民放キー5局(日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)の10月改編情報が11日、出そろった。コンテンツ指標の多様化に伴い、それぞれが強みを生かした戦略を立てる中で、ドラマにおけるチャレンジや、IP(知的財産)戦略の加速化など、テレビ業界のトレンドも浮かび上がってきた。各局の説明会から、この10月改編の動向をまとめた。

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テレ東らしさが失われている?…“警告”からの原点確認

各局の編成方針を見ると、日テレは9月7日時点の年間視聴率で、ゴールデン帯(19~22時)は日テレ5.3%、テレ朝5.1%と2位局を上回っているのに対し、プライム帯(19~23時)は日テレ4.9%、テレ朝5.1%と逆転されている現状。そこで、テレ朝で『報道ステーション』が放送されている22時台の牙城を崩すべく、火曜を『カズレーザーと学ぶ。』から『X秒後の新世界』に改編する。

テレ朝は、2024年に年間・年度ともに個人全体で開局以来初となる全日・G帯・P帯の3冠を獲得するなど、好調な視聴率を背景に「この流れを一層強化すべく、オールターゲット戦略でファミリー層に加えてあらゆる世代のニーズに応えるタイムテーブルを追求しております」(寺田伸也コンテンツ編成局長)と説明。GP帯では平日に2本の新バラエティを投入する。

TBSは、昨年10月に導入した視聴率指標「LTV4-59」(4~59歳)が、24年度で全日帯2位・G帯2位・P帯2位となり、1位の日テレとの差を詰めている(21年度:1.8ポイント差→24年度:0.9ポイント差)ことから、GP帯で新たなバラエティを投入せず「積極的無改編」(三島圭太コンテンツ戦略部長)とした。

テレ東は、6月に実施されたある調査で「テレ東らしさ=独自性に期待している」という視聴者の声を受け、「最近、独自性が失われているんじゃないかという警告のような気もしました。改めて我々に期待されているのは、ヒリヒリしてキワキワしたうちでしかできないものだと受け止めて、番組の開発・放送をしていきたい」(工藤仁巳コンテンツ編成部長)と宣言。配信視聴を重視したバラエティの開発を土曜深夜枠を中心に強化する。

一連の問題から変革を進めるフジは“コンテンツカンパニーへの転換”を打ち出し、従来の改編説明会を「コンテンツラインナップ発表会」に刷新。TBSと同じく、GP帯バラエティは“無改編”だが、「『for the NEXT』というテーマをもとに内容のリニューアルをしていきますので、少しずつでも“フジテレビのコンテンツが変わった”と思っていただけるようになっていくのではないかと思っています」(加藤正臣投資戦略センター室長)としている。

配信コンテンツがあふれる中での知名度重視

10月期の新レギュラーバラエティで目立つのは、出演者の名前を冠したタイトルの「冠番組」だ。日テレは『timeleszファミリア』(月曜24:29~)、テレ朝は『日本探求アカデミックバラエティ 火曜の良純孝太郎』(火曜20:00~)、『相葉ヒロミのお困りですカー?』(木曜19:00~)、『光一&シゲのSHOWマン!!』(月曜23:15~)、『若槻千夏のうるさい心理テスト』(火曜26:36~)、『ニカゲーム』(水曜25:58~)、テレ東は『バカリズムのちょっとバカりハカってみた!』(水曜20:54~)、フジは『ミキティダイニング』(土曜11:00~)、『Aぇ! groupのQ&Aぇ!』(日曜25:25~)と、各局で「冠番組」が続々スタートする。

この傾向は近年顕著になっているようで、ある局の編成担当者は「配信も含めて選択肢が多くなっている中、誰が出ているのか分かりやすいタイトルということで、冠番組にする流れがあると思います」と語っている。