• TXQ FICTION『神木隆之介』

    TXQ FICTION『神木隆之介』

――これまで特に印象深かった演者さんはいらっしゃいますか?

最近だと『TXQ FICTION』でご一緒した神木隆之介さんはかなり印象深かったですね。本当に『TXQ―』を見てくださっていて、自ら「やりたい」と言ってくださった。「自分役」を演じてみたいという気持ちと、フェイクドキュメンタリーを本当にやってみたいという気持ちは、結構違うものだと思っているので、フェイクドキュメンタリーを作りたいという気持ちがすごく真剣だったのは、ありがたいなと思いました。

あそこまで“王道”を歩んできた方が、逆にフェイクドキュメンタリーをやりたいと思ってくれるというのは、フェイクドキュメンタリーというジャンルの地位が上がってきているのかもな、とすごく感じましたね。

――配信コンテンツが盛り上がっている現在、これからの「テレビの役割」をどう考えていますか?

配信プラットフォームのコンテンツって、良くも悪くも「徹底的なデータ主義、資本主義」になりやすい気もして。何分何秒に何%の視聴者が離脱したかがすべて可視化される。だから「17分目で離脱が多いから、ここにクリフハンガー(=引き)を作ろう」というような世界にどうしてもなっていきます。

それに対してテレビというメディアは、驚くほど「大らか」な場所だと思うんです。視聴率はあまりにビッグデータすぎて、対策しようがない面がある。選んで見に来ているわけではない、老若男女がなんとなくチャンネルを変えずに見続けるものや、深夜番組のように全員が面白いと思うわけではないけれど一部の人にとってはすごく大事なものになる、というものが作りやすいのがテレビの強みだと思っています。

と言いつつ、テレビ自体も近年はTVerの再生数に偏重してしまう面があるので、放送法に守られた「放送」だからこそできる価値を、これからも追い求めていった方がいいと思っています。日本の放送法は独特で、テレビ東京が「万年最下位」と自虐できているのも、結局は放送法があるからこそで、本来資本主義的には終わっているはずのものが終わっていないというのは、それだけ大らかな場所だということです。その大らかさを自覚した上で、目先の数字に左右されない良いものを作る、という視点が、これからのテレビが持つべき役割なんだろうな、と強く思っています。

「生活そのもの」「健康」「どう生きるか」に高まる関心

――今後作っていきたい番組は?

自分の年齢のせいかもしれませんが、ホラーやフェイクドキュメンタリーといったフィクションだけでなく、「生活そのもの」や「健康」「どう生きるか」という切実な日常のテーマにも強く関心が向くようになってきました。ポッドキャストなどのカルチャーでは盛り上がっていますが、30代前後の世代が抱える特有の葛藤や悩み、日々の生活の機微にそっと寄り添って、感情に訴求するようなコンテンツって、実は意外と少ない気がしていて。

――自分が影響を受けた番組を1本挙げてください。

難しいですね……。でもやっぱり上出さんの『ハイパーハードボイルドグルメリポート』かもしれません。そもそもあの番組がなかったら、テレ東に入社していなかったとも思うので。特に印象的だったのは、ナレーションがなく、テロップだけで進行していく構成や、劇伴が民族楽器のような音を使っていて、煽情的な演出が全くなかったこと。質問をして、本当の答えがそこにあって、それをそのまま流している、というスタイルに衝撃を受けました。

あと、上出さんが撮ったイノマーのドキュメンタリー(※)は、ここ10年のテレビで一番だと今でも思っていて、あれを超えるものはまだ出てきていないと思います。上出さんが何かそういったものを作るのは楽しみにしています。

(※)…口腔底がんにより53歳の若さで亡くなった伝説のバンド・オナニーマシーンのイノマーさんの葬儀の日にパートナー女性と出会った『家、ついて行ってイイですか?』スタッフの取材VTRと、亡くなる瞬間までイノマーさんを撮り続けていた上出氏の映像を組み合わせて放送した番組。ギャラクシー賞テレビ部門2021年1月度月間賞。

――いろいろお話をいただき、ありがとうございました。最後に、注目している“テレビ屋”を教えてください。

フジテレビの原田和実さんです。原田さんは結構シンプルに友達ですね。そして、本当に面白いものを作れる人だと思います。「本当に面白いもの」を作れる人はそんなにいないと思うので、とても尊敬しています。

  • 次回の“テレビ屋”は…
  • フジテレビ・原田和実氏