――ディレクターデビューは、『めちゃ×2イケてるッ!』総監督の片岡飛鳥さんが企画構成を務めた若手育成特番『567↑8』だったと思います。飛鳥さんは近年、講演で「面白さを言語化する」ことを伝えていますが、原田さんもこのメソッドを学んだのですか?

実は、僕がインターンの時に飛鳥さんが講師として来てくださって、その時に飛鳥さんの企画に対する考え方や理論を教えていただきました。インターン参加者が一人1本ずつ企画書を出して、飛鳥さんが一人ひとりにフィードバックする時間があったんです。30人くらいいたと思うんですけど、夜遅くまで本当に丁寧に見てくださって。その時に、僕の企画書を褒めていただいたんですよ。「何を面白がるのかをちゃんと言語化する」ということが一番大事だという講義の中で、「この企画書にはそれがある」と言っていただいて、それがすごく心に残っています。自分が感覚的にやっていたことに、初めて言葉を与えていただいたような感覚がありました。

――その考え方は、実際に番組制作の中で生きましたか?

ずっと生きていますし、企画を考える上で一番大事なことだと思っています。

会議でずっと詰めていると、雰囲気としては成立しているけど、「結局、何が面白いんだっけ?」という状態になることがあるんです。「なんとなく面白そう」で終わらせずに、その企画の何を面白がっているのかを自分の中で言葉にできているか。それが明確になっていれば、そこから先の演出でも判断に迷うことが少なくなると思っています。

実際、現場で技術さんや美術さんとコミュニケーションを取る時も、「こう撮ってほしい」「こういうセットにしたい」と方法だけを伝えるのではなくて、「この企画はここが面白いから、こうしたい」と伝えられるかどうかで、全然変わるんですよね。そういう意味でも、面白さを自分の中でどこまで言語化できているかは、とても意識しています。

有吉弘行は「MCでありながら究極のアウトサイダー」

――これまで様々な出演者と仕事をしてきた中で、特に印象に残っている方はどなたですか?

『有吉弘行の脱法TV』(※)でご一緒している有吉さんですね。僕が言うのはすごくおこがましいですけど、大喜利的なコメントの面白さや物事を見る目線はもちろん、本質を捉える力がものすごく高いと感じました。何かが起きた時、みんなが感じているけれど言葉にできていないことや、建前で隠れていることを一瞬で見つけて言葉にする。だからめちゃくちゃ面白いし、同時に「ウソがない」という感じがするんです。

その「ウソがない」ということが、良くも悪くもいろいろな演出や建前の積み重ねでできている今のテレビにとって、ものすごいカウンターになっている気がして。だから有吉さんってMCでありながら、究極のアウトサイダーでもあると思うんですよね。その2つを同時に成立させている人って、ほかにいないじゃないですか。だから、有吉さんが現場にいると、背筋が伸びる感覚がありますし、有吉さんがめちゃくちゃ笑ってくださると、作り手としてものすごくうれしい。「これはちゃんと面白いものになっているのかもしれない」と思えるんです。そういう意味でも、自分にとって特別な方ですね。

(※)…「テレビでできないとされていること」を有吉弘行が抜け穴を探して何とか実現しようとする番組

  • 『有吉弘行の脱法TV』FODで配信中 (C)フジテレビ

    『有吉弘行の脱法TV』FODで配信中 (C)フジテレビ

――『脱法TV』は、テレビのルールやコンプライアンス自体を題材にする内容ですが、放送への怖さはありましたか?

内容が内容なので、VTRを作っている段階では「これは炎上するかも」という怖さは、実はありました。ただ、収録で有吉さんのコメントが加わると、こちらが意図していたことを汲み取りながら、その危うさも含めて笑いに変えてくださるんです。それによって、自分が想像していた何倍も面白くなったと感じる瞬間が何度もありました。有吉さん自身がテレビのルールや文脈をよく分かった上で言葉にしてくださることで、番組にも説得力が生まれていましたし、何より、最終的にはちゃんと笑いに着地している。そのことを収録で確信できたので、最終的には放送に対する怖さはなくなっていました。

――フジテレビは一連の事案があって、コンプライアンスを巡る状況も大きく変わったと思います。制作現場への影響も大きいですか?

影響はたしかにありますが、自分の中で大事にしている基準は、結局「それを見て笑えるか」だと思っています。別に過激なことがやりたくて過激なことをやるわけではないし、コンプラを破りたくて破るわけでもない。「それによって最後、視聴者をどこへ連れていくのか」ということの方が大事だと思うんです。

だから、シンプルに見ていて笑えないものはもちろん、その中で誰かが傷ついているかもしれないとか、そのことが気になって素直に笑えないものはやるべきではないし、逆に、ちゃんと面白いものまでコンプライアンスを理由にできなくなってしまうことは健全ではない。ルールだけを機械的に当てはめるのではなく、最終的に視聴者がどう受け取るのかまで含めて考える。その上で、どう折り合いをつけながら面白いものを作るか、ということでしかないと思っています。

――演者さんの話に戻ると、内村光良さんとは『内村と相棒』(22年)の後に『親切紳士』(26年)でもご一緒されましたね。

内村さんは、本当に職人だなと思いました。『親切紳士』ではコントドラマをご一緒したんですけど、キャラクターの作り込み方や、ちょっとした動きや表情まで含めた表現の細かさは、間近で見ていて本当に勉強になりましたね。真冬の撮影で、冷たい川に入っていただくシーンがあったんですけど、そういう無茶なお願いにも、作品のためなら文字通り身体を張って応えてくださって。その姿勢を目の前で見られて、ご一緒できて本当に光栄でした。

これだけ長く第一線で活躍されて、ご自身の表現のスタイルや信頼できるチームもすでに確立されている方が、新しいチームから出てくる提案に対して、閉じることなく、最後まで一緒に挑戦してくださる。その懐の深さも含めて尊敬しています。