『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』(テレビ東京系2015年10月~12月、現在はBSジャパンで毎週月曜23:30~24:00放送中)
おぎやはぎ、オードリーらが出演し、さまざまな"現代病"をテーマにした、完全オールロケのコント番組。複数のコントに仕込まれた伏線が、やがて1つのドラマにつながっていくという、これまでにない構成で注目を集め、ギャラクシー賞の月間賞を受賞した。3月28日にDVD・Blu-ray BOXがLoppi・HMV限定で発売予定。
※写真はおぎやはぎ・小木博明が出演した「イケ!イケ!イケ! 撮れ高病」
(C)「SICKS」製作委員会

――最近では、昨年の10月クールに放送されたテレビ東京のコント番組『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』に参加されていましたが、プロデューサーの佐久間宣行さんとの出会いは?

テレ東の夕方に、吉本の芸人が帯で番組を持った中で『極楽とんぼのこちらササキ研究所』(2006年)というのがあって、演出に佐久間さんがいたんです。そこで知り合って、特番をやらせてもらったり、レギュラーもやったりした後、しばらくご一緒していなかったんですけど、『SICKS』で書きませんか?と声をかけてもらいました。

――久々のお仕事だったんですね。

こちらからすれば、佐久間さんはしばらく接しないうちに、あれよあれよといううちにスターになっていきましたね(笑)。あの人は本当に優秀な人なので、僕が『SICKS』でやっていたのは、佐久間さんの頭の中に追いつくようにするという作業だったんです。佐久間さんが「こういうことを考えてるんだけど…」と言ったら、それに合格するように書く作業。あの人はアイデアマンなんで、いろいろなことを言うんです。

――大井さんが担当したコントは、おぎやはぎ・小木博明さんの「イケ!イケ!イケ! 撮れ高病」(※1)と、アンガールズ・田中卓志さんの「危機管理意識が低すぎる男 リテラシーゼロ病」(※2)でしたね。

僕が書いたものに関しては、コント台本というよりバラエティ台本に近いです。フレームを作っておいて、小木さんや田中さんが面白くなっていくよう、それぞれに合わせた台本を作るスタイルですね。小木さんの方は、佐久間さんが「こういう人がいたなぁ」という話をしていて、そこに小木さんが言いそうなセリフを当て書きしていきました。

(※1)「イケ!イケ!イケ! 撮れ高病」
おぎはやぎ・小木博明が演じる豪腕テレビディレクター・酒井が、想定した画のために手段を選ばない指示を次々に繰り出していく。

(※2)「危機管理意識が低すぎる男 リテラシーゼロ病」
アンガールズ・田中卓志演じる天才医師・町田は、IT・危機管理意識が低いため、研究発表のスライドに誤って、関係を持った女性との写真を出してしまい、万事休す。開き直って他の女性の写真も画面に映し、詳細に説明し始める。

――あのコントの小木さんはすごいノッてましたよね。台本には書き表せないような感じでした。

そうですね。自分も書いてて、途中から小木さんしかしゃべってないんで「なんだこれ!?」って思いましたけど、とりあえずやってみましょうという感じで(笑)。直しも少なかったです。

――途中から小木さんがコールを煽(あお)りだすシーンもありました(笑)

あれは現場で、(英勉)監督や佐久間さんが、小木さんを乗せてるんじゃないですかね。1回リハーサルやって、こんな遊びをしてみようって感じで、乗せていったんでしょう(笑)

――田中さんの方のコントは、どのように作っていったんでしょう?

台本では、画面に出てくる女性の説明と、田中くんの言い訳を書いていくんです。ただ、4人目か5人目の女性は事前に隠しておいて、田中くんに自由に遊ばせたりしてたんですよね。

――疲れ果てた田中さんが最後に放つ「…自分で歩けます」という決めゼリフが好きです。

あれはアドリブじゃなくて、僕が「これで締めればいい」と思って書いたセリフですね。

――ほかに手応えのあったセリフはありますか?

