「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回のテーマは、「仮想通貨はどこまで上昇する? 価格予測と未来の可能性」。

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仮想通貨の歴史

2020年から、仮想通貨(暗号資産)への関心や投資熱が高まっています。『「ビットコイン堕落論」~億り人で在り続けるために必要なこと~』を書いた2020年12月時点では、1BTC=1万9,000ドルを突破したところでしたが、2021年に入ると瞬く間に1BTC=6万ドルを超えました。

その後、イーロン・マスク氏の発言などによってビットコインの価格は下落していますが、長期的には誤差の範疇でしょう。

ビットコインの存在を知った時期は、人によって大きく異なります。ビットコインの歴史はまだ12年ほどに過ぎませんが、ビットコインバブルは何度か起こっています。

2009年のビットコイン誕生を「仮想通貨1.0」と今風に表現するなら、2011年の初のビットコインバブルは「仮想通貨2.0」、2013年のキプロスショックによるビットコインの価格高騰は「仮想通貨3.0」、2017年の仮想通貨ブーム(仮想通貨元年)は「仮想通貨4.0」、そしてコロナショックによる主要な仮想通貨(暗号資産)の価格高騰は「仮想通貨5.0」と言えるかもしれません。

「仮想通貨2.0」は、初のビットコインバブルです。2011年は、ビットコインの取引が活発になった年で、同年2月には、1BTC=1ドルまで高騰しました。今の価格から考えると、タダみたいな価格ですね。

ザ・ビットコインマーケットで最初に取引されたときの1BTC=8セントを基準とするなら、それでも12.5倍です。4月には、イギリスのタイム誌が「真のデジタルキャッシュ」としてビットコインの特集を組みました。初めてビットコインが大手メディアに取り上げられたことで注目が集まり、6月には一時1BTC=31.91ドルまで上昇しました。

しかし、6月19日にはマウントゴックス社がハッキング被害を受け、約1週間、取引停止となりました。他の仮想通貨取引所でもハッキングが発生し、ビットコインの価格は1BTC=12ドルから2ドルまで80%も暴落。その後、ビットコインの価格は2012年半ばまで1BTC=5ドル前後と低迷することになります。

「仮想通貨3.0」は、2013年のキプロスショックによってもたらされました。2013年3月に起こったキプロスショックによって、EU圏を中心にビットコインに資金が流入し始めます。政府や金融機関の管理を受けない仮想通貨は、預金封鎖の影響を受けないからです。これによって、ビットコインは一時1BTC=266ドルまで跳ね上がります。2010年の1BTC=8セントの3325倍です。

「仮想通貨4.0」で、仮想通貨(暗号資産)の存在を知った方も多いのではないでしょうか。2017年の仮想通貨ブームであり、「仮想通貨元年」とも呼ばれる年です。同年12月18日になると、1BTC=1万8000ドルを超え、当時の過去最高値を記録しました。

大きな原因は、取引高世界最大の先物取引所「シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)」が、ビットコインの先物取引を始めたことにあります。同月11日には、アメリカの大手先物取引所「シカゴ・オプション取引所(CBOE)」も、ビットコインの先物取引を開始しました。

そして「仮想通貨5.0」では、コロナショックによってビットコインの価格は1BTC=6万ドルを超えました。ビットコインが高騰している理由は、主に以下の5つがあるでしょう。

・デジタルゴールドとしての地位を確立しつつある
・インフレヘッジとしての投資先(有事のビットコイン買い)
・ペイパルやスクエアなどの決済サービスが導入(「使う」リアリティが増した)
・世界初の仮想通貨(暗号資産)であり、圧倒的に知名度No.1
・仮想通貨(暗号資産)市場の基軸通貨であること

一時的に価格が暴落・高騰することはありますが、それは過去にも何度も起こっていることです。投資には、長期的な視野も必要ですね。

主要な仮想通貨の価格予測

未来を予測することは難しいのですが、仮想通貨(暗号資産)の価値は全体的にはまだまだ上昇するだろうと実感しています。なかには、現時点から10倍になる仮想通貨(暗号資産)も出るでしょう。細かな上下動はありつつも、継続して拡大していくと考えられます。

その根拠の1つは、仮想通貨(暗号資産)を巡る法律の整備が各国で進むであろうということです。また、国際間のルールも整備されていくでしょう。ルールがない状態の楽しさもありますが、やはりルールがある方が多くの人は参入しやすいでしょう。

根拠の2つ目は、ブロックチェーンの技術が様々な分野で応用・導入されていくことです。不動産取引や貿易などの商業利用でブロックチェーンや仮想通貨(暗号資産)が使われるようになれば、投資・投機以外の決済利用、海外送金代わりの利用も増えていく可能性があります。ユーザーが増え普及していけば、主要な仮想通貨(暗号資産)の価格が上昇する可能性も高まります。

ビットコイン

主要な仮想通貨(暗号資産)の価格上昇を予測するなら、例えばビットコインであれば、やがて1BTC=10万ドル以上に上がるでしょう。ただし、ビットコインは、送金スピードの遅さと手数料の高さに課題を抱えています。これらの課題解消がカギになりそうですが、コロナショックによってそんな課題は関係なしに最高値を更新し続けました。

今後も、ビットコインは世界で最初の仮想通貨(暗号資産)として、圧倒的な知名度を維持するでしょう。技術的には陳腐になっていますから、いずれ時価総額をイーサリアムに追い越される可能性は否定できませんが、時価総額トップ3くらいには在り続けるのではないでしょうか。

