――フジテレビの中で「結果を残す」形も、昔とは変わってきているように思います。原田さん自身が目指すところは、GP帯のレギュラーで総合演出を務めるという従来のルートとは違うのでしょうか。

そんなことはないです。今、いろいろな場所で仕事をさせていただいていますけど、それ自体は本当に楽しいですし、クリエイターとしてすごくありがたいことだと思っています。会社にとっても、これからの時代、これまでやってこなかった領域や新しいビジネスモデルに挑戦していくことには大きな意味があると思いますし、自分も作り手として、そういう挑戦には積極的に関わっていきたいです。

ただ、会社員として商業コンテンツを作っている以上、最終的に会社に利益を生み出すということは避けて通れない。それはすごく当たり前のことではあると思っているので、そういう意味では、今の自分にとって、GP帯でしっかり結果を残すことも変わらず大きな目標です。

その上で、自分がいずれ実現したいことで言えば、新しい“ジャンル”や“カテゴリー”を作りたいという思いがあるんです。例えば「大喜利」や「モキュメンタリー」のようなフォーマットの名前かもしれないし、「ノイタミナ」のようなレーベルの名前かもしれない。今のバラエティって、あまりに何でも「バラエティ」という一言に内包されすぎている気がするんですよ。それによって、新しいものを作っているつもりでも、結局みんな同じ競技の中で戦ってしまっている感覚があります。

「大喜利」という言葉があるから、そのルールの中で新しいコンテンツが生まれる。「モキュメンタリー」という言葉が共有されるから、その概念を視聴者も理解して楽しみ、その中でまた新しいものが作られる。言葉ができて初めて、作り手の“遊び場”ができるんだと思います。

だから、もちろん1本のヒット番組を作りたいですし、それは大事です。でも後からでもいいので、「あれって、ああいうジャンルだったよね」と言われるものができたら、バラエティの可能性はもっと広がると思うんです。フジテレビという会社にいるからには、そういうものを作りたいですね。

――そのためにも、様々な企画を試せる場が必要になりますね。原田さんの名前を業界内に広めた『ここにタイトルを入力』も『水曜日NEXT!』というチャレンジ枠からでしたし。

チャレンジ枠のような形で、いろいろな特番を試せるのが一番うれしいです。ただ、今の会社の状況や制作にかかる様々なコストを考えると、一つのレギュラー番組という器の中で毎週いろいろな企画を試していく形も、すごく健全で面白いのかなと思っています。『ここにタイトルを入力』も6週連続の放送でしたけど、その中で毎週違う形を試すことができたので。

それと個人的には、「沸かせたい」という欲がすごく強いんです。笑わせたい、感動させたい、驚かせたいということを全部内包して、「沸かせたい」という感覚で、とにかくそこに熱が生まれるようなものを作りたいと思っていて。単発で一度大きく沸かせることももちろんできると思うんですけど、レギュラーだからこそ、その熱を継続的に生み出して、番組そのものを一つの「熱の発生源」にしていける気がしています。

だから中身だけではなくて、どういう動線で視聴者に届いて、どういう受け取られ方をするのかまでトータルで考えたいですし、そのためにも見たことのないものを作り続けたいと思っています。

企画書からこぼれ落ちる部分に感じた『トリビアの泉』の魅力

――ご自身が影響を受けた番組を1本挙げるとすると、何ですか?

難しいですけど、『トリビアの泉』(フジテレビ)ですね。最近切り抜きが回ってきますが、今振り返っても異常に面白いんです。お笑いって、時代背景や文脈にすごく左右されるものだと思うので、それでも今見て面白いというのはすごいことだと思います。

僕は当時、テレビをそんなに見ていなかったんですけど、「テレビが好き」というより『トリビアの泉』が好きだった感覚があります。“へぇボタン”も持っていましたし、本も買っていました。あの本、めちゃくちゃ縦長で読みづらいんですよ。でも、その体験も含めて『トリビアの泉』っぽくて好きでした。

――どんなところに惹かれていたのでしょうか。

『トリビアの泉』という一つの世界観、トーンが完全に確立されていたことだと思います。今は企画書について「一言で企画を説明できるか」ということがすごく問われます。でも、それだけではなくて、企画書からこぼれ落ちるような部分、演出を一つ一つ積み重ねていったところに“番組性”が宿る。『トリビアの泉』は、その世界観の確立の仕方がすごかったんだと思います。

僕、自分の番組でもロートーンのナレーションが結構好きなんです。それも多分、めちゃくちゃ影響を受けていますね。

――いろいろお話をいただき、ありがとうございました。最後に、注目している“テレビ屋”を教えてください。

大先輩なんですけど、この1年くらいずっとご一緒している住田崇さんですね。『住住』や『架空OL日記』など、バカリズムさんのコメディドラマを手がけてきた方で、もともとはバラエティのディレクターさんです。

バラエティの文脈を背負ったままドラマをたくさん作っている人って、多分ほかにいないと思うんです。バラエティとドラマの境界線がない感じがすごく面白い。一緒に話していても、出てくるアイデアに本当に既視感がなくて、面白さを判断する感覚がすごく研ぎ澄まされている感じがします。住田さんが今、何を考えているのか。その頭の中をぜひ覗いてみたいですね。

  • 次回の“テレビ屋”は…
  • 演出家・住田崇氏