むしろ自分の中に関しては、もう少しこうすればよかったなというのもあります。自分の書いたものじゃないものが、現場でノッて発生しているものがあると、これももっと乗せればよかったなっていう反省は多いです。自分が書いたものより、上回ってくれているんで、心強いんですけどね。

『水曜日のダウンタウン』(TBS系 毎週水曜21:56~22:54 ※全国ネットは22:00~)
芸能人や視聴者の提唱する「説」を検証していくバラエティ番組。「説」と呼びながら「ポール・マッカートニー、知らない人が見たらおばあさん説」など、学会で発表されるような内容ではないが、2015年7月15日に放送された「徳川慶喜を生で見たことがある人ギリまだこの世にいる説」は、ギャラクシー賞の月間賞を受賞した。3月16日にはDVD第3弾が発売。MCはダウンタウン。
(C)TBS

――現在、『水曜日のダウンタウン』(TBS系)も担当されています。こちらは、番組で発表される「説」を考えていく役割ですね。

あの番組は、本当に藤井くん(演出・プロデューサーのTBS・藤井健太郎氏)が、面白さしか求めてないんです。そこで、若手も含めて7人くらいの作家がネタを出していきます。会議では、1人ずつ「説」だけを淡々と発表していくんです。

――本当に「説」を発表していく感じなんですね(笑)

そうそうそう(笑)。こんな説はどうか、というのを1人ずつ発表していくんです。それに対して「それはこうしたらどうですか?」とか、みんなで話し合いながら決まっていく。千本ノックのような空間ですよね。僕なんかもうベテランに近いですけど、その場ではキャリアとか関係なく、淡々とネタだけを読んで、評価されていくんです。

――どれくらいの量の「説」を準備していくものなのですか?

A4の紙に、Wordの12サイズくらいの文字の大きさで、上から下まで1行ずつくらい空けて埋まるくらいは書きます。で、さっぱり引っかかんないときもあるし、1~2個引っかかるときもあるし、そういう感じです。

――そうなると、日々の生活の中で、いつも「説」を探すようになってしまいそうですね。

そうですね。木曜日が会議なんですけど、木曜日ちょっと嫌なんですよ(笑)。やばいなぁ何にも出てこないなぁとか、あれ出したかな?とか、これ前に誰か出してたっけな?とか、そうなっちゃいます。でも『水曜日のダウンタウン』は藤井くんがしっかりしていて、番組も面白いという評価を受けているので、手柄の取り合いじゃなくて、結果として面白くなればいいと僕は思っています。だから、このヒントで何かが面白くなればいいなとか、若い子が出したものでも面白いものにつながるんだったらいいなと、素直に思えるんで、やっていて楽しいですね。

――ご自身が出された「説」で会心のものは何ですか?

スペシャルでやった「松本人志 メキシコからきた謎のマスクマンとしてプロレス会場に登場してもバレない説」(※3)ですね。ダウンタウンさんで何かないかというお題があって、僕が出したんです。イベントとして面白くなったと思いますね。

(※3)「松本人志 メキシコからきた謎のマスクマンとしてプロレス会場に登場してもバレない説」
松本が覆面レスラー"エル・チキンライス"にふんし、選手のセコンド役として会場に登場。上半身裸で鍛え上げた肉体を見せつけ、観客にバレるかどうかを検証した企画。

松本人志がふんした覆面レスラー「エル・チキンライス」(番組DVD第1弾に収録) (C)TBS

――あれは非常に話題になりましたよね。

まさか松本さんがロケに出てくれると思わないし、まさかあんないじり方をしていいなんて思わないし、本当に"まさか"尽くしだったんです。松本さんはそんなにプロレスをご存じないですし、「そんなん行って面白くなるんかい」っていう感じだったんですけど、そこは藤井くんとの信頼関係で行けたんだと思います。あの番組じゃないと、ああいうことにはならなかったでしょうね。

――藤井さんとの出会いは、どの番組だったんですか?

ダウンタウンさんの『リンカーン』(TBS系)ですね。そのときディレクターに藤井くんがいて、そこから、彼が『クイズ☆タレント名鑑』を立ち上げたときに呼ばれました。藤井くんの番組はキャリア関係なく、千本ノックみたいな感じなので、いい緊張感があります。僕は好きですね。

――今年の元日のゴールデンで藤井さんが担当された特番『芸人キャノンボール2016~公道最速借り物レース~』にも参加されたのですか?

はい。藤井くんから「キャノンボール系の企画ないですかね?」と言われて、企画書を作りました。藤井くんとは、自分と好きなものが似ている部分があるので、楽ですね。「あれ面白いですね」とか「あれ楽しいよね」とか言い合えるので。