2026年5月16日・17日の2日間、神戸の2球場を舞台に、ENEOSホールディングスが協賛している特定非営利活動法人 日本身体障害者野球連盟(以下「JDL」)が主催する「第34回全国身体障害者野球大会」が開催された。同大会は、国内最大規模の身体障害者野球大会として1993年から続いている。障害者の健康維持・増進や社会参加促進を主な目的として開催され、今大会では地区予選の成績をもとに選抜された16チームがしのぎを削った。

  • 「第34回全国身体障害者野球大会」が開催

    ENEOSホールディングスが協賛する「第34回全国身体障害者野球大会」が開催された(提供:JDL)

本稿では、大会を通じて見える競技の魅力、そして身体障害者野球大会を行う意義について紹介する。

洗練されたプレーが詰まった身体障害者野球の全国大会

野球シーズン真っ只中のこの時期、プロ野球やメジャーリーグの話題は毎日のように報道され、さまざまな選手の活躍が耳に届いてくる。ただ現在、“身体障害者野球”と耳にしたとき、実際の試合の様子を具体的に思い浮かべられる人は、恐らく多くないのではないだろうか。

実は身体障害者野球では、選手それぞれの身体に合わせたルールやプレーが取り入れられている。例えば走塁が難しい打者には、打球が飛んだ後に別の走者が代わって走る「打者代走」が認められていたり、隻腕の選手は守備の際、捕球後にグローブを外してボールを持ち替えて送球したりと、それぞれの工夫によってプレーが成立しているという。

現在JDLに加盟している身体障害者野球チームは、全国に36チーム。今大会は、2025年秋に行われた地区予選の成績をもとに選抜された16チームが、ほっともっとフィールド神戸・G7スタジアム神戸を舞台に、優勝旗をかけたトーナメントに臨んだ。

試合が始まると、球場には落ち着いた緊張感が。投手から投じられた一球には、打席で集中した打者が対峙する。軟球独特の打球音が響けば、野手は素早く動いてプレーをつなぐ。ひとつひとつの動きには無駄が少なく安定していて、派手さとは少し違う、着実でひたむきな空気が流れる。

  • 隻腕のバッター

    片手でスイングしたバットから鋭い打球が放たれる(提供:JDL)

  • 車いすに乗ったピッチャー

    車いすに乗ったピッチャーの力投も光った(提供:JDL)

ただ、グラウンド上で繰り広げられるプレーからは、勝利を目指す選手たちの想いがひしひしと伝わり、大会を通じて何度も飛び出た全力プレーによるランニングホームランは、選手・観客に強い印象を残した。丁寧なプレーによって生まれるひとつの送球、ひとつの走塁、ひとつのアウトに重みがあり、その積み重ねこそが身体障害者野球ならではの見ごたえにつながっているという。

またこの競技の魅力は、プレーの面だけではない。うまくいかなかった場面では選手同士で声を掛け合い、得点が入ればベンチ全体で喜びを分かち合う。そんなやり取りからは、チームが団結して試合に向き合う様子が伝わり、応援する観客たちも前向きにさせるのだ。

白熱した試合が繰り広げられた今大会は、地元チームの神戸コスモスとの決勝で1点差の接戦を制した名古屋ビクトリーが、4年ぶりの優勝を果たし、笑顔で優勝旗を手にした。

ENEOSが身体障害者野球を支え続ける理由

この全国身体障害者野球大会では、オフィシャルスポンサーとしてENEOSホールディングスが協賛している。強豪社会人野球チームを持つ同社は、長年にわたってスポーツ振興に取り組んできたとのこと。“スポーツが人と人をつなぎ、それぞれの挑戦を後押ししていくこと”を大切に、2007年度からENEOSとしてJDLに協賛し、2026年度からはENEOSホールディングスに移管して協賛を続けている。

できない理由ではなく、どうすればできるかを考え、一人で戦うのではなく、仲間と支えあって前に進み、そして勝利に向かってひとつひとつのプレーを積み重ねる。そんな身体障害者野球のグラウンドには、ENEOSが大切にする価値が表れているとのこと。同社が約20年にわたって協賛を続けているのは、大会支援だけでなく、困難に挑み努力・成長を続ける人々の活動や姿勢が、社会に広がっていくことの意義を大切にしているからだという。

そして同社はこれからも、「市民社会の発展への貢献」という行動基準のもと、スポーツ振興や次世代育成を推進していくといい、全国身体障害者野球大会が、参加する選手、そして観戦する人それぞれにとって印象に残る時間となることを期待するとしている。

  • 本塁でのクロスプレーも

    本塁でのクロスプレーなど迫力ある全力の野球が繰り広げられた(提供:JDL)

11月には映画公開も、身体障害者野球が伝えるもの

身体に障害を抱えながらも、ひたむきに野球に打ち込み、勝利を目指して努力する姿は、誰の心にも光を灯す。11月には、“もうひとつのWBC”とも呼ばれる世界大会「第6回世界身体障害者野球日本大会」が福岡県北九州市を舞台に開幕。また、JDLが特別後援し現役選手もキャストとして登場する身体障害者野球チームを題材にした映画『4アウト もう一度、プレイボール』の同月公開も決定しており、競技を目にする機会が増えることだろう。

メジャーリーグでは、先天的な右手欠損というハンデを抱えながらも、投手として通算87勝を挙げノーヒットノーランも達成した“隻腕の大投手”ジム・アボット氏が歴史に名を残している。ひたむきな努力で積み上がった身体障害者野球のダイヤモンドには、無限大の可能性が広がっている。