本来、4月とは新年度であり、新学期であり、「(気持ちも新たに)さあやるぞ!」となる時期です。今年は、新型コロナウィルスの感染拡大で随分と様子が違いますが、それであっても、トレーディングにおいては注意すべき時期です。

機関投資家が不在の時期は要注意

なにがいつもの月と大きく違うかといえば、生保など本邦機関投資家が、新年度入りする時期だからです。ご存知のように、最近の機関投資家は、オープン外債(為替ヘッジを個別には行わない外債)が主となり、その代わり、下がったらドルを買い、上がったらドルを売るという、いわば包括的な為替ヘッジをしています。

そのため、結構な額のドル/円の売り買いが発生し、為替相場が下がれば買い支え、上がれば頭を抑えるという、相場の値幅を狭くする働きをしてきました。しかし、そうした機関投資家も、4月は新年度の方針を策定するのに費やし、実際に運用を開始するのは、5月になってからです。

したがって、4月は相場の上下動を抑え込む機関投資家が不在となります。そうすると、マーケットに残されたのは、投機筋ばかりとなります。

投機筋には、宿命があります。売ったら、利食いか損切りのために買い戻さなければなりませんし、買ったら、利食いか損切のために売り戻さなければなりません。つまり、輸出企業や輸入企業のように、売り放し、買い放しができず、必ず反対売買をいずれはしなければならないという弱みがあります。

4月になって、機関投資家が不在となるなか、結構はじめのうちは、売れば結構下がるし、買えば結構上がりやすくなるものと思われます。しかし、それに気をよくしていると、売った分、投機のショートは増え、また買った分、投機のロングが増えることになり、先にも申し上げましたように、投機筋の宿命として、結局は、反対売買によって、ポジションをスクエア(ポジションなし)にしなければなりません。

こうしたことから、結構反対売買による手仕舞いの動きの方が急激となり、損失を被ることが多くなるものと思われます。そして、マーケットはすさみ、投機筋同士の足の引っ張り合いとなって、4月相場は儲からないということになりやすくなると見ています。ですので、4月は投機筋にとっては、非常に警戒を要する時期だと言えます。

同じように、投資家不在で投機中心の相場としては、1月も上げられます。1月は欧米勢にとっての新年度で、欧米の投資家は、新年度の運用方針の策定のため動かないところは、4月の本邦機関投資家の状況と変わらないと言えます。その結果、1月もまた、投機筋同士の足の引っ張り合いになりますので注意が必要です。

さて、4月の本邦機関投資家の運用方針についても、今後の相場展開を読むうえで意味があります。

これまで本邦機関投資家は、円債の利回りが出なくなり、やむなく主に米国債という高利回りの外債運用に移行してきました。しかし、2年前なら3.20%の利回りがあった米国債は、昨年夏には1.45%、そしてさらに今年になって、コロナショックによって、直近0.68%をつけるまでに急速な勢いで低下してきており、再び運用難になっています。

  • 米国債10年物利回り 日足

そうなると、運用先を国内不動産など他にシフトし、米国債への投資を減らす可能性がでてきています。その結果、ドル/円の変動の抑えにかかっていた、機関投資家の米国債運用の後退が、ひいてはドル/円のボラティリティー(価格変動率)を上げることになる可能性があると見ています。

ドル/円は、昨年は、変動相場制移行後で最低の変動幅でしたが、こうした状況変化により、今年は変動幅が大きくなるものと思われます。したがって、ドル/円のトレーディングにあたっては、十分な注意が必要です。