“オールドメディア"と揶揄される一方で、最新技術を積極的に導入しているテレビメディアの動向を取材するシリーズ「テレビ×サイセンタン」。今回は、昭和・平成・令和と数々のヒット曲を生み出し続けてきた【秋元康】と、最新AI技術でその秋元氏の考え方を学習した【AI秋元康】がAKB48の新曲プロデュースで対決するという前代未聞の番組『秋元康×AI秋元康 ~AKB48新曲対決』(日本テレビで2025年9月放送、Huluで配信中)の舞台裏を探っていく。
話を聞いたのは、企画プロデュースの柏原萌人氏、総合演出/AI監修の大納啓汰氏、演出の吉川真一朗氏。日本テレビの社内横断プロジェクトとして走り出したこの番組は、どのように立ち上がり、「秋元康が自分のAIと対決する」というチャレンジングな企画にたどりついたのか――。(第1回/全2回)
人間&AIの2ショット画面にこだわり
この番組の起点は、柏原氏が参加していた秋元康氏との勉強会。その中で、秋元氏がAIに強い関心を持っていたのが分かり、「AI秋元康が新しいアイドルグループのオーディションをする」など30本ほどの企画を出していた。
そうした中で発案した「秋元康が自分のAIと対決する」というアイデアは、秋元氏が「最近は、僕に遠慮したような企画の提案が多い」と感じていたところに、柏原氏が「あえてチャレンジングな企画を」とぶつけたことで、本人も「面白いね」とGOが出て実現。
「有名人が自分のAIと対決する」というフォーマットは、相当な認知度や実績のない人物ではないと成立しないことから、柏原氏は「最初から秋元さんに直接ご相談をさせていただけたことが、大きかったと思います」といい、「これだけのキャリアがあって、負けることで何かを失うかもしれないリスクがある中で挑むということに、視聴者も興味を持てますし、番組としてやる価値があると思ったので、秋元さんが乗ってくれて本当にありがたかったです。懐の深さに、改めて本当にすごいクリエイターなんだなと感じました」と感謝した。
【AI秋元康】はコンピューターをイメージしたビジュアルにする案もあったが、「最初の驚きは見た目を本物に近づけるところだろうと考えた」ということで、秋元氏の写真を加工して作成。総合演出の大納氏は「スタジオでは、人間【秋元康】と【AI秋元康】の2ショットの画にこだわりました」という。
AIをエンタメに“通訳”する布陣
お題をAKB48の新曲にしたのは、AKB48の20周年を記念した日本武道館ライブに日テレが携わっていることもあって選定。日テレとしてAI施策を積極的に取り組んでいく方針を打ち出したことに加え、秋元氏にまつわる膨大なデータを打ち込むために権利処理が必要になり、制作された楽曲まわりの権利の調整も必要になるため、イベントを担当する事業局、IT技術を管轄するDX推進局、権利処理を行うライツマネジメント部など、柏原氏が中心となって様々な部署と連携する「社内横断プロジェクト」として進めていくことになった。
視聴者投票で勝利した楽曲は配信リリースするため、AKB48の所属レーベルであるユニバーサルミュージックとも打ち合わせを繰り返したという。
制作側では、学生時代に追っかけをやっていたほどのAKB48の大ファンで、かつ「日本テレビの制作局イチAIの造詣が深い」大納氏、そしてテクニカルになりがちなAIの領域を「一般的な目線」でわかりやすくエンタメにしていくために制作経験の豊富な吉川氏が参加。吉川氏が総合演出を務める帯番組『DayDay.』とも連動して展開を行ったことで、単なる単発番組ではなく、幅を持たせた企画となった。
こうして技術目線・制作目線を持った2人が参加することで、AIという最新技術を、老若男女が視聴するテレビ番組の企画に落とし込みつつ、エンタメとして楽しめるように“通訳”するという役割を担ったのだ。
正確に言うと大納氏は、柏原氏が電話でこの件について話している際にたまたま横にいて「秋元康」というワードを耳にしたことから、「何の企画ですか?」とロックオンして参加を志願。運命を感じて取り組んだ今回の番組は「他の仕事が手につかなくなるくらい楽しかったです(笑)」と充実だった様子だ。
