暑い夏も過ぎ去り、いよいよ競馬場も秋めいてきた。競馬場の魅力を探す本連載第3回は、ついにJRA(日本中央競馬会)の中山競馬場を来訪。競馬ファンの聖地でもあるこの場所を、名物グルメをお供に歩いてみた。

  • 中山競馬場のB級グルメ

    長い歴史を持つ中山競馬場にはファンに愛されるB級グルメも盛りだくさんだ

G1当日の中山競馬場は大盛況!

千葉県船橋市にある中山競馬場。年末の風物詩となった有馬記念が開催されることもあり、競馬ファンでなくともその名を耳にしたことがあるだろう。1907年に開業した松戸競馬場をルーツに持ち、開業90周年を迎えた2018年には大規模リニューアルが敢行された歴史ある競馬場だ。ここでは一体、どんな名物グルメが食べられるのだろうか。

  • 中山競馬場正門前

    開場を待つ競馬ファンで行列ができる中山競馬場正門前。彼らの胃袋を満たす名物グルメとは

1日数千本を販売!? 脅威の売り上げを誇るフライドチキン

最初に紹介するのは、地下1階ファーストフードプラザにある「鳥千」。同店の1番人気は、シンプルに塩とコショウで味付けした「フライドチキン」(1本350円)だ。骨付きと骨なしの2種類から選べる同商品、G1開催日にはなんと、数千本が売れるというからただ事ではない。

さっそく注文して食してみると、鳥の旨みがしっかりと感じられる一方で、これまで濃い味付けの料理が多かった競馬場グルメとは異なり、意外にも薄味だった。少し気になったので、その味付けについてスタッフの方に詳しく話を聞いてみた。

  • 中山競馬場の「鳥千」

    地下1階ファーストフードプラザにある「鳥千」。1966年の秋から営業を続ける中山競馬場でも老舗のひとつだ

――フライドチキンが飛ぶように売れていますが、おいしさの秘密は?

「秘密というほどではありませんが、作り置きは一切せず、パン粉をつけるところから全て、当日に仕込んでいます。チキンは状況を見ながら、売り切れないように揚げているので、お客様には常にできたてを味わっていただけていると思います」

――ずいぶん薄味な印象を受けましたが?

「鳥の味を殺さないよう、薄めに味付けしているのと、揚げたては特に味が付かないので、そう感じるのかもしれません。なので、みなさんにはお好みで塩とカラシをかけていってもらっています」

――揚げたては味が付かないということですが、冷めるとまた味が違ってくるんですか?

「味が出てくるので、また別物になりますね。お土産で持って帰るお客様も多いですが、その場合、ジューシーさがなくならない程度にオーブンで少し温めていただくと、おいしいと思います」

――オススメの食べ方はありますか?

「骨付きが元祖なんですが、実は契約業者にお願いして、特別に作ってもらっているんです。骨まわりもおいしいので、まずは骨付きを召し上がっていただいてから、骨なしとの違いを楽しんでいただけたら嬉しいですね」

――ところで、競馬場を訪れる客層の変化を感じますか?

「だいぶ、ファン層は変わってきましたね。1990年代の競馬ブームが起こった時も変化を感じましたが、最近では“UMAJO”(女性の競馬ファン)も増えていますし、特にG1の開催日は若い人が本当に多いです。でも、開催日だけですよ(笑)。場外の日は、昔ながらの年配の方が多いです」

  • 中山競馬場「鳥千」のフライドチキン

    「骨付きチキン」(写真左)と「骨なしチキン」(写真右)がセットになった「食べ比べセット」(680円)は、それぞれ単品で買うよりも20円お得になる。パドックやレースを見ながら食べ比べも楽しんでみては?

お酒との相性抜群のメニューがそろう名店

続いて向かったのは、スタンド1階にある「スティックハウス パドックV」だ。

  • 中山競馬場の「スティックハウス パドックV」

    「がぶりチキン」(330円)や「フランクフルト」(250円)といった串モノのほか、「牛スジ煮込み」(580円)や「自家製デミビーフハヤシライス」(650円)なども提供している「スティックハウス パドックV」

スタンド開業と同時にオープンした同店では、近年、「がぶりチキン」なるメニューが人気だという。20年ほど前に発売し、衣などに改良を加えてきた「がぶりチキン」。現在は、片栗粉のみを使用し、パリッとした食感に仕上げている。醤油、コショウ、ガーリックを用いた濃いめの味付けは、いかにもお酒に合いそう。「鳥千」とのチキン対決に心躍らせながら人混みをかき分けてようやくお店に到着してみると……。

  • 中山競馬場の「スティックハウス パドックV」

    お目当ての「がぶりチキン」がない!?

なんと、「がぶりチキン」はすでに完売していた。時刻は第8レースを終えたばかりの14時すぎ。人気とは聞いていたが、こんなに早く完売するとは……。思わぬ状況に動揺を隠せないまま、1本ぐらい残っていないかと淡い期待を込めて店主に声をかけた。

――すいません、「がぶりチキン」ってもう終わっちゃいました?

「今日はもう売り切れちゃいました。最近は客層や人の流れが変わって、早くなくなっちゃうことも多くて」

――そうなんですか。じゃあ、「がぶりチキン」以外でオススメのものって何ですか?

「それなら、『串勝』(260円)なんてどうでしょう? ホエー豚が有名になる前から提供している当店のロングセラーですよ」

  • 中山競馬場「スティックハウス パドックV」の串勝

    「串勝」と「シークアーサーサワー」

せっかくなので、店主にオススメされた「串勝」と中山競馬場では唯一という「シークアーサーサワー」(480円)を購入し、グランプリガーデン横のテーブル席に移動した。

20cmほどの小ぶりな「串勝」だが、栄養たっぷりの乳清(ホエー)で育ったホエー豚ならではの柔らかい肉質と玉ねぎの甘みが感じられ、長年のあいだベストセラーを記録する看板メニューというのもうなずける。また、ちょっとアルコールを強めに感じるが、さっぱりとした「シークアーサーサワー」とも好相性だ。これはこれで満足できたが、やはり「がぶりチキン」が食べられなかったことは大変残念。いずれ、リベンジしたいと思う。

中山競馬場食べ歩き企画の後編では、名物スイーツを味わいながら、本連載初のG1レースを生観戦する。

著者情報:安藤康之(アンドウ・ヤスユキ)

フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。