テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、8月31日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ ほか)の第33話「打壊演太女功徳(うちこわしえんためのくどく)」の視聴分析をまとめた。
歌麿の絵に「生きてるみてえだな…」
最も注目されたのは20時37分で、注目度78.9%。蔦重が喜多川歌麿(染谷将太)に、新之助(井之脇海)を失ったつらさを吐露するシーンだ。
蔦重(横浜流星)は新之助の墓前にいた。墓前とはいっても墓石もなく、ただ新之助の遺体を土中に埋めただけの場所であった。歌麿が蔦重のそばで腰を下ろして声をかけた。振り向いた蔦重の顔は憔悴しきっている。歌麿は新之助の方に向かって手を合わせたあと、蔦重に何枚かの絵を差し出した。蔦重は絵を受け取ると、黙ってその一枚一枚に目を通す。そこには花や虫が鮮やかな色彩で力強く描かれていた。「生きてるみてえだな…」蔦重の険しい表情がわずかに緩んだ。いつかは消えていく命を、紙の上に残すことが自分にできる償いなのかもしれない、という歌麿の言葉に、蔦重は涙を流す。
自分をかばって死んだ新之助を、ここに穴を掘って埋めたのだという蔦重に、歌麿がぽつりと「新さんってどんな顔して死んだ? いい顔しちゃいなかった?」と聞いた。惚れた女と足抜けをして、夫婦となって苦楽を共にし、最後は自分の思いを世の中にぶつけて死んだ新之助。蔦重は新之助の最期の顔を思い出す。「いい顔だったよ…今までで一番いい顔で、男前で。なあ…お前に写してもらいたかった。写してもらいたかったよ!」蔦重は歌麿の胸の中で、ただいつまでも泣いていた。
「悲しみに満ちた蔦重に活力を取り戻せたのすごい」
注目された理由は、エンタメの力で蔦重が救われる姿に視聴者の関心が集まったと考えられる。
新之助を失くし悲しみの淵に沈む蔦重。そんな蔦重をなぐさめたのは義兄弟である歌麿だった。自暴自棄となりすさみきった生活を送っていた歌麿が躍動感に満ちた絵を描くようになり、その絵によって蔦重が生気を取り戻すこのシーンは今回を象徴する名場面だった。SNSでは「今回は蔦重自身が絵というエンタメによって心を救われることになったな」「新さんの最期に居合わせなかった歌が、満足した死顔をきちんと言い当ててるのが何かグッと来た」「歌麿の絵が悲しみに満ちた蔦重に活力を取り戻せたのすごい」と、エンタメに関わる2人が心を通わせる様子に多くのコメントが集まった。
今回、歌麿が書き上げた絵は1788(天明8)年に虫を題材にした狂歌絵本『画本虫撰(えほんむしえらみ)』として刊行されている。宿屋飯盛(又吉直樹)をはじめとする当代一流の狂歌師たちが詠んだ狂歌と、歌麿の精緻で美しい昆虫の絵が組み合わされている。狂歌の洒落やユーモアと写実的な昆虫の描写が独特の世界観を描いている傑作だ。
蔦重は新之助の遺体を自ら埋めたと語っていたが、当時の庶民の埋葬は土葬が一般的でした。ほとんどの庶民は菩提寺の墓地に埋葬されましたが、貧しい人々は寺の共同墓地や村の共同墓地が利用されました。埋葬は遺体を座った状態で棺に納める座棺が主流だった。これは遺体を座らせることで棺がコンパクトになり、埋葬に必要なスペースを節約できるため。墓石は高価だったため、庶民は木製の卒塔婆や小さな石を墓標とすることが多かったようだ。

