配信視聴によるマネタイズを図るべく、次々に放送枠が増えていたドラマだが、その流れは一段落。そんな中で、新たな制作形態の動きが出てきている。

TBSの『フェイクマミー』(金曜22:00~)は、2023年に同局が立ち上げた脚本家の発掘・育成プロジェクト「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」の第1回大賞受賞作。テレビ局主催のシナリオコンテストといえば、「フジテレビヤングシナリオ大賞」をはじめ、大賞作品のドラマ化にあたっては深夜帯などの単発放送が定石だが、TBSは募集時点から10話の連続ドラマを条件に。さらに、受賞者が養成・企画開発・脚本の共同執筆などを実施する「ライターズルーム」に参加することで、脚本の園村三氏は、GP帯連ドラという大舞台でデビューを飾ることになった。

TBSの韓哲プロデューサーは「(園村氏が)バラエティの構成作家をやられていた経験だと思いますが、その筆致にはとてもユーモアがあふれていて、我々も見たことがないとてもすばらしい脚本を書いていただいています」と太鼓判を押している。

テレ朝は、ドラマのチャレンジ枠『ドラドラ大作戦』(土曜24:30~)を新たに編成。若手のクリエイターが、縦型ドラマなど従来スタイルにとらわれない作品を積極的に制作する場として設けたもので、「新しい切り口のドラマを準備をしているところです」(河野太一総合編成部長)と狙いを明かす。

縦型ショートドラマをめぐっては近年、日テレがクリエイター集団「ごっこ倶楽部」を擁するGOKKOと資本業務提携を締結したほか、ショートドラマのシナリオコンテストを開催。TBSは「BUMP」と共同制作を手がけ、テレ東は「こねこフィルム」との共同アカウント「aimaiMe」を開設して各種SNSで配信するほか、ショートドラマ配信アプリ「UniReel」での配信も実施。フジは、自社のショートドラマアプリ「FOD SHORT」を立ち上げて次々に新作を配信しており、各局が参入してビジネス化を模索している。

日テレ『ぼくたちん家』(日曜22:30~)は、心優しきゲイが、偶然出会ったクールなゲイの青年に出会い、恋をするストーリー。同作には、自身もゲイであることを公表し、様々な発信を行っている報道局ジェンダー班の白川大介氏が「インクルーシブプロデューサー」として参加しており、当事者と取材者両方の経験を生かして作品づくりに関わっている。これまで白川氏は、性的マイノリティーの登場人物がいる作品に「監修」としてクレジットされることはあったが、「映像作品で『インクルーシブプロデューサー』と名乗っている例は、日本ではないだろうと思います」(白川氏)といい、これも新たな試みになっている。

ちなみに、同作の脚本は、「日テレシナリオライターコンテスト」2023年度審査員特別賞の松本優紀氏が手がけている。

アニメビジネス先行のテレ東、バラエティとの融合推進

各局でIP戦略の重要なコンテンツとして位置づけられているアニメも近年、枠が急増しているが、10月期はどの局も規模を維持。そんな中、09年に「アニメ局」を他局に先駆けて設置し、アニメビジネスで先行してきたテレ東は、アニメに特化したバラエティコンテンツの開発に着手する方針を示した。

工藤コンテンツ編成部長は「“こういうアニメもやってるんだ”と気づいてもらうために、バラエティと融合して見やすいフォーマットにして紹介することにトライしていこうと思っています」と説明。テレ東のアニメ局長は、今年4月からバラエティの名物プロデューサーだった伊藤隆行氏が就任しており、その手腕に注目だ。