イーサリアム

次にイーサリアムは、1ETH=5000ドルにはなるでしょう。イーサリアムについては、『イーサリアムのスマートコントラクトってなに?』でご紹介していますので、気になる方は読んでみてください。

リップル

次にリップル(XRP)は、1XRP=10ドルになると思われます。ただし、リップルは訴訟の問題を抱えていますから、その結果次第となるでしょう。

米証券取引委員会(SEC)が、リップル社およびCEOのBrad Garlinghouse氏、共同創業者のChris Larsen氏を相手方に取った訴訟を起こしています。訴訟では、リップル社が独占的に発行を行っているXRPの証券性に関するものです。

仮想通貨(暗号資産)はデジタル資産としての性質上、証券に該当するか否かという論争が常に付いて回ります。仮にXRPが「証券である」と判断された場合、リップル社は届け出の済んでいない証券を不当に販売したことになります。

悲観的に見れば、XRPが消滅してしまう可能性もゼロではありません。しかし楽観的に見れば問題を抱えて価格が下がっている今が買い時とも言えるかもしれません。また、XRPが技術的に優れていることやこれまでの実績を考えれば、グーグルなどの大手企業がリップル社をM&Aして事業を引き継ぐこともあり得なくはないでしょう。もしもグーグル銀行が設立され、その銀行のツールとしてXRPが利用されるようになれば、それはそれで面白いですね。

これらの価格予測は、2019年にイギリス、アメリカ、日本で出版された書籍『The New Money: How and Why Cryptocurrency Has Taken over the World(邦題:THE NEW MONEY 暗号通貨が世界を変える)』に書いたものです。原稿を書いていたのは2018年春頃のことで、執筆当時、コインチェック事件などの影響も大きく仮想通貨(暗号資産)は冬の時代にあったと言えます。当時に比べると、ビットコインが最高値を更新し続けた2020~2021年は我が世の春と呼べるでしょうか。季節は巡りますから、また何度か冬も春も来るでしょう。

出版された2019年当時、「ビットコインは、やがて1BTC=10万ドルになる」というと「煽っている」と否定されたものです。しかし、一時1BTC=6万ドルを超えた今、それを否定する人は少なくなっています。

もっと前の1BTC=1000ドルほどで停滞していた頃、「1BTC=1万ドルになる」というと、同じように否定されました。1BTC=10万ドルを超えた頃、私の周辺の人たちや私は「1BTC=100万ドルになる」と言い始めているかもしれません。

1BTC=100万ドルになると買い物などの決済で使う際、価格表記が「0.0000…BTC」となってしまい、あらゆるものが格安に見えてしまいますから、その頃には、ビットコインの通貨単位は「BTC」ではなく「MBTC(マイクロビーティーシー/マイクロビットコイン)」になっているかもしれません。マイクロは0.000001が掛けられますから、1BTC=100万ドルになっても1MBTC=1ドルほどです。それが否定されない世界になるよう、仮想通貨(暗号資産)の社会的地位を少しでも上げていきたいところです。

書籍や、別稿『今からでも遅くない? 経験者が語る仮想通貨の現在とこれから』の連載でも何度か書いていますが、仮想通貨(暗号資産)は、ホルダーが自分たちで価値を決め、価値をつくっていく通貨です。ですから、保有している仮想通貨(暗号資産)がどれだけ世界にその名が知れ渡るのかが重要になります。認知度、利便性を高めることが信用につながり、信用度が上がれば、さらに知名度や認知度が上がり、様々な企業やサービスと提携することで、利便性もさらに向上します。このようにして、上昇スパイラルが生まれるわけです。

なぜビットコインはここまで価格上昇したのか

2010年2月に、ビットコインとドルを両替できる世界初のオンライン取引所「ザ・ビットコインマーケット」が誕生した際は、初取引で1BTC=8セントの値がつきました。それが、2017年12月には、1BTC=1万8000ドルまで上昇。わずか8年弱の間に、約22万5000倍になっています。そして、2021年には一時1BTC=6万ドルを超えました。これほどの価値上昇を見せた投資対象を、私は他に知りません。

では、なぜビットコインの価格はここまで上昇したのでしょうか。その答えはシンプルで、ビットコインしか仮想通貨(暗号資産)の種類がなかったからです。今では、仮想通貨(暗号資産)の種類は1万種類か、あるいはそれ以上存在しています。「仮想通貨(暗号資産)に投資しよう」と思っても、それだけ投資対象があれば迷いますし資金が分散します。

いっそのこと、仮想通貨(暗号資産)の種類が10~20種類ほどに淘汰されれば、今の主要な仮想通貨(暗号資産)はもっと価格上昇するでしょう。さらに言えば、新たな通貨を開発することではなくビットコインとイーサリアムの課題を解決することにブロックチェーン企業が集中すれば、ビットコインとイーサリアムの課題は解消され、価格は跳ね上がるはずです。

ただし、仮想通貨(暗号資産)は技術革新の世界ですから、次々と新しいものが生まれてしまうのは止められません。

「技術革新」「コスト削減」「信頼性の向上」「有用性の向上」「利便性の向上」など、仮想通貨(暗号資産)が世界で普及していくうえでのハードルはいくつもありますが、やがては国を超えた送金手段、決済手段となり、利殖に使われ、限りなく法定通貨に近い金融資産となるでしょう。どのようにして普及していくのか、私は今から楽しみです。