家庭、友人関係、仕事、趣味など…生活における読者の「お悩み」に寄り添う、さらには解決してくれるかもしれないドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー、リアリティショーなど、配信サービスの映像コンテンツを、コラムニストの長谷川朋子が“処方箋”としておすすめする「長谷川朋子のエンタメ処方箋」。

第2回は、日常生活のお悩みに『ブリジャートン家』(Netflix)を紹介します。

  • Netflixシリーズ『ブリジャートン家』独占配信中

    Netflixシリーズ『ブリジャートン家』独占配信中

「ここ数ヶ月で、自宅の家電や日用品が立て続けに5品目も壊れました。炊飯器、トースター、掃除機、ドライヤー、そして昨日はまさかのテレビまで…。何かに祟られているようで怖いです。」(東京都在住・62歳女性)

「こんなに続くなんて、何かの呪い?」と感じてしまうほど、家の中の物が立て続けに壊れると不安になりますよね。とくに季節の変わり目や、気分が落ち着かない時期に起こると、何か見えない力に試されているような気すらしてしまいます。

けれど、そんな“制御不能の連鎖”を、むしろエンタメとして楽しめるドラマがあります。Netflixの人気シリーズ『ブリジャートン家』です。

スキャンダルが止まらない…“壊れる快感”の連鎖

ドラマ『ブリジャートン家』は、19世紀初頭のロンドン社交界を舞台にしたラブロマンスです。婚活中の駆け引きやスキャンダルを通して、人間の欲や不安を鮮やかに描き出します。

手がけるのは、『グレイズ・アナトミー 恋の解剖学』などで知られるションダ・ライムズ。恋愛ドラマの名手らしくテンポは抜群で、登場人物の華やかさも、心のもろさも等身大に映し出されています。

物語の中心となるのは、由緒ある8人きょうだいの大家族・ブリジャートン家。シーズン1では、その長女ダフネ(フィービー・ディネヴァー)に焦点が当たり、結婚こそが人生のすべてとされる社交界で、自分らしい幸せを探し続けます。

そんなダフネと、じれったい恋の駆け引きを繰り広げるのが、ヘイスティングス公爵サイモン(レゲ=ジャン・ペイジ)。ふたりは恋人のフリをするという密約から関係を始めますが、恋の行方はいつだって想定外です。「もう見ていられない!」と思うほどのスキャンダルとウワサが次々に起こり、ひとつの秘密が暴かれるたびに、別の人間関係が音を立てて崩れていきます。

この“壊れる連鎖”こそ、『ブリジャートン家』の最大の魅力。物が壊れるときはストレスを感じますが、人間関係の壊れっぷりをここまで優雅に見せてくれるドラマはなかなかありません。