検討・実施する体制はすでに整備されているとして、提案に反対した。