ブームは去ったかのようにも感じる「仮想通貨」ですが、その普及は世界中で着実に進んでおり、今後もさまざまなシーンでの活用が期待されています。本稿では、「仮想通貨に興味はあるけれど、なにからどう手を付ければいいかわからない」というような方向けに、仮想通貨に関連するさまざまな話題をご紹介。仮想通貨を2014年より保有してきた筆者の経験から、なかなか人には聞きにくい仮想通貨の基礎知識や歴史、未来像などもわかりやすくお伝えします。

今回のテーマは、「イーサリアムのスマートコントラクトってなに?」。

イーサリアム(イーサ)ってなに?

イーサリアムは、第5回の記事でもご紹介したように、ロシア系カナダ人のヴィタリック・ブテリンによって開発された仮想通貨です。イーサと呼ばれることもあります。通貨単位はETHです。

2013年に考案され、2014年にプレセールを開始。2015年には、日本でも取引が開始されました。スイスに設立されたイーサリアム財団が運営しています。ビットコイン(BTC)やリップル(XRP)と並び、「3大仮想通貨」と言えるほどメジャーな仮想通貨です。

イーサリアムは誕生して5~6年程度の仮想通貨ですが、「発行枚数×通貨価格」で算出される時価総額は、第2~3位を維持しています。

このように、イーサリアムはたくさんの種類がある仮想通貨の中でも人気がある通貨であり、その人気の主な理由としては「スマートコントラクト」という機能が備わっていることが挙げられます。

スマートコントラクトってなに?

スマートコントラクトとは、「仮想通貨を支えるブロックチェーンに、“契約の仕組み”を組み込んだ技術」のことです。

スマートコントラクト以外のブロックチェーンでは、「AさんからBさんに、1ビットコインを送金」という記録をひとつのブロック(取引記録)にします。そのブロックをチェーンのようにつないでいくのがブロックチェーンという仕組みです。

一方、スマートコントラクトが備わっているブロックチェーンでは、「AさんがBさんに1ビットコインを送金したら、7日後に100万円にして返還する」という契約を自動で組み込むことができます。

このように、取引記録に「契約内容」まで組み込めることが、スマートコントラクトの特徴です。

スマートコントラクトを利用すると、契約内容を変更した際にもその履歴がすべて残されます。そのため、公証役場を利用することなく契約書の公正性が保証されるということになります。「第三者の証明」が不要になるということですね。

この仕組みは、これまでの商習慣を大きく変えるほど画期的なものです。「第三者が保証する」「別紙で特約や契約書を締結する」ことで成立していた取引が、「お金の支払い→受け取り」というフローだけで支払いと契約を同時に行うことが可能になります。

例えばレンタカーを借りるとき、スマートコントラクトの機能を備えたイーサリアムで支払うとしましょう。これまでなら、レンタカーの店舗に行って車を選び、契約書にサインするという作業が必要でした。しかし、スマートコントラクトなら

  1. 近所の駐車場で車を選ぶ
  2. タッチパネルで契約書面をチェック
  3. イーサリアムで支払い、レンタカーを利用
  4. 車を所定の場所に返して自動決済

というシンプルな流れでレンタカーを利用することができるようになります。

スマートコントラクトは、レンタカーのようなシェアリングサービスだけでなく、不動産登記や住民票管理、医療カルテ、サプライチェーンなどの分野でも活用が期待されています。

不動産取引とスマートコントラクトは相性が良い?

私は、インドネシアのバリ島で不動産事業を行っています。土地を仕入れ(主に長期借地)、そこにアパートなどの建物を建て、入居付けをして運営する事業です。

インドネシアでは、ノタリスと呼ばれる公証役場のようなところで契約書などの文書を作成します。首都のジャカルタのようなところであれば、しっかりとした土地権利書があるのですが、田舎の山奥ではそうもいきません。「村長さんが、ボロボロのノートで土地の所有者を管理している」なんてケースもあります。

さすがにノートまでアナログな管理ですと、スマートコントラクトを導入するにはハードルが高いのですが、不動産取引とスマートコントラクトは相性が良いと思います。

不動産取引は、土地や建物の売買取引にしても、アパートなどの賃貸取引にしても、仲介者が多いからです。その仲介手数料(紹介手数料)も、結構高いですからね。インドネシアなどの新興国では、高いフィーを上乗せして販売するブローカーも多く、詐欺話のようなブローカー案件もあります。

詐欺話のようなブローカー案件とは、実際は存在しない不動産情報を、さも実在するような資料などを作り、「情報開示料」「手付金」などの名目で報酬を受け取ってトンズラするような案件のことです。

仮想通貨で不動産が買える未来

マイナビニュース別稿で、インドネシアの不動産REIT(投資信託)についてご紹介しました。

オンラインで海外の不動産を間接的にでも買えるようになると、海外不動産投資のハードルがグッと下がると思います。もちろん、不動産投資をする場合、物件を見に行く方が良いに決まっているのですが、「試しに少額から海外不動産投資を始めてみたい」という人にとっては、現地に行くというのは時間もコストもかかりますから負担になりますよね。

スマートコントラクトや仮想通貨が普及すると、「仮想通貨を使ってオンラインで海外不動産を買える」時代が来るかもしれません。

ただ、決済に仮想通貨を使うと課税対象になりますから、第45回の記事でご紹介したフュージョンバンク(FUSION BANK)で仮想通貨を担保に入れて融資を受け、その資金で不動産を買うという方が良いかもしれませんね。

次回は、「仮想通貨取引所と仮想通貨銀行の違い」についてご紹介します。

執筆者プロフィール : 中島 宏明(なかじま ひろあき)

1986年、埼玉県生まれ。2012年より、大手人材会社のアウトソーシングプロジェクトに参加。プロジェクトが軌道に乗ったことから2014年に独立し、その後は主にフリーランスとして活動中。2014年、一時インドネシア・バリ島へ移住し、その前後から仮想通貨投資、不動産投資、事業投資を始める。
現在は、SAKURA United Solutions Group(ベンチャー企業や中小企業の支援家・士業集団)、しごとのプロ出版株式会社で経営戦略チームの一員を務めるほか、バリ島ではアパート開発と運営を行っている。
オフィシャルブログも運営中。