ある意味でそのひとつの“答え”を示しているのが、同じフジテレビの20代のディレクター・飛田将斗が企画・演出した『AI実験バラエティ シンギュラ』だ。槇原Dと対照的に、飛田Dは学生時代からAIを学び、それを生かした番組をつくりたいと考え入社した。

そんな彼が、毎月数万円単位で課金し、AIを使いこなす若林正恭をMCに迎え、今年1月に第1弾を放送。第52回放送文化基金賞・優秀賞を受賞し、5月14日に第2弾が放送された。

これまでAIを使ったバラエティ企画は、AIが出す嘘(ハルシネーション)やチグハグな応答を見せ笑う企画が大半だった。しかし、この番組は違う。

メイン企画「脳内大喜利」は、高度な画像・動画生成AIを使った新しい大喜利。ロバート秋山、ダウ90000蓮見、真空ジェシカ川北ら、発想力に定評のある芸人たちがプロンプトを入力し、そのアイデアをAIが画像や動画として具現化する。人間の発想とAIの表現力が掛け合わさることで、新たな笑いが生まれていた。

若林も「フリップにマジックで(芸人自身が)描いた絵に人(ニン)が宿るのかと思ったけど、AIでも宿る気がするね」と語っている。

一方、第1弾の生成AIで制作した「AI永尾柚乃」にMCを務めさせる「冠代行エーアイ」や、第2弾のAIが考えた架空のタレントを芸人が“ものまね”する「空想タレントものまね」は苦戦。芸人たちの奮闘によって、何とか成立している印象だった。

「脳内大喜利」のように「人間が考え、AIが形にする」企画は、大きな可能性に満ちているが、その逆で「AIが考え、人間が形にする」のはまだまだ追いついていない。

つまり、結局は使う人間が優秀か否か、その人がいかに使うかが、AI時代になっても重要になってくるのだ。

AI裁判官システムの危うさを鮮やかに描いたドラマ

NHK BSで放送されたドラマ『有罪、とAIは告げた』も、その本質を描いていた。

AI裁判官システム「法神」が試験導入されることになり、ベテラン裁判官・檜葉勝弘(國村隼)は、その精度に驚き、次第に傾倒していく。「法神」はその裁判官の過去の判例をすべて学習し、その人物が導き出すであろう判決文を生成する仕組み。

子が親を殺害した事件を担当した檜葉は、その判決を「法神」に頼る。

一見、AIはより客観的な結論を出すと思われがちだ。しかし、それは決して中立ではない。檜葉自身の価値観や判断基準が学習されている以上、「法神」の結論にも「偏り」が生まれる。その危うさを鮮やかに描いた作品だった。

もはや、AIを排除することはナンセンスだ。社会がAIをどう受け入れ、どう付き合っていくかが問われる時代になっている。そして、その答えが日々更新されていることは、こうしたテレビ番組をつぶさに見ているとよく分かる。