ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

「仮想通貨でSuicaにチャージ」が話題になったディーカレット

第29回の記事でご紹介したように、仮想通貨で電子マネーのSuicaにチャージできるようになるというニュースが話題になりました。そのプラットフォーム構築に貢献しているのが、DeCurret(ディーカレット)という日本企業です。

ディーカレットは、コインチェック事件以来、初めて新規参入の仮想通貨交換業者として財務省関東財務局の登録を受けました。ディーカレットの代表・時田氏は、「まずユーザーのみなさんに使っていただくことが大事だと思います。ディーカレットがやりたいのは、実際に使われるプラットフォームを作ることです」と語っています。

2017年の仮想通貨ブームと最近のビットコイン再高騰により、「仮想通貨」「ビットコイン」という単語の認知度はたしかに上がりました。仮想通貨に投資している人も、少しずつ増えているように思います。しかし、「今日はビットコインで支払おうかな」という人は周りにほとんどいません。これでは、普及というにはほど遠いのが現状です。やはり日常的に使われるようにならないと、普及したとは言えないでしょう。「使われる」というのは、決済や送金に使われるという実需を生み出すことです。

実際に仮想通貨でSuicaにチャージできるようになったり、第26回第33回の記事でご紹介したように、フュージョンコインやフュージョンバンキング、オミセゴーによって仮想通貨と法定通貨の両方を取り扱うハイブリッド銀行や仮想通貨決済インフラができたりすれば、決済や送金で使われるケースは増えるでしょう。

実需を生み出すためには、「使われた」という実績が重要だと思います。フュージョンバンキングカード(銀行のデビットカード)ができれば、VISA加盟店でも使えるようになりますからとても便利ですよね。

LINEの仮想通貨取引所開設

LINEは、日本国内向けの仮想通貨取引所の設立を早ければ7月中に行うとしています。仮想通貨取引所は「BITMAX」という名前で、すでに商標の出願も終えたようです。BITMAXでは、ビットコインやLINE独自の通貨であるLINKを含む仮想通貨の売買や送金サービスを始めるといいます。

LINEは、決済や送金に便利なLINE Payのサービスをすでに展開しています。まだまだメッセージアプリとしての認知度が高いですが、LINEは単なるメッセージアプリではありません。手軽なQRコード決済や送金、安価な保険、シンプルな家計簿、少額から始められるスマート投資などさまざまなサービスを提供しており、生活に欠かせないインフラとなりつつあります。LINEアプリ内で仮想通貨の決済や送金、投資ができるようになれば、仮想通貨の実需はさらに高まるでしょう。

コンビニでのビットコインATMの普及

アメリカの仮想通貨プロバイダーであるDigitalMint(デジタルミント)は、コンビニエンスストアチェーンのサークルKと提携して、20店舗にビットコインATMを設置することを発表しました。

第18回の記事でご紹介したように、ビットコインATMや仮想通貨ATMは世界中に設置されています。日常的に利用するコンビニに仮想通貨ATMがあれば、すぐに現金化できて極めて便利です。

仮想通貨の現金化だけでなく、購入も仮想通貨ATMでできればもっと便利になりますよね。日本では大手コンビニも銀行業を始めていますから、コンビニと銀行、仮想通貨関連事業はシナジーがあると思います。

他にも、アメリカのアマゾンではイーサリアム決済を導入するという話も出ているそうです。Suicaや銀行デビットカード、LINE、コンビニ、アマゾンなど、普段から利用するモノやサービスに仮想通貨が実装されることで、多くの実需を生み出し、その実績がさらなる普及をもたらすはずです。

次回は、「なにかと話題の『フェイスブックの独自仮想通貨』」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。