「人生100年時代」と言われる現代。20代でも早いうちから資産形成を進めることが求められています。一方で、どのように投資・資産運用の目利き力を磨いていけばいいのか、悩んでいる方は多いのではないでしょうか。

この連載では、20代の頃から仮想通貨や海外不動産などに投資をし、現在はインドネシアのバリ島でデベロッパー事業を、日本では経営戦略・戦術に関するアドバイザーも行っている中島宏明氏が、投資・資産運用にまつわる知識や実体験、ノウハウ、業界で面白い取り組みをしている人をご紹介します。

今回のテーマは、「フィンテックの最新情報を得たいなら、フィンテックエンジニア養成勉強会へ」。

フィンテックエンジニア養成勉強会とは

フィンテックエンジニア養成勉強会というコミュニティをご存知でしょうか。フィンテックエンジニア養成勉強会は、「より良い未来の社会を切り拓くためにVUCA時代を乗り越えられる金融関係者(エンジニア、マネージャー、経営者)を養成すること」を目的にスタートしたコミュニティです。「エンジニア養成」とありますが、技術者だけではなく実は非エンジニア(経営者やマネージャー)の方々も多く参加しています。

フィンテックエンジニア養成勉強会は、エンジニアの方々へは、金融とテクノロジー関連のスキルをさらに向上させること。経営者やマネージャーの方々へは、金融に関するテクノロジーを正しく理解・評価できるようになること。および、技術者との溝をさらに埋めるようになること。組織全体へは、社会に必要なプロダクトを生み出せるようになることをミッションとしています。

いつの時代も、テクノロジーの力が未来を切り拓いてきました。それは、今後も変わることのない普遍の原理といえるでしょう。しかしながら、金融の世界においては、技術に対する評価は低く、技術力の高いエンジニアの本質的価値が評価されていないのが実状のようです。

フィンテックエンジニア養成勉強会は、エンジニア・非エンジニア双方にとって大きな存在になっていくことは間違いありません。文系と理系を分けるのがナンセンスなように、やがては「エンジニア・非エンジニア」という分け方そのものも時代遅れになっていくかもしれませんね。

コミュニティを主催している方々の共著『フィンテックエンジニア養成読本』も、エンジニアの方々以外にとっても学びの多い内容になっていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

  • 「フィンテックエンジニア養成読本」技術評論社 2019.10.5出版

勉強会#14 「保険×AI×プラットフォーム」に参加してきた

フィンテックエンジニア養成勉強会では、ほぼ毎月なんらかのイベントを開催していますが、第14回(2020年4月8日開催)のテーマは「保険×AI×プラットフォーム」でした。身近な金融商品のひとつである保険の世界にも、AIやブロックチェーンなどのテクノロジーの力は注がれています。

当日のプログラムや登壇者、モデレーター、パネラーは以下のとおり。

オープニング
司会:野中 瑛里子氏@フィンテック協会
トーク『フィンテック近況』
講演者:藤井 達人氏@日本マイクロソフト

トーク『GuardTech検討コミュニティの紹介』
講演者:温水 淳一氏@GuardTech

トーク『Insurtech近況』
講演者:Chang Li氏@Plug and Play Japan

パネルディスカッション
テーマ『保険×AI×プラットフォーム』
パネラー:Chang Li氏@Plug and Play Japan
パネラー:畑 加寿也氏@justInCase
パネラー:長谷部 直大氏@フィンプラネット
パネラー:浅川 太貴氏@Protosure
パネラー:田口 昂哉氏@Frich
モデレーター:藤井 達人氏@日本マイクロソフト

クロージング
司会:野中 瑛里子氏@フィンテック協会

藤井達人氏からは、フィンテックトレンドとして「グリーンフィンテック」「サスティナブルファイナンス」が取り上げられました。

SDGsやESGが注目されるなか、銀行は化石燃料を使用する企業への融資を控える傾向にあります。イタリアのメディオラヌムバンクは、2020年にグリーンデジタルバンク・Floweを設立し、木製のデビットカードを発行しています。カードにはグアテマラに植樹するオプションがあり、その成長を見ることができるそうです。また、スウェーデンのフィンテック企業・DoconomyはCO2の排出量を可視化する技術を提供しており、DO Balck cardというカードも発行しています。このカードは、一定のCO2排出量になるとカードを利用できなくする機能がついているそうです。「いかにカードを利用してもらうか」を考えるのがこれまでの企業の在り方でしたが、カードを利用できなくするというのは斬新ですね。

