3番目に注目されたシーンは20時12分で、注目度73.5%。一橋治済(生田斗真)が書状を破り捨てるシーンだ。

打ちこわしが起きた翌日、治済は朝食をとっていた。市中や幕府は混乱のただ中にあるが、治済は悠々と箸を進める。その治済の手には1枚の書状があった。そこには田沼意次(渡辺謙)と水野忠友(小松和重)が、蔦重の献策をもとに編みだした打ちこわしを静めるための政策が記されていた。大名たちの中には、御用商人に米を預けている者がいる。意次はその商人が打ちこわしの標的になっているのであれば、大名たちは米を放出するのではないかと考えたのだ。

あらかじめ金を配って時間を稼ぎ、その間に米を集める。書状はそのための米の提供を依頼するものだった。しかし、治済は書状を一瞥(べつ)するやためらうことなく破り捨てた。治済にとって困窮にあえぐ庶民などどうでもいい存在なのだ。

「相変わらず狂気と存在感が半端ない」

ここは、冷徹な一橋治済に視聴者の関心が集まったと考えられる。

前回では治済は物乞いに扮して市中に出向き、庶民の惨状に直に触れている。その上で配下の丈右衛門だった男とともに打ちこわしをあおり、今回では意次による米の提供の依頼を冷酷に無視した。まさにクズである。SNSでは「治済さまが画面に出てくるだけで空気感が変わるのがすごい」「相変わらず治済の狂気と存在感が半端ないね」「大噴火も佐野大明神も大水害も打ちこわしもみんな自分のために利用する治済、ほんとにヤバい」とその非道ぶりにコメントが集まった。

今回打ちこわしの終息に存在感を示した曲淵景漸(平田広明)だが、非常に面白い経歴とバックボーンの持ち主だ。1769(明和6)年、江戸北町奉行に就任し約18年間その職を務めた景漸は庶民から名奉行として親しまれた。1771(明和8)年に刑死体の腑分け(解剖)を行うことを医師たちに通知し、この知らせを受けて杉田玄白(山中聡)らが解剖に立ち会うと、その際にオランダの医学書『ターヘル・アナトミア』の解剖図と比較した。このことが後の『解体新書』発刊へとつながる。

また、1784(天明4)年の佐野政言(矢本悠馬)による田沼意知(宮沢氷魚)暗殺事件では、事後処理を担当し関係者に厳正な処分を下した。今回の打ちこわしの対応では政治的な思惑から批判され、西ノ丸留守居に左遷されるが、後に松平定信(井上祐貴)の信任を得て勘定奉行として復権する。景漸は戦国時代に武田信玄や徳川家康に仕えた武将・曲淵吉景の子孫にあたる。吉景は今でいう訴訟マニアで、生涯で75回も訴訟を起こしたが、勝訴・和解に至ったのはそれぞれ1回のみで、他は全て敗訴したと伝わっている。いわゆるヤカラだろうか。そんな人物の子孫が、裁く側の奉行となるのだから、世の中の因果は面白い。

景漸を演じた平田広明は、ひらたプロダクションジャパンに所属する東京都出身の62歳。声優・俳優として活躍しており、『ONE PIECE』のサンジや『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウの吹き替えとして有名だ。大河ドラマは2022年『鎌倉殿の13人』以来2度目の出演になる。