テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、1日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第21話「蝦夷桜上野屁音」の視聴分析をまとめた。

  • 『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第21話より (C)NHK

    『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第21話より (C)NHK

「北辺の鬼」と恐れられている男

最も注目されたのは20時16~17分で、注目度75.6%。松前道廣(えなりかずき)が家臣の妻を的に銃撃を行うシーンだ。

闇夜に開かれた花見の宴の余興で、雷のような銃声が鳴り響いた。放たれた銃弾の先には、恐怖で顔を引きつらせた女が桜の木に縛られている。松前藩八代藩主・松前道廣は酷薄な笑顔を浮かべ、家臣に手渡された新しい銃を構えた。道廣は「北辺の鬼」と呼ばれ恐れられている男である。

道廣の足元では、家臣の男が土下座して許しを乞うていた。的とともに縛られているのは男の妻だ。「何でもするゆえと許しを乞うたのはお前ではないか。その上、まだ私に望むとは欲深な夫婦であることよ」道廣は冷たく言い放ち、再び銃を構えた。狙いを定める道廣。しかし、道廣が2発目を発砲する前に、あまりの恐怖に夫婦はそろって気を失った。「ふん…仲のよい夫婦でもあることよ」白けた様子の道廣に、上座の一橋治済(生田斗真)がその腕前を称賛した。

宴に参加していた田沼意次(渡辺謙)は、悪趣味な余興に眉をひそめながら、壁に飾られた鮮やかな蝦夷錦に目を向けていた。そんな意次に治済は射撃を勧めるが、意次は武芸のたしなみが浅く、的を殺めてしまうと断る。「ご心配ならずとも、的は当家からいくらでもお出ししますゆえ」道廣が意次にそう申し出ると、宴席は下品で醜い笑い声に包まれた。

  • 『べらぼう』第21話の毎分注視データ推移

「類は友を呼ぶってことかね…」

注目された理由は、松前道廣の外道っぷりに視聴者の視線が「くぎづけ」になったと考えられる。

意次が上知を考えている蝦夷地は松前藩の領地だった。しかし、藩主・道廣は一橋家と近しく、性格はエキセントリックで、とても一筋縄ではいかない相手であることが強烈に印象付けられた。SNSでは、「治済もとんでもねえ奴だけど類は友を呼ぶってことかね…」「笑顔で邪悪なウィリアム・テルみたいな遊びしてるの、怖いな」「鶴屋の笑顔も怖かったけど、さらにヤバイ笑顔が出てくるなんて…」と、インパクト大な道廣が大きな話題となっている。治済とは気が合いそうだ。

史実の松前道廣は前藩主である父・松前資広の死に伴い、わずか12歳で家督を相続した。幼いころから武芸に励む一方で、和歌や漢詩、書道にも優れた文武両道の人物だったが、それゆえに傲慢な性格だったようだ。社交的な性格で、一橋家、伊達家・島津家などの有力大名と交流を深めた。吉原にも足しげく通い、遊女を妾にするという一面もあった。そのため、商人からの借金も重ね藩の財政を圧迫し、幕府からたびたび注意を受けている。

また、注目すべきは正室の実家の家格の高さで、父・資広は公卿で正二位・権中納言である八条隆英の娘・弁子を正室に迎えているが、道廣はさらに上位の従一位・右大臣である花山院常雅の娘・敬姫を正室に迎えている。道廣本人の官位は従五位下。時代は違うが、『光る君へ』に登場した藤原道長の従一位・太政大臣に匹敵する家柄だ。