FPが家計のさまざまなお悩みに答えていく本連載。今回は女性のお金の専門家・ファイナンシャルプランナーの山根純子さんが、夫の貯蓄額がわからず老後の生活に不安を抱えるパート主婦、やよいさんの悩みに対しアドバイスします。

  • ※画像はイメージ

◆相談者さんのプロフィール

相談者

相談者 やよいさん(仮名)
女性/パート/51歳

家族構成

夫(会社員/48歳)、子ども2人(私大文系3年/22歳・予備校生/19歳)

◆お悩み

夫が貯蓄額を教えてくれません。そもそも、給与明細も見せてもらったことがありません。

生活費をもらって、家計の一部をやりくりしています。子どもの成長にあわせて生活費も増額してくれてきたので、現在は問題がありませんが、先日「60歳になると給料が下がるから、渡せる生活費も少なくなる」と言われました。

安定した会社に勤めていて、年収も低くないと思いますが、口癖のように「お金がない」と言っています。昨年の車購入時に「定期預金を崩したくない」と言われ、私の貯金から夫に150万円を貸してもいます。

老後が近くなり、夫が貯金をしているのか急に不安になりました。今からでも、私にできることを教えて欲しいと思います。

◆やよいさんの家計収支

収入

支出

現在の貯蓄額

月収は手取りで8.3万円、夫からの生活費20万円。

月の支出は、食費が10万円、日用品が2.5万円、水道光熱費が2.5万円、通信費が1.5万円、医療費が0.5万円、子ども費が8万円、妻小遣いが1.5万円、雑費・貯金が1.8万円となっています。

やよいさんの貯蓄状況は、定期預金が320万円、普通預金が30万円です。

夫の収入について

給与明細を見たことはないが、十分な収入はありそう。

2年毎に転勤の可能性あり。5年前に家を購入してからは、単身赴任してもらうことになっている。現在は自宅通勤。60歳からの給与は70%に減るとのこと。定年65歳。

妻の収入について

扶養内で働いている。定年65歳。

家計について

妻が支払う支出以外は夫が管理し、教育費、住宅費、保険料、自動車関係費・家電の買い替えなどの大きな支払いをしている。夫にお金がかかる趣味等はないが、ほぼ毎日のように飲みに行っている(コロナ時は自粛)。

老後資金について

妻の年金額は80万円の見込み。夫の年金額、退職金額は不明。

◆FPからのアドバイス

安定した会社にお勤めのご主人で収入が十分にあったとしても、貯金がいくらあるかわからないというのは不安に感じますよね。夫婦のどちらが家計管理をしていたとしても、貯蓄額の共有ができていればよいのですが、相手がそれを拒否している場合は、無理に聞き出そうとして関係が悪くなるのも考えものです。

だからといって、やよいさんの不安をそのままにしておく必要はありません。やよいさんお一人でもできることから始めましょう。

総務省の家計調査によると、高齢者夫婦の生活費の平均は月約26万円 。そのうち、やよいさんが今後も支払っていく可能性のある食費・光熱費・日用品費・医療費・通信費とやよいさんの小遣い、一人分の雑費の合計は月約14万円です。

老後期間を30年とすると5,040万円となり、やよいさんの年金や貯金等を差し引いた2,290万円が不足額となります。この不足分をどうするか考えてみましょう。

アドバイス1: 貯蓄計画をたてる

まずは貯金計画をたてましょう。減収後の夫から受け取る生活費は14万円と想定します。

・家計見直しにより夫60歳まで月2万円積立。計264万円
・子どもの卒業後から夫60歳までに子ども費分全額を貯蓄、計816万円
・夫60歳から妻定年までの2年間、月4万円積立。計96万円

合計貯金額は1,176万円となり、貯金後の不足分は1,114万円となります。老後を30年と考えると月額にして約3万円。この不足分は、ご主人から老後も生活費を受け取ることで解決すると考えることもできます。

アドバイス2: 働き方を考えてみましょう

貯金計画もご主人から受け取る生活費の金額もあくまでも予定なので、計画通りにいかないこともあります。さらに、老後の計画をたてる場合、必要最低限の生活費の他に「旅行をする」「友人と交流をする」といった余裕資金も用意したいものですね。今後はお子様から手が離れ転居もないのですから、扶養を外れて働くことも考えてみてください。手取りが月数万円増えるだけでも、家計にも気持ちにも随分と余裕ができます。

アドバイス3: 老後について話題を振ってみる

ご主人は貯金額の話になると不機嫌になるということですが、やよいさんの不安を取り除くには、貯金額のすべてを知る必要はありません。

例えば、さりげなく「老後はどこに住みたいか」「どう過ごしたいか」といった話題でお互いの希望を話してみてはいかがでしょうか。ご主人がどのように考えているかを知るだけでも、気持ちが違ってくると思います。

また、ご主人の貯金額がわからないままであれば、今後はご主人にお金を貸さないほうがいいでしょう。

◆相談者さんからのご感想

今からでも貯金を始めれば、退職後に夫からもらう生活費が月3万円でなんとか生活できそうだということに少し安心しました。

また、新しい仕事を探すのは難しいかもしれないけれど、今の仕事でシフトを増やせないか会社に聞いてみたいと思います。