FPが家計のさまざまなお悩みに答えていく本連載。今回は、AFPの池田ひろみさんが「年収540万円だけど息子の私立中学進学を応援したい」というみどりさん(44歳)にアドバイスします。

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◆相談者さんのプロフィール

相談者

相談者 みどりさん(仮名・専業主婦/44歳)

家族構成

夫(会社員/44歳/手取り年収約424万円)
子ども1人(10歳)

◆お悩み

小学5年生の息子が「中学校受験をしたい」と言い出しました。今までそのような話をしたことがなかったので驚いています。息子を応援したいんですが、先輩ママには受験対策の塾代や入学後の学費などで年収1000万円以上必要と聞きました。全く想像がつきません。うちの収入で中学受験にチャレンジし、私立中学校に息子を通わせるのは難しいでしょうか?

◆相談者さんの家計収支

月収は31万2000円(給与、児童手当)、ボーナスは年間62万円、支出は住宅ローン8万6000円、住宅維持費2万2000円、食費4万5000円、日用品費5000円、水道光熱費1万8000円、車関連費2万5000円、通信費1万2000円、教育費3万1000円、保険料6000円、小遣い(夫)3万円、貯金3万2000円、現在の貯蓄が840万円となっています。

(1)教育費

習い事に合計約2万1000円、学校の積立に約1万円。今後、塾通いをすると習い事との両立は時間的に難しい。習い事は息子と相談し辞めるもの残すものを決めようと思っている。

(2)保険内訳

夫の共済保険: 4000円(死亡時800万円、入院日額9000円)
みどりさんの医療保険: 2000円(入院日額1万円)

(3)ボーナスの使い道

・自動車税 約4万円
・固定資産税 約14万円
・衣服代 約6万円
・旅行と帰省費用 約8万円
・貯金 約30万円

(4)貯蓄

貯蓄のうち定期預金の400万円は大学進学費用に充てる予定。

◆FPからのアドバイス

普段から家計簿をつけ上手に家計管理されていて、無駄な支出項目も見受けられません。頑張っていらっしゃいますね。子どもの進学を応援したいけど、現状を把握されているからこそ私立中学への進学は経済的負担が大きく無理なのでは? と思われているんですね。 ご不安になるお気持ちは良く分かります。家計をこれ以上絞るのは難しそうですが、これまでの貯蓄力を活かし、可能性を検証してみましょう。

アドバイス1:大学進学用の貯蓄を中学校の教育費に充てる

塾の費用と私立中学3年間の教育費がどのくらいかかるか見ていきましょう。

まず初めに塾の費用です。私立中学へ進学希望される場合、受験対策のために塾に通われるのが一般的です。息子さんも偏差値上位校を目指したいとのこと。例えば、大手中学進学塾の場合、小学校5年生からの約2年間でかかる費用は基本講座で約120万円です。定期的な公開テストやオプション講座を受講すると、さらに月数千円~数万円の費用がプラスされます。

現在の教育費から辞める習い事の月謝と月々の貯金3万2000円を合わせると毎月の塾代は賄えそうですね。

次に入学後の教育費についてです。文部科学省の調査結果によると年間約140万円×3年間=420万円が私立中学3年間で必要な教育費の目安(内訳:学校教育費約107万円、学校給食費約4000円、学校外活動費約33万円)です。これは志望校によって異なり、息子さんの志望校に関しては学校教育費が約60万円です。年間約94万円を予定していきましょう。月平均8万円 必要ですので中学入学までの塾代を充てても足りません。ご提案としては2通り。

1つ目は大学進学費用に貯めた400万円を一部切り崩し中学校での教育費に充て、不足した分の大学費用は奨学金制度等を利用することで補う方法。

2つ目はみどりさんが働きに出ることで世帯収入を増やす方法。仮に、月5万~8万円程度収入が増えると、大学進学用の貯蓄を切り崩すことなく中学校での教育費を支払うことが可能です。

アドバイス2:高校3年間の教育費について

進学希望先は中高一貫校ですね。高校受験はせずに高校に進学可能とのことですので、中学入学後はできるだけ学校のサポート体制の中で学習していきましょう。高校進学後の教育費は国の「高等学校等就学支援金制度」を利用することで負担が軽減されます。

大阪府にお住まいとのこと、授業料が支援金の上限をこえる場合には、府独自の「私立高等学校等授業料支援補助金制度」があります。入学金、制服代、教科書代、施設費、修学旅行積立金は備える必要がありますが、授業料が国の支援金と合わせて年間最大60万円補助されるのはとても大きいです。

アドバイス3:保険でご主人の万一に備えましょう

保険は共済のみに加入ですね。お子さんの進学後、ご主人様に万一のことがあった場合、教育費の負担が大きいため保障額が不足してしまいます。中学校入学後~大学卒業までの10年間は保障を少し手厚くしておくと安心です。掛け捨ての10年定期保険で検討してみてはいかがでしょうか。

相談者の感想

進学塾の費用と私立中学入学後の教育費をどのように捻出したら良いか、具体的な数字でシミュレーションでき可能性が見えました。今日の内容をもとに、子どもや夫と再度相談して子どもの納得のいく形で応援したいと思います。また、保険については気づいていない点だったのアドバイスいただけて良かったです。ありがとうございました。