テクノロジーによって消費行動を可視化し、サスティナブルなエコシステム構築を目指すのがグリーンフィンテック企業のミッション。日本からも、グリーンフィンテック企業が今後多く誕生するかもしれません。

Chang Li氏からは、InsurTech(Insurance:保険×Technology:テクノロジー)に関する世界のトレンドがプレゼンされました。2014年からInsurTechへの投資額が増加しており、100億円以上を調達した企業が世界には11社以上(アメリカ、イギリス、中国、インドの企業)あるそうです。

保険の原点である「安さ」「早さ」「透明性」「顧客本位」に着目し、既存の保険よりも安価な保険や、アプリでオンライン保険相談、医療相談ができる仕組み、保険を使える医療機関を自動で抽出してくれる仕組みなど、保険会社とテクノロジー企業の提携によって実現している、あるいは実現しつつあるサービスが増えているといえます。

日本は社会課題先進国でもありますし、興味深いテクノロジー企業もたくさんありますから、日本から世界に展開されるInsurTech企業が出てきても良いですよね。もっとも、フラット化する世界では、国境を考えること自体意味がないことかもしれませんが。

パネルディスカッションでは、「わりかん保険」などのBtoCサービスや、保険会社と事業会社をつなぐSaaSシステムを提供しているjustInCaseの畑 加寿也氏。保険ロボアドで経済的安心とワクワクする日常を感じられる社会を目指すフィンプラネットの長谷部 直大氏。ノーコード型保険商品開発を手掛けるProtosureの浅川 太貴氏。P2P互助プラットフォームを展開しているFrichの田口 昂哉氏らも加わり、「保険×AI×プラットフォーム」をテーマに議論を交わしました。

今後、保険領域で高まるであろうニーズとして「雇用・就労不能になった場合の保険」「Eコマース関連の保険」「ペット保険」「企業のサイバーセキュリティ保険」「メンタルヘルスケア保険」「自然災害による業績悪化をカバーする保険」「ロボアド(非対面)の活用」などが挙げられました。

また、「AIやブロックチェーンは、保険業界にどのような影響を与えるか?」という問いには、「究極形は保険、証券の自動化」「表はシンプルに。裏側をテクノロジーが担う」「APIが解放され、他の業界との接点が増す」「IoTによって高齢者の見守りサービスが多様化」「オーナー経営者向けにP2P保険が開発される(相続、事業承継対策として)」「保険金査定プロセスが短縮される」「保険金の不正請求をテクノロジーが防ぐ」など、さまざまな解が。

また、「必ずしもAIやブロックチェーンを使う必要はない。技術ありきでなくて良い。仕組みでカバーできることも多い」という言葉も印象的でした。テクノロジーを妄信していない点が素晴らしいですね。

GuardTech検討コミュニティはInsurTechの世界を切り拓く

フィンテックのなかでも、保険(InsurTech)は私たち消費者にとってもっとも身近な金融商品であるといえるかもしれません。そんなInsurTechの世界を切り拓いていくであろうコミュニティが、GuardTech検討コミュニティです。

GuardTech検討コミュニティは、2019年10月に有志を募って立ち上げられた保険業界のオープンAPI普及活動を推進する業界横断のコミュニティ。保険会社、InsurTech企業、X-Tech企業の3者協業型エコシステムで、パーソナライズされた『安心・安全』をお届けする」というGuardTechの到達イメージを普及させることをコミュニティの目的としています。

フィンテックエンジニア養成勉強会と同様、GuardTech検討コミュニティにもエンジニア・非エンジニア双方の方々が参加しています。これらのコミュニティから、未来のスタンダードが生まれるかもしれません。ルネサンスの時代に、工房からたくさんの作品や技術、芸術家が生まれたように。新しい時代を切り拓くのは、いつの世もテクノロジーとそれを生み出す人々の力です。