私のトレーディングポリシーは、「利食いが大好き」です。これでは、なにを申し上げたいのかお分かりにならないかと思いますので、少々解説をさせていただきます。

「利食いが大好き」の効能

もともと、私のトレーディングスタイルは、相場の方向性を見出すと、ターゲットはそこと決め、ポジションを持ち続けるやり方でした。

確かに、これは当たれば、大きな利益を生みますが、目標点まで行く過程で上げたり下げたりをしながら辿りつく相場の中で、ポジションを持ち続けることは、心身共に相当消耗します。

ある時、私のそんなやり方を、よく儲けている外銀の友人に話したところ、「そんなことしちゃ駄目だよ。そんなことをしたら、疲れるばかりだ。俺なんか、利食いが大好きだから、利食えたらどんどん利食ってしまう。それでも、まだ行くと思えば、またポジションを持ち直せばいいんだよ。」という、実に軽やかな考え方で、正直、目からウロコでした。

実際やり方を変えてみると、確かに疲れないし、利益も蓄積されることがわかり、それ以降、この「利食いが大好き」方式のトレーディングに切り替えました。

さて、ここからが今回お話したい点ですが、このトレーディングスタイルには、もっと重要な意味合いがあることに気づきました。それは、このスタイルはリスクを出来るだけ抑える効果があるということです。

つまり、ポジションを保有する時間が長ければ長いほど、リスクに晒される期間が長くなり、実際リスクと出会う可能性が高くなります。

言い換えれば、ポジションを持つ期間が短いほど、リスクが軽減されるという時間とリスクの相関関係が明らかになり、また、ポジション保有期間と疲労度もまた、相関関係にあることもわかりました。

トレーディングは、心技体です。技を持つことはもちろん大事ですが、心身が疲れていて、集中力がないと良い結果は生まれません。

まず心身の健全を保つこと、そしてテクニカル手法やファンダメンタルズ分析などの技を磨くことが、トレーディングには必須だと思います。

今回のコロナショックに遭遇して

  • ドル/円 日足(イメージ)

ポンド/円のボラティリティー(価格変動率、相場変動の大きさ)が高いのはよく分かりますが、コロナショックによって、ドル/円がユーロ/円よりもボラティリティーが高くなることもあります。

もうひとつの尺度は、リクィディティー(流動性、交換のしやすさ)です。これは、圧倒的にドル/円が高いと言えます。

相場がボラタイル(激しい)になっているだけに、このボラティリティーとリクィディティーのバランスがリスクをとる上で大事になっています。そういう意味では、今は、ドル/円も結構注目だと思います。

相場がボラタイルになった時の対応として、三つのことを考えなければなりません。

1.ストップロスの深さ
2.ポジション保有の期間
3. ボラティリティー

3については、既に申し上げましたように、リクィディティーとの兼ね合いで見ていく必要があります。

1については、基本的に、ボラティリティーが高ければ深くはしたいところですが、ストップロスを深くしていて、いったんつけば、やはり足腰が立たなくなります。

そこで重要なのは、2のポジションの保有期間を短くするということです。

変動が激しくなっている分、相場が急転することが増えるため、今までなら長く持てたものでも、長い時間の間に上げ下げが激しくなって、折角儲かっていたものを吐き出してしまう可能性があります。

ということは、もっと短く決着をつけるということです。

しかも、現状、ボラティリティーが高いですから、短時間でも、結構な値幅が稼げます。つまり、リスクの大きさとポジションの保有期間は反比例するということです。

今、リーマンショック級あるいはそれ以上の未曽有の大混乱となっています。それだけに、このリスクと時間の関係を、よく理解しなくてはなりません。

相場とは、「勝ち逃げ」だと思っています。振り逃げでも、バントでも、塁に出て、得点を取った者が勝ちです。

ポジションを長く持ったからエライというわけではありません。時と場合に則したトレードをすることが大事です。

  • 水上紀行(みずかみ のりゆき)

    バーニャ マーケット フォーカスト代表。1978年三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。1983年よりロンドン、東京、ニューヨークで為替ディーラーとして活躍。 東京外国為替市場で「三和の水上」の名を轟かす。1995年より在日外銀において為替ディーラー及び外国為替部長として要職を経て、現在、外国為替ストラテジストとして広く活躍中。長年の経験と知識に基づく精度の高い相場予測には定評がある。なお、長年FXに携わって得た経験と知識をもとにした初の著書『ガッツリ稼いで図太く生き残る! FX』が2016年1月21日に発売された。詳しくはこちら